昼下がりの櫻井邸。
いい具合に陽だまりになってるソファに座って、俺は小さくあくびをした。
大野さんは不思議な人。
好きにしてていいって言うから、俺は携帯ゲームしたり、本を読んだり。
ソファでうとうとしてても何も言われない。

大野さん自身は、集中して描いている時もあれば、ぼーーっと考え事?してる時もある。
基本、座ったままお地蔵さんみたいだ。
スケッチブックを見せてもらったけど、すごい細かいデッサン画があるかと思うと、漫画みたいな線画がズラズラ描いてあったりで、よくわからない。
時々書き込まれてる字がすごく上手で、それを褒めたら、「スケッチブック見て、字を褒められたの初めてだ」って笑ってた。


まーくん達3人は真面目に勉強してる。
潤くんが緊張してギクシャクしてて、可愛い。
初めてでもないのにね。あんなとこもあるんだなぁ。やっぱり「潤くん」呼びで決定!
俺は、大野さんの集中のためとかなんとか言って、ほとんどのんびりしてる。
これでバイト代出るって、バチが当たりそう。


ふと、西畑の事が頭をよぎる。
生田いわく、あいつの友達が西畑と同じ中学で、学年違うのに西畑のこと知っていて、なんか結構有名だったと。ま、あんまし良くない事でだ。その元凶がヤラカす彼女らしい。
最近、その彼女と一緒にいるところを何度か見たとか言ってたんだって。
この間の女子高生がそうなのかな。
なんだか意外だ。西畑ってそういうキャラだっけ?
あれ以来、そそくさと帰っていく姿を思い浮かべた。

「ひゃあっ」

考えこんでたら、急に手を触られて変な声が出た。
「ちっこい手だな。おお、柔らけぇ」
大野さんが俺の手をぎゅうぎゅうする。
手を握られてるのに、まったくいやらしい感じがしない。反対の手もにぎにぎされた。
やっぱり不思議な人だなぁ。

「ああぁぁぁ!翔ちゃんどういうこと!?」

ヤバい、まーくんだ。
慌てて手を引っ込めたけど、時すでに遅し。
血相変えて飛んできたまーくんが、俺を抱えて遮ろうとした瞬間、

「おぉ、普通はこんなだよなぁ」

って、大野さんがまーくんの手を掴んで、やっぱりにぎにぎした。
「……え」
まーくんはぽかーんと大野さんを見てる。
大野さんは更に、潤くんをロックオンすると手でちょいちょいと呼び、潤くんの手も「おめぇキレイな手してんなぁ」と触ってる。

「な、に?どういうこと??」

頭の上にいっぱい???を浮かべてたじろぐまーくんに、しょうちゃんが笑った。

「まぁ、こういう人だからさ。智くん、俺の手も見る?」
「翔ちゃんのは知ってるからいい」
「つれないねぇ」

大野さんは気が済んだのか、今度はスケッチブックに手のデッサンをいくつも描き出した。
しょうちゃんにお茶にしようと言われて、場所を移ったけど、大野さんはそのまま黙々と鉛筆を走らせてる。
やっぱり不思議な人。