阿波の与太郎ブログ -62ページ目

闇の中の枷

 逃げ出そうと思えば、いつでも逃げ出せるはずだった。
 しかし現実というものは、そんなに甘くはない。  俺は這いつくばった姿勢のまま、何時間も動けずにいた。
 俺の手と足は鉛のように重い。いつもなら風を切るが如く、素早く動かせられるのに。
 ドンッ!ドンッ!ドンッ!
 地響き。いつもなら身体にこんな激しい振動を感じることはないが、何時間も動けないままでいると、この地響きによる振動が、俺の肚を殴打して非常に辛い。
 ガサガサッ!
 何だ? 誰かいるのか?
 次の瞬間、風を感じた。数時間ぶりの風だった。俺の手足は鉛のように重いままなのに、俺はこの枷を外されることを許されたのか?
 また次の瞬間、今度は光を感じた。これも数時間ぶりの光だが、俺は光を感じるのは良しとしない。しかし、この光だけは俺を祝福してくれる光のように感じられたのだった。この世に生を享けてから、こんなに光というものを有り難いと感じたことはなかった。
「お母さーん、ゴキブリホイホイにゴキブリが入ってるよー」
「今すぐ捨てなさい!」
 俺の視界はすぐに闇で閉ざされ、凄まじい勢いで俺の身体はぎゅうぎゅうに圧迫され、気がついたときには。
 俺は死んでいた。