姉がさゆりが買えるなら買いたいと思っている「古民家」を見たいと言う。
「それなら行こうか、でもまだ白内障の手術の後だから電車で行くね。」
最寄の駅で待ち合わせ姉の車に乗り込む。
「古民家」までの一部の道が狭く急であることを姉に伝えてあったので、今日は姉の愛車ではなく、姪の軽四で現地に向かう。
長女に連絡すると、長女も来ると言っている。
そこに売り主さんが依頼した不動産屋の担当さんから連絡が入った。
新幹線で早く待ち合わせの駅に着いたさゆりは、姉が来る前に売り主さんからのメールに添付してあった不動産屋さんに、連絡を入れてあったからである。
不在だった担当さんが折返し連絡をくれたのであった。
姉が運転する車の助手席で人懐っこい感じの担当さんと話しをしていく。
さゆりはそれでも自分がこの「古民家再生プロジェクト」に費やせる費用は大まかではあるが計算をしていた。
「古民家」専門の不動産屋が出した売り値がさゆりの予想を上回ったら、きっぱり諦めるつもりでいた。
夫がいたときから漠然と思っていたさゆり自身の夢…
知れば知るほど、調べれば調べるほど、そこに足を踏み入れる勇気が失われて行くようだった。
だが、
有言実行
夫亡き後、さゆり自身に課していた言葉である。
夫が亡くなったけど、働けるだけ働いて行く。
夫のように、ある日突然その人生が閉じる事もある。
だから、悔いのない人生を送っていく。
今まで憧れていただけだったキャンプや、車での遠出、
誰かに連れて行ってもらうのではなく、さゆり自身の力で楽しみを見つけていく。
家族の問題もあるけれど、さゆり自身が流されないようにする。
3年経って実行出来たこともいくつかあった。
陸上競技で例えれば、短距離なら走り通せた、通せていると思う。
(タイムは気にしていません😆)
だけど、長距離走はどう走っていいかわからない。
右往左往しながら、最短距離を無視して走っているようだ。
「売り値はですね〜○○万ですよ〜交渉次第で少しは安くなりますよ〜」
「○○万…」
さゆりは自分が突拍子もない声を出していないか慌てた。
それはさゆりが思っていた金額の3分の2だったのである。
さゆりが以前他の物件で話しをしたことがある不動産屋の査定の3分の1以下だったのであった。
そして姉と現地を目指した。
誰もが気にして言う、
「あの進入路が問題だね!」
しかし、
自宅周辺の田舎道をすっ飛ばしている姉は、普通なら何度か切り替えして上がって行かなければならないその鋭角の坂道をいきなりグイグイ登って行く。
若いころ、免許取り立てで箱根の山道を慣らし運転し、免許取り立てで静岡↔青森を往復した猛者であった。
姉の目下の楽しみ、
ユーチューブでの「古民家再生チャンネル」
伊達に見ているわけでもないようだ。
さゆりがその朽ちた水回りのあたりの再建築を考えていた場所を、
「ここはバッサリ減築にすればいいよ!」と提案をする。
「なるほどね!それは考えていなかった〜その方がお金かからないよね〜」
さすが!姉ちゃん!
つづく