バスはここぞとばかりにスルーしてくるぜ
運転手このやろう
どうも。
知ってますか。
バス停は出会いと別れに満ちている。
老若男女が集まる場所、バス停。
しかもバス停でバスを待つそいつら、
バスが来るまでの間
暇を持て余している、
どうしようもない暇人ばかり。
不思議なことに、
どうも暇人は暇人を見つけるのが上手いらしい。
やたらと私にターゲットオンして
話しかけてくる。
こいつらの嗅覚、適確すぎる…!
それともチョコビアイスモナカ片手に
通りを虚ろな目で眺めている私の姿が
暇人さを醸し出しているんだろうか。
いずれにしろ、バスを待つ人の例に漏れず
私も暇なので、話に応じる。
ある人は道を聞き(正直自分の使うバス以外知らねーよ!)、
ある人は自分の健康状態の報告をする
(大抵その後、知り合いが死んだ話になる)。
先日は幼稚園児に話しかけられた。
「こんにちは。」
目の前に立ったその子供は、やたら大人びた話し方をする。
凝った制服を着ていて、バスに一人で乗っているところを見ると
私立に通っている子だろうか。
「こんにちは。」
礼儀正しく、挨拶を返す。
ここで無視してiphoneの音楽をシャカシャカ聴き続けたら
この子の厳しいお母さんにチクられそうだし。
赤の他人の家庭のおやつの時間を、
「最近の若者ってやつは」という話題で
盛り上げたいとは思わない。
「僕ね、一人でバスに乗るんです」
出た、子供特有の謎の自慢。
しかし、ここは私も大人。
「私だって乗れるわ!」とか
大人げない対抗意識は燃やさず、
「おお、え、えらいね!」と褒める。
この年代の子供はなんかすりゃ褒められると思ってる。
そんなのあと何年も続くと思うなよ、と
人生の先輩としてアドバイスをあげようとしたが、思いとどまる。
「お姉さんが初めて一人で電車とか乗ったのは小学生のころだったよ」
幼稚園だよね、と続けようとしたが、その時。
子供の帽子に「小」という漢字のマークがあるのが目に入ったのだ。
危ない、危ない。
この年代の子供は、幼稚園か小学生かで大きな違いを感じる年頃。
小学生を幼稚園児と間違えるなんて、
彼にとっては生涯最大の侮辱になることだろう。
「君、ようち…いや、小学生だよね!だよね!あれなの!?1年生くらい!?」
「そうですねぇ、一年生は初めてですね。」
落ち着いてやがる。
ってか二回目の一年生にならように気をつけろよ。
ちなみにお姉さんは大学二年生を二回したからな。
「く、くらす替えとか、どうだった?」
小学生との話題なんてわからんから、適当につなぐ。
「何言ってるんですか、席替えしたばっかりだから、まだないですよー」
そうか、こいつ私立小学校か。そういうシステムか。
「じゃあ席替えどうだった?」
「本当はまひるちゃんの近くが良かったんですけどねぇ…」
俯いて、小さな声で呟く小学生。
先ほどまでの落ち着きは、どうもまひるちゃんの話題では発揮されないようだった。
そうか、そうか、いっちょまえに恋愛して。
ここはオトナとして、
いじりにいじりたおす!
「ねえねえwwww
もしかしてまひるちゃんのこと好きなの?wwww
ねえ好きなんでしょwwww
えっwwwどこが好きなの?wwww
言ってみ言ってみwwww」
「まひるじゃなくてま・ひ・ろ!!!!」
「えっまひお?wwwまひる?www
まあどっちでもいいからさwww好きなんでしょwww」
「僕、今日ダンスがあるんです。」
唐突に習い事の話題へ転換。
この子、できる…!
「ダンスピアノダンスピアノダンスピアノですよ!
…あっちがう、ピアノダンスピアノダンスピアノだ!」
「どっちも大して変わんないよ」
かなり習い事でお忙しい模様。
「ピアノ弾けるの?」
「ドードーソーソーラーラーソー!」
唐突に始まる大声での演奏会。
左手で指を律儀に動かしている。
鞄を鍵盤に見立てているんだろう。
恥ずかしいからやめろ、と言いたかったが
めんどくさいのでもうどうでもいいや。
「おっキラキラ星じゃん」
「ファーファーミーミーレーレードー!」
「ねえ知ってる?キラキラ星の作者」
「ソーソーファーファー!」
「いまだに作者わかんないんだって」
「ミーミーレー!」
「聞いてる?」
「ソーソーファーファー!」
「左ばっかで弾いてるけど右手では弾けないの?」
「右手は今定期入れ持ってるからできないんだってば(苦笑)」
聞こえてんじゃん。
「ところでさっきのまひるちゃんだけどさ、」
「じゃあ右でも弾いてあげるね!ドードーソーソーラーラーソー!」
「お、おう」
意図的だとしたら将来が恐ろしい。
その後キラキラ星の高速バージョンを披露してもらったりしている内に、
私の乗るバスが到着。
「じゃあお姉さん行くから。ダンスがんばってね」
「うん!じゃあねー!」
「またね!」
こどもってのはおもしろいなぁ。
なんかあの子とは友達になれる気がするわ。
彼とは月一で飲みに行きたいくらい、楽しかったです。
