前歯が欠けてしまったのは、金曜の午後6時前。
ある程度の歯医者さんは、受付が終わっていたり、新患は受け付けてくれないだろうと思った。

けど、必死だった

月曜から5日間出張で、土曜も仕事だったからだ。
何件か必死に電話をして、やっとお話を聞いてくれて、応急処置ならと言ってくれた病院があった。

私は、そこに急いで向かった。

いざ、歯医者さんの入口ドアの前に立つと、やっぱり帰りたいという思いでいっぱいだった。

深呼吸して、入った。

おそらく、いや絶対に私は迷惑な患者だろう。

でもそれ以前に、私は冷や汗がダラダラだった。
余裕などない

問診票に記入をする。

正直に書いた
「歯医者が大嫌いです」と。

名前を呼ばれて、診察室に入った。
足が思うように動かない。

自分の歯を見せるのも嫌だし、怖いし。

でも衛生士さんが優しく席まで案内してくれた。
私の気持ちを察してくれたのか、一緒に席まで行ってくれた。

席について、担当の先生が挨拶してくれた。
女性の先生だった。

ゆっくりと、私の話を聞いてくれた。
先生は大丈夫ですよと。何度も言ってくれた。
たまたま今日、キャンセルが出たので私が大丈夫だったら、しっかり診察がしたいと言ってくれた。

そこから、その時間から。

私の戦いが始まった。