土日にはなかなか予約の取れないこのキャンプサイト、


シフト制の仕事の私にはかえって好都合、

平日の空いた日にいつでもキャンプをしにこれる。


夫が亡くなってから始めたソロキャンプ、

一年経って、誰の手も借りず新しい幕も張れるようになった。


「赤井さ〜ん、お願い🧡」みたいに誰かに助けを求めるのは、何故か負けた気がして嫌だった。




真冬のキャンプ、ひとつ間違えれば命だって危ない。


狭いテントの中で一酸化炭素中毒で倒れていたなんて、

命より、恥ずかしさの方が先にたってしまう。



ふもとの朝はきびしい





昨夜の雨による水溜りはバリパリに凍りついている。


水場に向かう途中、

そこを踏みしめた感触に、もうだいぶ昔の事を思い出す。





「おかあさん!ほら、おかあさんの好きな氷の道だよー」

舅の亡くなった後に、残された姑と暮らすようになった田舎、

暖かな県内でも積雪のある地域であった。



朝の道を近くの幼稚園まで、6歳の息子の手を引いて歩いて行く。


寒い冬の日に未舗装の水溜りに出来た霜柱、
私はなぜか、これを踏みバリバリという音を聞くのかが好きだった。

何センチも育った霜柱を踏みしめる。

意にそぐわなかった姑との同居、
夏に始めたそれは、冬とともにお互いのこころ中に冷たい風がふいていた。


子供のように一心にバリバリと霜柱を踏んでいた母親、

幼い息子は、母親の好きな物と思い嬉しそうに私に告げた。



今から思えば、母と子のもう二度と帰って来ない時間だった。