6月の花嫁さんは幸せになれるんだって。
親戚の結婚式で初めて見た花嫁さんは、真っ白なドレスを着て、お姫様みたいだった。

式の途中で、花婿さんとチューしてるのを見て
「あれ、なにしてんの?」
ってママに聞いたら、しぃーって口の前に指をたてて、小声で教えてくれた。
「誓いのキスよ」
「ちかい?」
「いちばん大事な、特別なお約束のこと」
「ふーん」
ゆびきりげんまんより強いってことかな。


式のあと、花嫁さんはお友達にキレイ!とかかわいい!とか、いっぱい写真とられてたけど。
ふふふふふ。残念だったな。
この世には最強にかわいい子がいるんだもんね!

僕のかずくん。
ちっちゃい頃から一緒で、幼稚園もいっしょ。
いっこ下の年中組さん。いつも僕のあとをついてくるんだよ。めちゃめちゃかわいいんだから!僕は自分のことのように胸をはる。


今日も、僕が紙ヒコーキ作っていると、かずくんが僕の教室に入ってきた。

「これ、まーくんの」

かずくんは、ペンギンのアップリケのついたポケットから、大事そうに葉っぱを出すと僕の手にのせてくれた。
かずくんのちっちゃい手にそっくりの青い葉っぱ。もみじだね。
ありがとって顔を見たら、茶色の瞳がうるうるしてる。

「どうしたの!?」
「…これ…」

よく見たら、葉っぱの先が折れてた。ポケットに入れてたからかな。今にも泣きそうなかずくんの手を握ると
「大丈夫だよ!」
1階の先生たちのお部屋に駆け下りた。

「先生!これ、押し花にしたい!」

先生は笑って大きな本の間に挟んでくれた。

「これでキレイになるよ。
紙ヒコーキ飛ばしにいこう!」

かずくんはうんって笑って、僕の腕に手を絡ませた。