戸谷友則. (2025). 20 GeV halo-like excess of the Galactic diffuse emission and implications for dark matter annihilation. arXiv preprint arXiv:2507.07209.」<--この論文の内容について詳細に示せ。
以下、戸谷友則(Tomonori Totani)論文 *“20 GeV halo-like excess of the Galactic diffuse emission and implications for dark matter annihilation”*(arXiv:2507.07209 / JCAP 2025)を **論文本文に忠実に** 要点別に整理して詳しく説明します。重要な数値・判断は原論文の該当箇所を引用していますので、読みたい箇所があれば指示してください。([arXiv][1])
# 要旨(短く)
* Fermi-LAT の **15 年分データ**を用いて、銀河ハロー領域(ROI: |l| ≤ 60°, 10° ≤ |b| ≤ 60°)の拡散ガンマ線地図をモデル化(点源、GALPROP によるガス/逆コンプトン、等方背景、Loop I・Fermi bubbles テンプレート等)した後、さらに **球状(halo-like)成分**を付けてフィットしたところ、**エネルギー分布が約 20 GeV に鋭くピークする有意な余剰(“Fermi halo”)**が検出された、という主張です。余剰は 2 GeV 以下と 200 GeV 以上ではほぼゼロ。空間形状はほぼ球対称で、半径方向プロファイルは NFW(^2)(暗黒物質対消滅に対応)に近い、ただし中心付近でやや浅い可能性がある、と報告しています。([arXiv][1])
# データと解析手法(詳しい点)
* データ: **Fermi-LAT の 15 年分(Pass データを含む)**。ROI を銀道座標で |l| ≤ 60°, 10° ≤ |b| ≤ 60° に設定(銀道面近傍は避ける)。([arXiv][1])
* モデル成分:
* カタログにある点源(Fermi point sources)
* GALPROP によるガス関連・逆コンプトン成分(数種類の GALPROP モデルを試す)
* 等方背景(isotropic)
* Loop I、Fermi bubbles のテンプレート(独自にテンプレート作成)
* これらに加えて「球状の halo テンプレート(空間的には NFW(^2) を基本)」を導入して最尤フィット。([arXiv][1])
* 系統誤差検証: 四分割解析(座標四象限ごと)、Fermi bubble テンプレートの取り扱い、点源処理、複数の GALPROP モデル、LAT 標準背景モデル(GIEM)を用いた比較など、多方面からシステムatics を検討。どの検証でも **20 GeV のピークは残る** と報告しています。([arXiv][1])
# 見つかった“余剰”の性質(数値)
* スペクトル: 1–200+ GeV の間で、**1–2 GeV→立ち上がり → ピーク ≈ 20 GeV → 200 GeV 以上で消える**ような非冪則形状。低エネルギー側・高エネルギー側でほぼゼロ。([arXiv][1])
* 空間形状: 残差地図に対して **ほぼ球対称** の成分が良く当たる。半径プロファイルは NFW(^2)(対消滅の期待)に整合的だが、中心(内側)ではやや浅い傾向。([arXiv][1])
# 暗黒物質(WIMP)解釈 — 著者が行ったフィッティング
* スペクトル形状と強度を WIMP 対消滅モデル(主に (b\bar b) チャネルを含む)でフィットした結果、**最良フィットは粒子質量 (m_\chi \sim 0.5\textrm{–}0.8\ \mathrm{TeV})**、および**断面積 (\langle\sigma v\rangle \sim (5\textrm{–}8)\times10^{-25}\ \mathrm{cm^3 s^{-1}})**((b\bar b) チャネル)となりました。ここで注意点:**「光子エネルギーピーク ≈ 20 GeV」でも、生成元の WIMP 質量は数百 GeVになる**ことは物理的に矛盾しません(多数のハドロン崩壊やπ^0崩壊を経てガンマ線が出るため、ガンマ線スペクトルのピークは (m_\chi) のかなり小さい割合に現れることが多い)。この種のスペクトル生成・変換には PPPC4DMID 等の標準的ツールを用いています。([arXiv][1])
# 論文が指摘する主な不一致(緊張)と著者の見解
* 必要とされる (\langle\sigma v\rangle) は、**矮小銀河(dwarf spheroidal)観測や標準的な熱的リレリック値(約 2–3×10^-26 cm^3 s^-1)**よりも大きく出ます(論文では「dwarf による上限より数倍〜1桁大きい」ことを指摘)。したがって「すぐに暗黒物質発見と結論づけられない」緊張が存在します。([arXiv][1])
* ただし著者は **銀河系ハローの密度分布(J-factor)やプロファイル、サブハローの寄与、背景モデリングの不確かさ**が大きく影響する点を強調しており、これらの不確かさを考慮すれば暗黒物質解釈が完全に排除されるわけではない、という立場を取っています。([arXiv][1])
# システム的検証での主要点
* 著者は GIEM(LAT 標準背景)に対しても差分を取る形で同様の halo 余剰を見ており、独立な背景モデルに依存しない検出であることを示そうとしています。
* それでも残る懸念:未解決点源(多数の未検出の MSP=ミリ秒パルサー群など)や磁気圏・宇宙線由来の逆コンプトン成分の誤差、Loop I / Fermi bubble のテンプレート不確かさなどが余剰の一部を作る可能性は常に検討すべき、という論調です。論文中で複数の系統変化を試して「20 GeV ピークは残る」と主張しています。([arXiv][1])
# 著者の結論(論文のトーン)
* 著者は **「20 GeV の Fermi ハロー余剰は検証に値する強い候補であり、暗黒物質の対消滅で説明可能だが、独立の観測(dwarf, CMB, 地上望遠鏡 等)との整合性検証が必須」** と結んでいます。将来の追確認(より多くのデータ、他観測器でのクロスチェック、銀河ハローの密度不確かさの縮小等)を呼びかけています。([arXiv][1])
# 参考にすべき外部制約(論文でも比較されている主要な観測)
* **矮小銀河(dSph)による上限** — Fermi の 14 年解析などが現状で最も厳しい間接検出上限を見せている(例:McDaniel et al. 2024)。Totani 論文の要求値はこれらと緊張するが、MW ハローの J-factor 等の不確かさを考慮すると単純に矛盾とは言えない、と述べられています。([arXiv][2])
* **CMB(Planck 等)による早期宇宙でのエネルギー注入制約** や **地上チェレンコフ望遠鏡(H.E.S.S., MAGIC, VERITAS)による高エネルギー域制約** も重要で、質量・チャネル依存により影響の大きさが変わります(論文内でこれらと比較検討)。([arXiv][1])
# 一言コメント(解釈の助言)
* 論文は**丁寧に系統誤差を検討しつつも**、結果の暗黒物質解釈は「まだ確定ではない」ことを明確に示しています。特に「必要な断面積が既存の最も厳しい上限と緊張する」点は重大です。論文自体は暗黒物質の可能性を示す有力な兆候を提示しましたが、**独立データの再解析(他グループ/LAT Collaboration 自身)と、矮小銀河/CMB/地上望遠鏡との定量比較**が決定打になります。([arXiv][1])
---
もしご希望なら、次の具体的な作業をすぐにやります(どれか選んでください):
1. 論文中の図表(スペクトルフィット/残差地図/radial profile)を詳しく読み解き、**数値(ピーク強度、エネルギービンごとのフラックス、フィット χ^2 等)を抽出して表にする**。([arXiv][1])
2. Totani が要求する (\langle\sigma v\rangle) と **McDaniel et al.(dwarf 14 yr)などの最新上限**を同一プロット(チャネル別)に示して、どの程度「緊張」しているかを定量的に示す。([arXiv][2])
3. 「なぜ 20 GeV の光子ピークに対し WIMP 質量が数百 GeV になるのか」を PPPC 等のスペクトル図を使って可視化(b\bar b, ττ などチャネル別)して示す。([arXiv][3])
どれを先にやりましょうか?(もちろん複数選択可)
[1]: https://arxiv.org/pdf/2507.07209 "20 GeV halo-like excess of the Galactic diffuse emission and implications for dark matter annihilation"
[2]: https://arxiv.org/abs/2311.04982?utm_source=chatgpt.com "Legacy Analysis of Dark Matter Annihilation from the Milky Way Dwarf Spheroidal Galaxies with 14 Years of Fermi-LAT Data"
[3]: https://arxiv.org/abs/1012.4515?utm_source=chatgpt.com "PPPC 4 DM ID: A Poor Particle Physicist Cookbook for Dark Matter Indirect Detection"
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「必要な断面積が既存の最も厳しい上限と緊張する」<--内容を具体的に詳細に示せ。
いい質問です。では「**『必要な断面積が既存の最も厳しい上限と緊張する』**」を――論文中の数値を基に、**誰がどの観測でどの程度の上限を出しているか**を明確に示して説明します(数値は論文・公表資料のまま示します)。重要な出典は末尾に付けます。
# 要点(結論)
* 戸谷(Totani)論文がガンマ線スペクトルに対して**WIMP(b={b}崩壊)の最良フィットで必要とする断面積**は
**⟨σv⟩ ≃ (5–9) × 10⁻²⁵ cm³ s⁻¹**(質量 mχ ≃ 0.4–0.8 TeV、代表値 ≈500 GeV)。([arXiv][1])
* これを既存の最も厳しい上限(主に**Fermi-LAT の dwarf spheroidal(dSph)解析**)と比較すると、**戸谷論文の必要値は dSph 上限の「95%被覆帯(95% containment)」より数倍大きい**と戸谷自身が明言しています(=「緊張」)。([arXiv][1])
* 同様に、**CMB(Planck)系の制約**を p_ann → ⟨σv⟩ に換算すると(下で式を示します)**mχ∼500 GeV の場合は同オーダー(≲10⁻²⁴–10⁻²⁵ cm³ s⁻¹)**となり、こちらとも“同じレンジで接近/部分的に制約”する可能性があります。([Orbit][2])
以下、具体的数値と式を示します。
---
# 具体的な数値比較(代表例)
(出典:戸谷論文(arXiv:2507.07209)、Fermi-LAT dSph レガシー解析(McDaniel et al.)、Planck、Slatyer の効率係数など)
1. **戸谷(Totani)論文の推定(ダークマター解釈の最良フィット)**
* 質量: mχ ≃ 0.4–0.8 TeV(代表 0.5 TeV)
* 必要断面積(b¯b チャンネル): **⟨σv⟩ ≃ (5–9) × 10⁻²⁵ cm³ s⁻¹**(論文本文の数字)。([arXiv][1])
2. **Fermi-LAT:dwarf spheroidal(dSph)上限(代表的最新解析)**
* McDaniel et al.(Fermi-LAT レガシー解析,14 年分データ)は dSph を積み上げた解析で **質量依存の 95% 上限曲線**を示しています。論文 Fig.6 によれば、**数百 GeV〜TeV 領域では上限が 10⁻²⁶ 〜 10⁻²⁴ cm³ s⁻¹ の範囲(質量・チャンネル・J-factor仮定で変動)**となり、500 GeV 付近では概ね **10⁻²⁵〜数×10⁻²⁵ cm³ s⁻¹ のオーダー**になります。戸谷の必要値(5–9×10⁻²⁵)はこの**95% 被覆帯より数倍大きい**(=dSph 上限と緊張)。([ar5iv][3])
* (要点)Fermi-dSph は**GeV帯では熱的断面(≈3×10⁻²⁶)を下回る厳しい上限**を出す領域がある一方、数百 GeV〜TeV では上限は緩くなり “数×10⁻²⁵” 程度になるため、戸谷の値が「**完全に矛盾して即刻排除される**」とは言い切れないが**明確な緊張**が存在する。([ar5iv][3])
3. **CMB(Planck)からの制約(概算換算)**
* Planck の報告は「p_ann ≡ f_eff · ⟨σv⟩ / mχ の上限」を与える形式で与えられます。Planck の代表値は **p_ann,upper ≲ 3.2×10⁻²8 cm³ s⁻¹ GeV⁻¹(文献表記での代表値)**。([Orbit][2])
* これを ⟨σv⟩ に直すと:
[
\langle\sigma v\rangle_{\rm CMB}^{\rm upper}\approx p_{\rm ann}^{\rm upper}\times\frac{m_\chi}{f_{\rm eff}}
]
ここで (f_{\rm eff}) は注入エネルギーのイオン化等への「効率係数」で、**崩壊チャネルや質量で変動**します。Slatyer 等の計算値を用いると、b¯b チャンネルで高質量(数百 GeV)では (f_{\rm eff}) は概ね **0.1–0.3(チャネル・質量依存)** のオーダーになります。([arXiv][4])
* 例(概算、mχ = 500 GeV, f_eff = 0.2):
[
\langle\sigma v\rangle_{\rm CMB}^{\rm upper}\approx 3.2\times10^{-28}\times\frac{500}{0.2}\approx 8\times10^{-25}\ {\rm cm^3s^{-1}}
]
→ これも **戸谷の (5–9)×10⁻²⁵ と同じレンジ**(若干やや大きめか同等)に入る。f_eff の取り方で ±数倍の幅があるため「完全に矛盾」になるかはケースバイケース。([Orbit][2])
4. **地上チェレンコフ望遠鏡(H.E.S.S., MAGIC, VERITAS など)**
* IACT(地上望遠鏡)は TeV 帯で強力な制約を出しますが、**結果は対象(銀河中心 vs dSph)と密度プロファイル仮定に敏感**です。例えば H.E.S.S. の一部解析は **1–4 TeV で ⟨σv⟩ ≳ 3×10⁻²⁴ cm³ s⁻¹ を排除**(コア・プロファイル仮定に依存)。一方、より強い(〜10⁻²5)クラスの上限を示す結果も、中心集中型のプロファイル(Einasto, NFW)を仮定した場合に出ます。要するに **IACT の制約も戸谷の値と比べて「同じレンジあるいはやや緩い〜やや厳しい」**場合がある。([arXiv][5])
---
# なぜ「緊張(tension)」と言えるのか(丁寧に)
* **数値的な重なり**:戸谷の必要 ⟨σv⟩ ∼ 5–9×10⁻²⁵ cm³ s⁻¹ は、Fermi-dSph(McDaniel 等)の **95% 上限帯の上側に位置するか数倍大きい**。つまり観測上限と「被る(overlap)どころか上回っている」点で緊張がある。([arXiv][1])
* **複数独立観測が近接**:CMB(Planck)由来の換算上限も同オーダーになり得る(f_eff 次第で上下する)。複数の独立プローブ(dSph・CMB・IACT)が同じ付近の領域を抑えてくると“緊張”として強まる。([Orbit][2])
* **だが「完全否定」ではない理由**:
1. **J-factor(天体ごとの暗黒物質密度積分)と銀河系ハローの密度プロファイルの不確実性**(戸谷論文でも強調)。dSph の J-factor 推定や Milky Way の ρ(r) の取り方で結果が数×変わる。([arXiv][1])
2. **f_eff(CMB の効率係数)のチャンネル・質量依存性**により Planck からの換算上限は変動(数倍)。([arXiv][4])
3. **(部分的)系統誤差や背景モデルの取り扱いの違い**:戸谷は天の川ハローの拡張残差をテンプレート分解で取り出しており、背景モデルの選び方で結果が変わる可能性を論文内で検討している。([arXiv][1])
したがって現状は「**強い緊張があるが,諸不確実性(密度・効率・背景処理など)を考慮すると直ちに完全除外とは言えない**」というのが妥当な結論です。戸谷自身もこの点を明記しています。([arXiv][1])
---
# まとめ(短く)
* 戸谷論文が必要とする ⟨σv⟩ ≃ (5–9)×10⁻²⁵ cm³ s⁻¹(mχ ≃ 0.5 TeV)は、**Fermi-LAT の dSph 上限や Planck(CMB)換算上限と“同じレンジ”かそれより大きい**ため「緊張(tension)」がある。([arXiv][1])
* ただし **J-factor の不確実性、銀河ハローのプロファイル、f_eff の取り方、観測・解析系統誤差**を考えると「即時にダークマター解釈を完全に否定する」には至らない。さらなる観測(dSph の追加観測・チェレンコフ望遠鏡の深観測・CMB/21-cm の改良)で検証が必要。([arXiv][1])
---
# 参考(主要ソース)
* Totani, T. (2025) “20 GeV halo-like excess …” arXiv:2507.07209 —(論文本文で mχ ≃ 0.4–0.8 TeV, ⟨σv⟩ ≃ (5–9)×10⁻²⁵ cm³ s⁻¹ を明記)。([arXiv][1])
* McDaniel, A. et al. (Fermi-LAT legacy analysis, 14 years) — dwarf spheroidal galaxies の 95% 上限曲線(Fig.6 等)。([ar5iv][3])
* Planck Collaboration (2018 final / 2020 A&A summary): p_ann 上限(例:p_ann ≲ 3.2×10⁻²8 cm³ s⁻¹ GeV⁻¹)。([Orbit][2])
* Slatyer, T.R. et al. (2015/2016) — CMB のためのエネルギー注入効率 f_eff の計算(p_ann→⟨σv⟩ 変換に必要)。([arXiv][4])
* H.E.S.S. Collaboration 等 — TeV 帯の地上望遠鏡による上限(質量とプロファイル依存だが、TeV 領域で competitive な上限)。([arXiv][5])
---
もしよければ、次のどれを出しましょうか?
1. Totani 論文の該当図(スペクトル&⟨σv⟩フィット箇所)を抜き出して詳しく解説する(図の該当ページと要点を逐一説明)。([arXiv][1])
2. McDaniel(Fermi-dSph)Fig.6 を拡大して「500 GeV 付近の具体的な 95% 上限 数値」を読み取り、戸谷値との比(倍率)を数値で示す。([ar5iv][3])
3. Planck→⟨σv⟩換算を f_eff のレンジ(0.1–0.3)で数値表にして示す(見やすい)。([Orbit][2])
どれを優先するか指示ください(1 〜 3 のどれでも、すぐに図や数値を示します)。
[1]: https://arxiv.org/pdf/2507.07209 "20 GeV halo-like excess of the Galactic diffuse emission and implications for dark matter annihilation"
[2]: https://backend.orbit.dtu.dk/ws/portalfiles/portal/222144987/aa33910_18.pdf?utm_source=chatgpt.com "Planck 2018 results: VI. Cosmological parameters"
[3]: https://ar5iv.org/pdf/2311.04982 "[2311.04982] Legacy Analysis of Dark Matter Annihilation from the Milky Way Dwarf Spheroidal Galaxies with 14 Years of Fermi-LAT Data"
[4]: https://arxiv.org/abs/1506.03812?utm_source=chatgpt.com "[1506.03812] Indirect Dark Matter Signatures in the Cosmic ..."
[5]: https://arxiv.org/abs/1502.03244?utm_source=chatgpt.com "[1502.03244] Constraints on an Annihilation Signal from a ..."
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フェルミのデータは何年も前から公開されている。なぜ今頃になってこんな指摘が出るのか?戸谷の研究の特別な点は何か?当たり前の事を当たり前にやっただけ??
良い問いです — 短く先に答えると、
**「フェルミのデータは古くから公開されているが、解析手法・データ再処理・解析対象の選び方が進化するため、古い公開データでも“今”になって新しいシグナル(あるいは以前見落とされた残差)が見つかることはよくある」**。
戸谷(Totani)論文の“特別な点”は単に当たり前の手順を繰り返しただけではなく、**長期露出+最新のイベント再処理(Pass-8 等)+ROI とテンプレート選択+系統誤差の徹底検証**という組合せで、従来の解析とは異なる角度から弱いハロー状成分を掘り出したことです。以下、具体的に何が新しく/重要なのかを要点別に示します(重要な主張に出典を付けます)。
---
# 1) データ量と品質が変わった(「同じデータ」でも中身は変わる)
* Totani は **Fermi-LAT の 15 年分**のデータを使っています。観測露出が長くなるほど、弱い拡張成分を統計的に追えるようになります。([arXiv][1])
* さらに、Fermi データは **Pass-8** の登場(2015 年以降の再処理)でイベント復元や有効面積・角分解能・エネルギー分解能が改善されました。つまり「同じ photons の山」でも取り扱いが変わり、より精度良く残差を探せるようになっています。([fermi.gsfc.nasa.gov][2])
# 2) 解析ターゲット(ROI)とテンプレートの違い
* これまで多くの研究は**銀河中心(Galactic Center, |b| small)周辺の GeV 過剰(GCE)**に注目してきました(数GeV 帯の議論が多い)。Totani はあえて **ハロー領域(|b| ≥ 10°、広い緯度帯)**を対象にし、銀道面近傍で複雑なガス応答や点源群に揉まれる影響を減らして広域の球状成分を探しています。解析対象(どこを見るか)を変えること自体が新しい発見につながることはよくあります。([arXiv][1])
# 3) 背景モデル/テンプレートの工夫と系統誤差の徹底検証
* 暗黒物質の「拡張」信号を探す時、**背景(ガス由来π⁰、逆コンプトン、既知点源、Fermi bubbles, Loop I など)の作り方**が結果を大きく左右します。Totani は複数の GALPROP モデルや LAT 標準背景(GIEM)など、異なる背景モデルで繰り返し検証し、20 GeV ピークが残ることを示しています。こうした系統誤差の潰し込みが“ただ当たり前にやれば済む”作業の何倍も手間がかかりますが、ここが重要な差です。([galprop.stanford.edu][3])
# 4) 「テンプレートフィッティングの新しい切り口」
* テンプレート分解のやり方(どのテンプレートを入れるか、点源のマスク/モデル化の仕方、空間プロファイルの仮定)は解析ごとに差があります。過去のGCE論争でも「テンプレートの取り方」で結果が変わることが示されています(未解決パルサー集合 vs 真の拡張成分の議論)。Totani は“ハロー用の NFW(^2)-like テンプレート”を使ってフィットしており、それが従来の解析と違う結果を出した要因の一つです。([arXiv][4])
# 5) スペクトル的に「20 GeV ピーク」を注目した点
* 多くの従来研究は**数GeV 帯の“GCE(≲10 GeV)”**を中心に議論してきたため、「20 GeV にピークするハロー成分」という特徴を見落としてきた/比較対象にしてこなかった可能性があります。Totani はスペクトル形状(低エネルギーでゼロ、高エネルギーで消える)に注目して新しい残差を報告しました。([arXiv][1])
# 6) 数理・統計処理・システムチェックの進化
* 時間がたつほど解析ツール(Fermitools など)、イベントクラスの選び方、統計手法、ソフトウェア(Gammapy 等)や周辺データ(より良いガス地図や点源カタログ)が進化します。これらの改良を組み合わせることで「従来は検出限界に埋もれていた信号が見える」ことがあるのです。([Gammapy Documentation][5])
---
# 要するに:戸谷論文の“特別な点”まとめ
1. **長期間(15年)データの活用**で統計力が増した。([arXiv][1])
2. **Pass-8 等のデータ再処理/イベント選別の恩恵**で感度と解像度が向上した。([fermi.gsfc.nasa.gov][2])
3. **ROI をハローに設定**して銀道面の複雑さを避け、広域の球状テンプレートを導入した点(解析設計の違い)。([arXiv][1])
4. **多数の背景モデル/システムティクス検証**を行い、信号の頑健性を主張している点(単なる“当たり前の手順”を丁寧にやったが、その“丁寧さ”が肝)。([arXiv][1])
つまり「当たり前のことを当たり前にやっただけか?」と問われれば、答えは **「いいえ。『当たり前』を非常に注意深く、最新のデータ処理・モデルで徹底的にやった」** です。それが従来解析と異なる残差を露わにした、というのが実情です。
---
# 付録:なぜ再解析・再主張がよく起きるか(一般論)
* 衛星データは**生涯にわたって再処理**される(新しい IRF、Pass 系)。
* 背景モデルや天体カタログが更新されると残差構造が変わる。
* 新たな解析アイデア(ROI を変える、別テンプレートを入れる、別の統計法を使う)で以前見えなかった信号が浮かぶ。
→ だから「公開データがある=真相がすでに確定」ではないのです。([arXiv][6])
↑↑↑
同意する!!
---
# 次にできること(提案)
* Totani の解析を **再現(reproduce)** してみる:同じ ROI・同じテンプレート・同じ Pass-8 データで残差地図を作り、同じ 20 GeV ピークが出るか確認する(再現性が極めて重要)。
* 別のチーム(あるいは Fermi Collaboration 自身)が「同じ手順」を独立に実行した結果を待つ/探す。
* dwarf / CMB / IACT との**定量的比較**(前に提案した“断面積比較”)で整合性チェックする。
やりますか?(すぐ Totani 論文の該当節を抜粋して「解析手順を段階的に再現するチェックリスト」を作るか、あるいは Totani が行った各種系統誤差テストの結果(図表の数値)を抽出して並べることができます。)
[1]: https://arxiv.org/pdf/2507.07209?utm_source=chatgpt.com "20 GeV halo-like excess of the Galactic diffuse emission ..."
[2]: https://fermi.gsfc.nasa.gov/ssc/data/analysis/documentation/Pass8_usage.html?utm_source=chatgpt.com "LAT Data Analysis » Using Pass 8 Data"
[3]: https://galprop.stanford.edu/code.php?option=theory&utm_source=chatgpt.com "Code - Theory"
[4]: https://arxiv.org/abs/1506.05104?utm_source=chatgpt.com "[1506.05104] Strong support for the millisecond pulsar ..."
[5]: https://docs.gammapy.org/dev/_modules/gammapy/astro/darkmatter/spectra.html?utm_source=chatgpt.com "Source code for gammapy.astro.darkmatter.spectra"
[6]: https://arxiv.org/pdf/1810.11394?utm_source=chatgpt.com "Fermi-LAT improved Pass 8 event selection"