○○さゆり様、
先日は内覧にお越し頂きありがとうございました。
家についてはまず古民家に精通している不動産屋に相談をしてみます。
鍵を同封いたしましたのでお取り置きされた家財は6月○日までに引き取って頂けますでしょうか。
よろしくご考察お願いします。
古民家家主
丁寧な手紙と共に古民家の鍵が送られて来た。
先日の内覧の時に、処分してしまうという家財をその日はご厚意で置かせて頂いていた。
期日の6月○日というのは、きっと家財処分の業者が入るからであろうとさゆりは推察した。
さゆりは実家の母が亡くなり姉と家の片付けをした時のことを思い出した。
実家と言ってもさゆりが二十歳で結婚したあとに姉が買った中古の建売だった。
その後、姉が兼業農家の義兄と結婚したあとは母がひとりで住んでいた。
母の最後は以前ブログにも書いたかもしれない。
親というものは知らず知らずのうちに歳老いていた。
子供として親の老いていく姿、普通なら自分より先に逝くであろうその姿をなかなか認めたくないものである。
見ないでいたのかもしれない。
母が亡くなった後、その実家は住む者も居なく、老朽化もしており解体することに決まった。
さゆりと姉は軽トラに荷物を詰め込み実家から車で20分はあるだろうその処理場に何回も往復した。
小さな家の中の沢山の荷物…
全ては無理でも3日はかかってしまったが、
姉はもちろん、県内に住むさゆりだから出来たのかもしれない。
今回の古民家の家主さん、遠く県外からわざわざ来るわけである。
一度に済ませる為に業者さんに依頼したのも仕方ない事なのであろう。
6月の初めにさゆりは自身の目の手術を予定していた。
今日はその事前検査に朝から来院した。
検査は薬で瞳孔を広げ検査をする。
瞳孔を広げると光が眩しく目を開けていられない。
だから、その日は自分で運転してこないように言われていた。
息子に送迎をしてもらい事前検査をしたさゆりは眼科の看護師に手術後の注意事項を確かめた。
さゆりの場合、片目は近く(スマホの距離)片目は中間(パソコンの距離)にそのレンズを決定した。
車の運転にはメガネを作らなければならない。
しかし、メガネを作る時期は術後に目の見方が安定した後が良いだろうという話しであった。
もちろんレンズの種類、個人差もあるだろうが…
そうなると、一ヶ月ぐらい運転が出来ない事になる。
事前検査を終え家にもどり…
それならば手術の前の今日動くしかない!
しばらくして目の瞳孔が戻ったら出かけよう!
まだ10時にもなっていない…
しかし、何度も鏡で確認しても左目の瞳孔は大きく開いたままであった。
開いているから眩しくて仕方ない。
昼まで待って一時は諦め、ベッドに横になりいつの間にか寝てしまった。
15時30分、昼寝から覚める。
あれ?行けるけも…
鏡で見ると瞳孔は小さくはなりきっていないけど、まぶしくはない!
車の鍵を取り自宅を出発した。
その時、心配した友人からライン!
「出発!」と返したさゆりに、友人は、
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
「こちらも行くね!」と友人
さゆりの「古民家計画」を密かに応援している友人も行くと言う。
今度はさゆりが、
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工、こんな時間から来るんかい〜」
しかしもう運転中のさゆりがその友人を止める術はなかった。