次郎もそうだったように、
太郎も大勢の人からかわいがられた。
朝の散歩では、
早起きの高齢者に声をかけられ、
お昼には、
下校時の小学生に囲まれた。
犬が元気に自力で歩いていた頃には
そんなことはなかったなぁ・・・
カートに乗ったワンコは、
距離感が近くて親しみやすかったのかもしれない。
”可愛いね、がんばるんだよぉ~”
どこに行ってもいつも応援されて
19歳と8ヶ月。
太郎くんは本当によく頑張ったと思う。
***
「タロ坊には絶対”ピンクのガーベラ”!」
妹が可愛いガーベラをどっさり準備し、
生け花大得意の母親が太郎を美しく飾っていた。
迷ったけど
「一応連絡だけ・・・」
ご近所の中でも特に太郎を気にかけてくれた
伴野さんと日向さんに知らせた。
「すぐに行くから待っていて!」と
二人ともが駆けつけてくれた。
「これも持たせてやってほしいの。今、作ってきたところだから」
そっと太郎の横に
できたて”茹でマグロ”を置いてくれた日向さんは、
雑種中型犬・愛ちゃんを完全手作り食で18歳まで育て上げた。
伴野さんに至っては、
「!・・・・・」
静かなワンコを見るなり泣き崩れた。
お二人とも、
うちの犬を偲ぶとともに
ご自分のワンコとのお別れを重ねていたのかも知れない。
1週間後には、
お隣の町内で
太郎&次郎が3歳からシャンプーをしてもらっていた
もとトリマー・大野さんの突然の訪問があった。
「ごめんなさいね、当日は辛すぎてとてもこれなかった・・・」
忘れていたけど、ワンコが亡くなった日に
翌日に予約していた「爪切り」キャンセルのラインをしたんだった。
いただいた”花カゴ”の真ん中には
ピンクのガーベラが飾られていた。
***
お散歩の時間がぽっかりと空いた私。
当然ながら、
苦手な家事をやる気は全くおこらず。
作年末に不合格だった「医療通訳試験」準備も手つかず。
腰痛が悪化してしまったので、気分転換の散歩も無理。
ぼんやりした時間を何かで埋めたい気持ちで一杯だった。
そういえば、年末の「全日本」しっかり見てなかったな・・・
何の気なしに
2023年全日本フィギュアスケート競技会録画の一人観戦を始めた。
大ファンの宇野昌磨選手も引退しちゃったので、
静かにぼーっと見られるし・・・
そんな感じで全く期待していなかったのに、
織田信成選手のショートプログラムの演技に
ハッとして、重い気持ちが吹っ飛んだ。
”マツケンサンバ”をパワフルに踊りまくる織田くん。
冒頭の4-3回転コンピネーションを成功させた後は、
プレッシャーが減ったのか、ものすごく楽しそう・・・
袖のハプニングもいかにも織田選手らしくでアリだった。
観客と一緒に大喜びした後は、
昔と同じ”泣き虫織田くん”がキス・アンド・クライにいた。
いつの間にか一緒に号泣していた私。
なんの涙かよくわからなかったけど。
続けて見たフリーの演技も、
現役時代さながらの織田ワールド全開だった。
柔らかい膝で着地するトリプルアクセルも
腕を上げて廻るトリプルジャンプも
男子なのに無理くり感が全くない。
最初の4回転は降りられなくても、
悲壮感や必死感は全くなく、
最後の全日本パフォーマンスを楽しんでいるようだった。
後半のステップ・シークエンスは
スタミナ的にかなりキツかったと思うけど、
のびやかに表現していた。
あっという間の4分を見事に魅せ終わったら
小さく笑った織田くんから目が離せなかった。
やり切った感があるのか、安堵感なのか
そこに”泣きべそ織田君”の姿はもうそこになく、
爽やかな笑顔でリンクから上がっていた。
あんなふうに笑ってみたいな・・・
そしたら、
3月の世界選手権が楽しみになってきた。
なぜかはわからないけど、
私も頑張ったよ・・・
って思えてきた。
***
家族にあきれられるほど繰り返し見た織田選手のフリー演技。
使われた曲のタイトルに気が付いたのは最近だった。
それはロピー・ウイリアムの
ANGELS
天使に祈った。
いつかまた太郎&次郎に会えますように・・・





