また、何日か過ぎたある日。
「どこ行こうかな~」
依織は、近所のカフェやレストランを覗いていた。時間は三時。ランチタイムは終わっているのに、なかなか席が開いている店が無い。
「困ったな…」
依織のお腹は、ぐるるるると空腹を訴えた。連日ろくな休憩も取れてなかったから、今日の来客は少なそうと考えた店長が「三時間ぐらいゆっくりしてきて」と言ってくれたのだ。実際ヘトヘトだったし、有り難く休もうと思ったのだが…
「お姉さん、お姉さん」
ふいに声をかけられ振り向くと、自分と同じぐらいの年の和装の女性が手を振っていた。ふんわりと柔らかい表情をした彼女に近づくと、微かにお香の香りがした。
「このお店、もうすぐお客さん帰りますよ」
先ほど覗いてみたカフェだ。だが、帰る様子の人はさっきはいなかった。
「?」
不思議に思って見ていると、本当に四人掛けのテーブル客が立ち、店を出てきた。
「ね?」
女性はにこにこして、依織を見た。
「ご一緒にいかがです?」
女性はにこやかに依織を誘い、依織も次を探す体力も切れていたので言葉に甘える事にした。
「お煙草、吸っていただいて大丈夫ですからね」
席に着くと、そう女性は言った。
「あ、すみません。タバコの匂いしましたか?」
依織は、まだ煙草もライターも女性には見せていない。
「いいえ。しませんよ」
不思議な女性だ。だが、優しげに微笑むその姿に、依織はなぜか警戒心が芽生えた。もちろん、それは顔には出さない。笑顔を見せて、遅い昼食を食べ始めた。
「あなたの周りにはいつもたくさん人が集まってくるのね」
パスタを口に入れただけなのに、その人は嬉しそうに言った。
「え?」
「良いご縁も悪い縁も。でも、あなたは守られているから、悪い縁は向こうから立ち去っていくわね」
「……あの」
「はい?」
依織の困った表情に、その人は首を傾げた。
「あの…なんですか?さっきから」
「え?あ、やだ…ごめんなさい。また、やっちゃった…」
女性は申し訳無さそうに謝ると、自分のパスタを食べ始める。
「私は、あなたがたの『良い鴨』になんてならないですよ」
「え…?」
「占い師とか言うんでしょ?」
女性は否定しなかった。警戒心剥き出しになった依織に対して、女性はなぜか笑顔を見せた。
「はい。スピリチュアル占い師の華です」
依織は答えない。
「依織さん。ですね?」
「誰かに聞いたんでしょ?」
「どこで生まれて、どんな人生を歩んできたのかも、全て守護霊様が教えてくださいます」
「探偵でも雇ったんじゃないですか?」
依織は、さっさとこの場から離れたくて別の席が空いていないか、辺りをキョロキョロ確認した。だが、空いていない。
「昔の恋人の事も分かりますよ」
「随分と探偵も頑張りましたね」
「探偵ではなく、あなたの後ろにいるご本人が教えてくださっているのです」
依織はキッと華を睨みつけたが、華は真面目な顔をしている。
「では、これをお伝えすれば私を信じていただけますか?」
「………」
「あなたが昨夜見た夢。亡くなった彼でしたでしょ?」
ガタンッと依織は椅子を倒しながら立ち上がった。その顔は、青くワナワナ震えていた。
「お座りください」
周りにいる客も、店員も何事かと様子を伺っている。依織は、華の言葉には従わず、食事の途中で荷物を持つとさっさと会計を済ませてカフェを飛び出した。
「きっとまた、お会いできますように」
華はそう呟くと、何事も無かったように食事の続きを始めた。
「なんなの!?いったい!」
店を飛び出した依織は、あまりのことに怒り口調が出てきていた。
「ふざけんじゃないわよ!」
『あなたの後ろにいるご本人が』
華の言葉を思い出すと、依織の顔は急に暗い表情に変わった。
「私の後ろに………?本当にいるの?」
俯いた依織の目からポロポロと涙が溢れ出てきていた。
「依織?」
聞き慣れた少し懐かしいような声に依織は顔を上げた。見ると、スーツ姿の陽輝が立っていた。
「どこ行こうかな~」
依織は、近所のカフェやレストランを覗いていた。時間は三時。ランチタイムは終わっているのに、なかなか席が開いている店が無い。
「困ったな…」
依織のお腹は、ぐるるるると空腹を訴えた。連日ろくな休憩も取れてなかったから、今日の来客は少なそうと考えた店長が「三時間ぐらいゆっくりしてきて」と言ってくれたのだ。実際ヘトヘトだったし、有り難く休もうと思ったのだが…
「お姉さん、お姉さん」
ふいに声をかけられ振り向くと、自分と同じぐらいの年の和装の女性が手を振っていた。ふんわりと柔らかい表情をした彼女に近づくと、微かにお香の香りがした。
「このお店、もうすぐお客さん帰りますよ」
先ほど覗いてみたカフェだ。だが、帰る様子の人はさっきはいなかった。
「?」
不思議に思って見ていると、本当に四人掛けのテーブル客が立ち、店を出てきた。
「ね?」
女性はにこにこして、依織を見た。
「ご一緒にいかがです?」
女性はにこやかに依織を誘い、依織も次を探す体力も切れていたので言葉に甘える事にした。
「お煙草、吸っていただいて大丈夫ですからね」
席に着くと、そう女性は言った。
「あ、すみません。タバコの匂いしましたか?」
依織は、まだ煙草もライターも女性には見せていない。
「いいえ。しませんよ」
不思議な女性だ。だが、優しげに微笑むその姿に、依織はなぜか警戒心が芽生えた。もちろん、それは顔には出さない。笑顔を見せて、遅い昼食を食べ始めた。
「あなたの周りにはいつもたくさん人が集まってくるのね」
パスタを口に入れただけなのに、その人は嬉しそうに言った。
「え?」
「良いご縁も悪い縁も。でも、あなたは守られているから、悪い縁は向こうから立ち去っていくわね」
「……あの」
「はい?」
依織の困った表情に、その人は首を傾げた。
「あの…なんですか?さっきから」
「え?あ、やだ…ごめんなさい。また、やっちゃった…」
女性は申し訳無さそうに謝ると、自分のパスタを食べ始める。
「私は、あなたがたの『良い鴨』になんてならないですよ」
「え…?」
「占い師とか言うんでしょ?」
女性は否定しなかった。警戒心剥き出しになった依織に対して、女性はなぜか笑顔を見せた。
「はい。スピリチュアル占い師の華です」
依織は答えない。
「依織さん。ですね?」
「誰かに聞いたんでしょ?」
「どこで生まれて、どんな人生を歩んできたのかも、全て守護霊様が教えてくださいます」
「探偵でも雇ったんじゃないですか?」
依織は、さっさとこの場から離れたくて別の席が空いていないか、辺りをキョロキョロ確認した。だが、空いていない。
「昔の恋人の事も分かりますよ」
「随分と探偵も頑張りましたね」
「探偵ではなく、あなたの後ろにいるご本人が教えてくださっているのです」
依織はキッと華を睨みつけたが、華は真面目な顔をしている。
「では、これをお伝えすれば私を信じていただけますか?」
「………」
「あなたが昨夜見た夢。亡くなった彼でしたでしょ?」
ガタンッと依織は椅子を倒しながら立ち上がった。その顔は、青くワナワナ震えていた。
「お座りください」
周りにいる客も、店員も何事かと様子を伺っている。依織は、華の言葉には従わず、食事の途中で荷物を持つとさっさと会計を済ませてカフェを飛び出した。
「きっとまた、お会いできますように」
華はそう呟くと、何事も無かったように食事の続きを始めた。
「なんなの!?いったい!」
店を飛び出した依織は、あまりのことに怒り口調が出てきていた。
「ふざけんじゃないわよ!」
『あなたの後ろにいるご本人が』
華の言葉を思い出すと、依織の顔は急に暗い表情に変わった。
「私の後ろに………?本当にいるの?」
俯いた依織の目からポロポロと涙が溢れ出てきていた。
「依織?」
聞き慣れた少し懐かしいような声に依織は顔を上げた。見ると、スーツ姿の陽輝が立っていた。



