「こんなデカイ女でいいの?」

彼女は、そう言いながら僕を押し倒した。


デカイ女は好きなのだが、何でもいいわけじゃない。少し大きめの服でも気に入れば買うこともある。


大体、なんで二人でこの部屋にいるのかもあまり覚えていないだが、取り合えず僕は服を着たまま「デカイ女」に押し倒され、体のあちらこちらを撫で回されている。


「デカイ!」

僕が言ったんじゃない。

彼女の手が、僕の下半身に辿り着いた時、ため息とともにそう言った。

まあ、僕にもデカイ所は幾つかある。


彼女は僕の胸の上にまたがると、ゆっくりと僕の顔に、自分の顔を近づけてきた。

「キスする時って、目を瞑る?」

「うん」僕は過去の自分を思い出して、答えた。

「だったら、目をあけてて。」

そう言ってから、彼女は僕に唇を重ねた。

見開いた目の先に、彼女のギラギラと輝い瞳がある。時に大きく見開かれ、時に少し目を細めて僕を見下ろす。

その間も、僕の口の中では、彼女の舌が踊っていた。


それだけで、もう。



 佐藤の電話の後、結衣は佐藤の足に引かれて、言われるがままに指定された喫茶店に出向いた。


 喫茶店のテーブルの下から、佐藤の素足が伸びて結衣の閉じられた膝頭の前に現れた。

 人差し指を頂点として、なだらかに小指までアーチを描いている。細身で薄い。足首は細く、折り曲げられた時に素早く伸びそうに見える。

 完璧な足。ただ、カカトが靴擦れで血だらけになっている。

 結衣の想像に反して、カカトが血だらけになった佐藤の足は生々しく結衣の欲望を刺激した。

 このまま、テーブルの下から佐藤の足が伸び、結衣の膝頭を割ってスカートの中に入り込んだら・・・。結衣の想像は、昼の喫茶店の中で広がっる。

 佐藤の足を凝視する。


「あの・・・。」

「ひあ!」

佐藤の声に結衣は我に返り、結衣が声を上げた。


 


 佐藤が結衣の勤める靴売り場で靴を買った翌日、結衣は腫れた目の診察に行った。

 コンタクト屋でも眼科医はいるが、バイトの医者が多いようで幾たびに医者が変わる。


 その日佐藤は休みなのか、結衣の密かな期待に反して、その姿を見る事は出来なかった。佐藤がいないせいか、それとも寒くなり暖房が効きすぎたせいか、コンタクト屋はどこと無く乾いるように、結衣には感じられた。

 結衣の頭の中からは、佐藤の完璧な足が離れない。佐藤の足に透けるようなナイロン製の紺の靴下を穿かせた時の、体の中心から広がるむずがゆさが結衣を捕らえた離さない。


 目の調子はよくなり、通院はその日が最後になった。

 目のいい結衣には、コンタクト屋はもう用事が無い場所になった。



 結衣は家に帰り、佐藤のことを思った。引き出しから、佐藤に穿かせた靴下を取り出し、鼻と口を覆った。目をつぶり大きく息を吸い込む。「あっ。」思わず声が漏れる。両足を硬く閉じて、快感が逃げていかないように体の内に閉じ込めた。


 手をスカートの中に忍び込まそうとした瞬間、携帯が鳴った。

 暫く考えた。鳴り止まない携帯に、ため息をついて出た。


 「あっ、すんません、コンタクト屋の佐藤ですが。」

 「はい?なんで電話番号知ってるんですか?」

 「カルテで探したんですけど。あの・・・昨日買った靴なんでけど・・・靴擦れして・・・どうしたらいいかと思って・・・ははっ。」

 この男はいったい、何を考えているのだろう?こんなことで電話を掛けてくるのか。エロスとは、宇宙の果てまで遠い。あきれる。


 足が血だらけになればいい!

 結衣はそう思った。