厨房に入る裏口の所に、今年もつばめが巣を作った。


毎年の事ではあるが、つばめの雛が育ち、独り立ちするまでなかなか、気になるものである。


ある年はしげみからヘビが出てきて、その巣を目指しぬるねると壁を這っていた。


ひながその巣から落ちていたのも初めてではない…


親鳥が心配して落ちたひなのあたりをぐるぐる飛んでいるが、もちろん親鳥に何か出来るわけでもないのである。




職場の新人の若い彼…


巣から落ちた綿毛の塊のようなひなをはしごを探して巣に戻した。



大人は知っている。


一度落ちたひなを親鳥が受け入れる確率の低いことを…




かわいそうだから…


若い彼は顔を赤く染めてつぶやく…


実はその巣にはもう一羽のひながいた。



親鳥が戻らなければ、そのひなもだめかもな…


世間ずれした年長の人が何気に言った。



しばらく親鳥は戻って来なかった。


わたしは、親鳥がひなに餌を与えずひなが死んでしまったら、


若い彼のこころに傷を作ってしまうのではないかと…心配になった。




それぞれ職場にもどり、静かになるのを待って親鳥が戻ってきた。



ひとまず安心したわたしであった。