6度目のダウン後、リングサイドの関係者がストップを促す仕草を見せる。

(Youtube time の 9:14と9:21)

6度目のダウンの左、左、右は、リングサイドにいたら相当な音だったと思われる。

(私もヘビー級の試合をリングサイドで見たことがあるが、それはもうとんでもないドッスン音で、怖くなるほどだった)

なので、フォアマンのドッスンパンチを聞いたリングサイドの関係者は怖くてたまらなくなりストップを促したのではなかろうか。

最後のダウンとなる6度目のダウンシーンは、フォアマンの破壊的パンチ力を世界に印象付けた。

左、左、右、の連続フックでなんとフレージャーの体が浮くのだ。

この浮きながらマットに沈んでいくと同時に、女性の悲鳴も相まって、なんとも悲痛なダウンシーンとなった。

ダウンの瞬間、アーサー・マーカンテ・レフリーは試合ストップを告げるジェスチャーを1度はしながら、フォアマンをニュートラルコーナーへ案内するのであった。しかし、最終的には、フレージャーの表情を再確認し、マーカンテ・レフリーは試合をストップする決断をようやく下すのであった。(果たして表情からなのか、2Rで6度のダウンを喫しているボクサーを単に続行させるわけにはいかなかったからなのか、なんとも言えないが…)。

 

それにしてもフォアマンの自信に満ちすぎたオーラ、冷徹な落ち着き具合は異常だった。

 

あのフレージャーが惨敗する姿を当時誰が想像しただろうか?
いまだ後世に残る衝撃的な王座交代劇であった。

 

 

 

 

 

 

4度目のダウンの後、ニュートラルコーナーにいるフォアマンへ、ディック・サドラー・マネージャー兼セコンドが大声で「ジョージ!ジョージ!」と叫ぶ。フォアマンがその声に気づいてサドラーに目を向けると、アッパーのジェスチャーをしている。再開後、フォアマンは指示通りアッパーを突き上げるのだが、それが左のアッパーであることに驚かされる。5度目のダウンはショートの左フックであった。(アーサー・マーカンテ・レフリーは、フレージャーがバランスを崩して倒れたと判断したようでカウントせず)。このダウンも衝撃的で、フレージャーはダウン後に勢いで1手2手ハイハイするような動きを見せた。もうバランスを保てないほどダメージを負っているのは明白で、普通ならレフリーストップが入ってもおかしくないのだが、いかんせん、倒れまくっているのは新米チャレンジャーのフォアマンではなく天下のフレージャーであることから、レフリーもなかなか止められない。また、フレージャーがすくっと立ち上がってしまうので、これも止めるタイミングを逸してしまった要因となってしまった。

 

 

 

 

このダウンが一番残忍なものとなる。

 

2R開始早々に、フレージャーはコーナーに追い詰められ、フォアマンの滅多打ちの嵐に合う。そして、[Youtubeタイムの2:35に]フォアマンの右がフレージャーの左頬に炸裂すると、フレージャーの足は言うことを聞かず小躍りするようなステップを踏まされることになる。そこへフォアマンが容赦なく「ダンスなんかしてんじゃねぇ!」と言わんばかりに追撃の一発をお見舞いする。この右も強烈で、フレージャーの頭が吹っ飛んで行きそうな凄まじい一撃であった。

 

ここで完全にフォアマンは勝利を確信した様子に見える。フレージャーのセコンドへ何か目くばせをしながらニュートラルコーナーへ向かうのであった。

 

一方、こんなに打ちのめされて計り知れないダメージを受けたフレージャーは、すくっと立ち上がり、試合を投げることはしなかった。

 

 

 

2度のダウンで完全にグロッキーなフレージャーが、立ち上がった後にダッキングを繰り返して必死にフォアマンのパンチを避けようとしてるうち、自ら後ろへひっくり返ったように見える3度目のダウン。しかし、この角度の映像を見ると、フレージャーのテンプルにフォアマンのコンパクトなアッパーがしっかりヒットしてフレージャーが吹き飛ばされているのが分かる。

1Rのゴングに救われコーナーに戻ると、若き日のエディ・ファッチが既に準備していたアンモニアをフレージャーに嗅がせて意識をシャキーンとさせる措置を取っている。それほどに深刻なダメージをフレージャーが負っていたのを物語っている。このおかげでフレージャーは2R開始とともに自分を奮い立たせて前進を始める(この根性はすごい)。アンモニアが禁止になった今の時代だったら、フラフラで2Rに突入して呆気なく負けていたかもしれない。