恋、はじめました。翔バージョン。





翔side




花火大会があるから近くの神社へ行こうと盛り上がる三人の会話を偶然聞いた。


「中学生、盛り上がってんね。」


「なぁ、翼…。俺らも行ってみねぇ?」


別に特別行きたい理由があったわけじゃないけど、少しだけ気になってたんだ。


真ん中にいる、小さなアイツが。




――



グループ行動がいつの間にやら二人だけ。

入所した当初から知ってるし、世話の焼ける弟みたいな存在でずっと仲良くしてきたけど、いざ二人きりで行動するのは初めてで。

俺が話しかけると松潤の反応がたどたどしかったり、いつもとは違う緊張感が漂ったり。

デートなんてものしたこともないけど、なんだか初デート…みたいだ。



ニノが言っていたように通り過ぎていく人達を見ていたって松潤の整った顔はよく目立つ。

まだジュニアでメディアにはそこまで出ていないのに振り返る人も少なくはない。


コイツは自分の魅力に気づいてないのか?


俺と相葉くんの反応にキョトン顔してさ。

不思議そうな顔をして見てくるけど、ほんとにフラフラ〜ってどっかに行っちゃいそうで危なっかしい。



花火が上がり始めて神社の裏に行こうと言ったら置いていかないでと言わんばかりに慌てだす。

いや、二人で来ててお前だけ置いてくなんて有り得ねーだろ。

お前と一緒に見たいからわざわざ移動すんの!って言わなきゃわかんないか?

天然か?天然なのか!?

それとも俺、試されてる?



どさくさに紛れて手を握った。

人の波をくぐり抜けて神社の裏に来ると、二人だけで花火を見た。

松潤が拒否しないのをいいことに俺はずっとその手を繋いだままにした。




柔らかくてちっちゃい手だった…。


その手はいつの日か逞しく、包容力のある手になっていた。




………




「しょおくん、大丈夫?」


俺の頬を包み込んでしまうくらい大きな手。



「顔あっつい…、熱高いね…。」


「じゅ…ん…?」


昨日の夜から身体が重いと思ったんだ。

なんとなくダルくて、潤からのLINEに返信しないまま意識を落としていた。



「もう…あ、さ?」


「うん、起きてLINEも電話もしたのに返信ないから。

昨日は疲れて寝落ちちゃったからと思ったけどさすがに朝まで連絡取れなかったら心配するでしょ。

鍵使って勝手に入っちゃったよ。」


この前渡したばかりのスペアキーが潤のキーケースにしっかりと収まっている。


「いいよ、その為に渡してあんだから。」


「あ、起きなくていいよ!

なにか飲む?喉乾いたよね?」


「じゃ、水…」


「そう言うと思って…ハイ、これどうぞ。」


ペットボトルの蓋を軽快に空けて差し出される。


「……お高い水か?」


「普通のミネラルウォーターだけど。」


「そう…」


普通と言えど潤から渡される水は異様にうまく感じる。

ただ喉が渇いているだけだからか?



「夏風邪かなぁ…。

翔くんクーラーの温度低すぎない?

お腹出して寝てない?

まさか暑いからって素っ裸で寝てないでしょうね。」


「まさかぁ…。その時期はもう卒業したって。

全裸で寝るのは潤と寝る時だけ…」


「だ、だからって、その時も裸で朝まで寝ないでっていつも言ってるよ!」


先日の熱い夜を思い出したのか潤の顔がみるみる赤くなってく。


「と、とにかく薬飲んで!

貴重なオフなんだから今日は大人しく寝てて!

仕事終わったらあとでまた様子見に来るから!」


俺に漢方薬を押し付けると潤はバッグを持ち上げた。



「あ!」


「ん?」


「今日花火大会だよ。」


「あの?」


「あの。」


「じゃあ、帰ってきてな。ここに。」


「うん!じゃあ、翔くんは頑張って熱下げといてね。」


「ラジャ。」



あの花火大会の日から俺達は毎年あの時の花火を一緒に見てる。


俺が一方的に握りしめていただけの手はいつしか恋人繋ぎになり、微妙に離れていた距離も今やゼロ距離で程よく酔いを纏わせながら寄り添って見る。


そして、互いに熱くなったカラダを重ねる。



「去年のあの日も…熱い夜だったなぁ…。」


だが、、

今年は自身のこの熱を下げない限りその熱い夏は訪れない。

俺は潤から受け取ったの苦い漢方薬を飲み込むと布団をかぶった。


次に目が覚めた時にも再び潤の顔がありますように、と。



いつしか火のついていた恋心は何年経ったって、

その熱は消えることはなく燃え上がるばかりだ。





おわり





【別アカより再掲載】