昔からの人の暮らしは、花や植物とともにありました。
日本でも、人の暮らす所には田畑があり、そこに住む人の食べるお米や野菜や果物な
ど、食用の植物を育てていました。お酒やしょうゆやみそ、砂糖などの調味料も、植物
からできています。また、昔は家の屋根も茅葺き屋根で、稲ワラやチガヤなどの植物を
使っていました。私たちが着ている服や布団も、綿や麻などの植物を紡いで糸にしてい
るものが多いですし、服の色ももとは、植物を煮出した汁で染めていました。おしろい
や口紅も植物で作ります。
今あなたが読んでいるこの本も、植物の繊維を梳いて作った紙でできています。紙に
書く墨も、植物から作っていました。そして、植物は薬でもありました。
植物は、私たち人間にとって、とても身近で便利な、万能の存在でした。食べる・眠
る・着る・書く・治療する…そのすべてが植物からもたらされる恵みです。文明が発達
して食べ物や服などを工業で大量生産するようになるまでは、世界中の人々が、花や植
物を最大限に利用した暮らしをしていました。
季節とともに美しい花を咲かせたり、おいしい実をつけたり、薬になったり、毒にも
なったり、そして嵐が来ると採れなくなったり…。植物は大にとって、天の恵みでもあ
りました。暮らしに恵みをもたらす花や植物は「神さまのお使い」として崇められ、世
界中の神話に花のエピソードが見られます。
また、花は大にとって娯楽でもありました。現代の私たちの暮らしは季節感を失いが
ちで、「花とともにに生きる暮らし」だとは言えないかもしれません。が、花に目を向
けてみると、その喜びを思い出しませんか? 花の美しい姿と香りを感じ、花に来る鳥
や虫や動物たちを眺めて、大は季節を感じ、楽しんでいたのです。
そんなふうに人の心を豊かにする「花」は、誰かに向けて贈ることで大切な気持ちを
表してくれる存在でもあります。