こう見えて若い頃は化粧もばっちりしていた
社会人に成り立ての頃は
とにかく小さな目をひたすら目立つように
派手なグリーンなんかのシャドーを塗りたくっていた
当時の上司はそんな私の顔を見て
何か言いたげであったが
はたしてその時注意されたとして
私は素直に応じたであろうか
あの頃の
親の家からとにかく出たくて
就職した先で同期と狭い二間の寮での同居生活であっても
自由が嬉しくて浮かれまくっていた娘であった
それからずいぶんと経った頃(20年近く)
パートで働いた所はファストフードの店員だった
食べ物商売であったから
長くしていた髪の毛はまとめて結わえなければならなかったし
何年も長くしてマニュキュアを塗っていた爪も短く切らなければいけなかった
でもそれなりに化粧だけはしていた
時々 若白髪も染めぬ 化粧さえしないと言う同年代の人を見れば
「人前でスッピンなんて裸でいるようなもの」とまで信じきっていた
「化粧」はおしゃれと言うより
「身だしなみ」だと
そしてそれは外界から自分を守る鎧のようなものと思ったりもした
夫が亡くなり
白髪染めをやめた
仕事中は帽子をかぶるので良いが
普段もニットの帽子をかぶり
短くした地毛から染料が抜けた頃に
パッと帽子を取り
グレーヘアーのデビューを果たした
ちょうど世間ではグレーヘアーが流行りだした頃であった
でもそれは綺麗でかっこいい人がするから良いのであって
初老の女のそれは
単に貧乏くさいイメージでしかなかったかも
化粧に関しても
仕事中にかく汗のせいで帽子の縁やマスクが汚れるのがいやで化粧をしなくなった
かろうじて眉毛だけは描いているが…
朝も洗顔して簡単に化粧水つけて
眉毛描いて
ただそれだけ
今どきの男子の方がもっとおしゃれかもしれない
とても楽なんである
それは白髪染めや化粧をしないから楽と言うのだけでなく
グレーヘアーの初老のおんなでいることが
そう見せる事で
いろいろめんどくさい詮索をされずに済んでいるような気がするからである
そのままの外見である事で
実は内なる野望や煩悩やら
うまく隠せているのではないだろうか
夜中に覚醒してしまい
こんな事を書き留めてみた