アイバースデー記念✻リアルファンタジー




雅紀side



去年の俺の誕生日。

お互い恋人がいないもの同士、
「飲みにでも行く?」って松潤から誘ってくれた。

「相葉くん、お誕生日おめでとう〜!」
そう言って、松潤行きつけのお店でシャンパンを開けてくれた。

嬉しくて、楽しくて、いい感じで酔っ払った俺をタクシーで家まで送ってくれた。
着くまでの間、これはチャンスとばかりに後部座席で横になって松潤の膝枕で甘えてみた。

「もぉ、擽ったいからグリグリしないでよ!」

「いいじゃ〜ん。まつじゅ〜ん。」

「…ったく、しょうがないなぁ。」

「だーいすきだよぉ…。」

「酔っ払い。」

「くふっ…、ね、来年の誕生日もお祝いしてよぉー。
俺、一人の誕生日とか寂しいじゃーん。」

「別に…いいけどさ…。
相葉くん、約束しといて恋人できたとか言うオチいらないからね。」

「ないない、絶対ない。」

「そんなの言いきれないじゃん。」

「きれるのぉー。」

だってさ、恋人なんて作る予定も気もない。

松潤が恋人になってくれるって言うんなら、話は別だよ?
だけど、それはないでしょ?
メンバーとしてはこうした距離でいれるけど、君は恋人にはならない。
わかってるんだ、もう何十年一緒にいると思ってんの。
だからいいんだ。
恋人でなくても誕生日、一緒にいてよ。
一緒に過ごそうよ。
だって世間はクリスマスイブ。

誕生日が来るたびに思う。
クリスマスの奇跡とか起こらないかなって…。
奇跡が起きて、松潤が俺の恋人になってくれないかなって…。


「約束だかんね。」

「わかった、約束ね…。」

強引に小指を絡ませた。

去年の誕生日のことだ。



──────────



「相葉くん…。」

「全然いいよ!気にしないで!
よかったじゃん、念願叶って。」

ハァ…、なんなんだよ。
よりにもよって…今?ここにきて?
誕生日まで一ヶ月切ってたのに。



「でも、約束…」

「いいってー。
あんなの酔った勢いで無理矢理した約束だよ?
律儀に覚えてる松潤の方がすごいわ。」

覚えてるさ。
なんなら小躍りするくらいずっと楽しみにしてた。
自分の誕生日が近づくのがワクワクしちゃうとか、小学生に戻った気分だった。



「友達より恋人を優先しなきゃ。
お誘いされたんでしょ?翔ちゃんに。
クリスマス高級ディナー。」

「………うん。しかもイブ…。」

「なら、そんな暗い顔しないの!」

「だって、相葉くんの方が先約だったから…。
だから、どうしようって…。」

突然12月になって、翔ちゃんが松潤に告白をした。
長きに渡り翔ちゃんを想っていた松潤がそれを受け入れないはずもなく、二人は晴れて恋人同士に。


わかるけどさ…、翔ちゃんが松潤とクリスマスを一緒に過ごしたい気持ち。
恋人だもん…。
恋人との初クリスマスに気合十分なのもわかる。

だけど!

去年の誕生日が天国のように幸せな時間だったから、今年の気合いの入れ具合は俺だって十分だったわけで。



「翔ちゃんにあまり気を使わないで素直に甘えちゃいなよ。」

「うん…、でも未だに二人きりになると緊張しちゃうんだ。」

片想いが長かったせいか恋人になってもいつも翔ちゃんにどこか遠慮してる。

それだけ好きってことなんだ。
翔ちゃんに嫌われたくないって空気がひしひしと伝わってくる。
俺との約束もちゃんと覚えてる真面目さ、だけど翔ちゃんの誘いを断るなんて選択肢を持てるはずない。

苦しめたくないんだ、君を。


「素敵なクリスマスを過ごして。」

「ごめん…。」

「謝らないでって!ね!」

「ありがと…相葉くん…。」

「よし!この話、おわり!」

ガシガシって頭を撫でたら、少しだけ微笑んでくれた。
俺には気を使って欲しくない。
仲間として見守ってきたから、ずっと。

俺は、松潤が笑ってくれてたらそれでいい。





…違うな。

そんなのは綺麗事だ。 
好きな人の幸せは喜ばしいことだけど、他の誰かと幸せになるのを喜べるほど、俺は人間できちゃいない。