義母の変化はやはり転居がきっかけだったのだろうか、

それまで住んでいた家の老朽化に伴い家を新築する事になった。


今まで住んでいた家の土地は実は借地だたったため、新築となると他に土地を探さなければならなかった。


その場所も夫が仕事の帰りにフラッと決めてきた。

それまで住んでいた場所は、県内で唯一積雪を記録する所であったから、市内でもなるべく積雪の少ない場所を選んだのであった。


その頃には長女は大学生になり家を出ていた。 次女、長男もそれぞれ大きくなり個室に籠もっていたし、夫もさゆりも仕事だったので、新しい土地で近所に知り合いもいない義母は話し相手もいなかった。

年寄りには環境の変化から認知症等のそういうリスクもあると知っていたけれど、義母の場合は本人の性格もあったとさゆりは思っている。

何かにつけ依存性が高くいつも不安と不満を持っている人だった。

何か良くない事がおきるのは、ご先祖さまをないがしろにしているから、過去の過ちから今報いを受けている。

そんな義母の呪いのような言葉は今でもさゆりを支配している。


そして義母は小さな脳梗塞を頻繁に起こし、その度に認知症も進んで行ったが、

義母は介護認定も受け、ディサービスやショートスティを利用しながらでも過ごせたので、さゆりも仕事を続けながら義母の介護をした。

ただし、休みは一日中義母と家にいる事になった。

悪い事は重なっておきるのか、それともその時の精神的な疲労がそれらを次々と呼び起こすのか…

さゆり自身の更年期障害の症状でもあったのか、元来は呑気な性格のさゆりは何かにつけ悪い方、悪い方のネガティブな思考に支配されてしまっていた。

変な言い方ではあるが、今ならその現状の中にだって楽しむ事は出来ただろうにと思っている。なんならその頃にはさゆりに依存していた義母を外に連れ出して、気分を変える事もあったかもしれない。


まぁ、でも、後からならなんとでも言えるのかもしれないけれど…



脳梗塞からか、食事の嚥下がどんどん低下していた義母だった。