潤side
熱でぼぉっとする意識の中、目を覚ます。
眠りが浅くて目が覚めてしまう。
その視界の先。
翔…さん…?
「潤くん!」
握られてる手に力が込められたのがわかった。
声、大きいね…。
翔さん…いた…、やっぱり夢じゃなかった…。
そう思ったら感動と嬉しさで涙が込み上げてくる。
「翔さん…、しょお…っ、」
来てくれて嬉しい。
来てくれてありがとう。
翔さんのお守りの効力、ちゃんとあった…。
気持ちが溢れて言葉が追いつかない。
「…っ、潤…!」
…………え?
反対側の伸ばした手を掴まれたと思ったら不意に抱きしめられ、思考が止まる。
元々熱で回らない頭なのに、何も考えられなくなる。
……何も考えたくない。
これがもし夢でも構わない。
そう思えるくらい、身体はとても怠くて重いのに今僕は幸せだ。
「あ、」
「…?」
「ご、ご、ごめん!」
ふっと力が緩み、目の前の翔さんは申し訳なさそうに気まずい顔をしてる。
「ごめん、、目が覚めたのが嬉しくて、つい…」
「……いえ…」
謝られると現実に引き戻られたような感じがして、それに翔さんまで赤い顔してるし……
なんだかこっちまで照れる。
「具合はどんな感じ?」
「あまり…良くは…」
まだ熱が高いようで頭が痛い。
「だよね…、あ!そうだ!喉乾いたでしょ?
水!水!それかスポーツドリンクとかがいいかな?汗もかいてたし。着替えとかもした方が!」
「?」
そんな物、うちにはなかったはず。
「ニノが色々と持ってきてくれたよ。」
「カズが?」
「あと食べやすそうなゼリーとかプリンとかフルーツの缶詰、あとレトルトのおかゆとか…。
冷えピタにのど飴に、、そうそう、薬!
熱高いし早く解熱剤飲んだ方がいい。」
「そんなに?」
「すっげぇ心配してた。
なんか口喧嘩したんだって?
電話切ったあと言い過ぎたって、すぐにドラッグストアに駆け込んで買い漁ってたらしい。
そう言って相葉くんが笑ってたよ。」
「…そう。」
僕が悪いのに…。
僕が素直じゃないから…。
カズ、ごめん。
デートの邪魔しちゃったね。
「大丈夫、ニノは怒ってないよ。」
俯く僕に喧嘩したことを不安に思っているのかと心配した翔さんは飲み物と薬をサイドテーブルに置き、僕の目線に合わせてベッドの横に座る。
「大丈夫…、すぐに良くなる。」
そう言って微笑む。
その笑顔に鈍く続いている頭痛が和らいでいく。
「ありがと…ございます…。」
なんとか身体を起こしてコップと薬を受け取り、久々に水分を口にした。
水分が染み渡る感覚だけでカラカラだった体内が満たされていく。
「薬も飲んだことだし、もうひと眠りしたら少しは楽になるはずだ。」
僕が薬を飲んで再び横になるとポンポンとあやすように布団を叩く。
「…あのっ!」
「ん?」
「今日、くるみさん…は…?」
翔さんは今日くるみさん達と会う予定があった。
だから今ここに翔さんがいることがずっと不思議だった。
まだ夢の中にいるみたいな、煙にでも巻かれているような、心が晴れないままだからよく分からない感情でいる。
「あぁ、気にしなくていい。」
「どうして?」
「どうして…って、だってあっちの誘いは断ってるし。」
「なんで?」
「なんで…って、それは……」
「それは……?」
「どうしても今日だけは…」
「今日…だけ…は……?」
翔さん…、教えてよ。
気持ちが高ぶってきて呼吸が乱れる………。
「潤くん?
まだ無理したらダメだ。
喋るの辛いでしょ?
体調が落ち着いたら改めてちゃんと説明するから。」
「だいじょ…、、あ…っ!」
「ほらっ!」
無理矢理に起き上がったら目眩がして再び倒れ込む。
翔さんがすぐに支えてくれて…
唇が触れそうなほど距離が近い…。
「…いかないで。」
「え?」
「僕が寝たら帰るの?」
「…いや、」
「ここにいて…?」
すごく我儘だ。
多分カズにだってこんな風に甘えたりしない。
無論、過去、智にさえこんなこと言ったこともない。
ウザがられるかも。嫌われるかも。
そんな思いが頭によぎるけど、それでも本能には逆らえない。
「翔さん、一緒にいて?
おねがい……。」
僕はズルいな。
優しい翔さんのことだ、お願いだなんて言ったら断れないだろうって期待してる。
「……わかった。
ずっといるよ、だから安心して眠って?」
「…うん。」
ごめんなさい、心の中で謝る。
それでも、優先したい自分の気持ち。
その言葉と翔さんの手のぬくもりに導かれ、僕は子供のように眠りにつく。
次に目を覚ましても、隣に翔さんがいますように…と、願って。
つづく