お待たせしました💦つづきです。




潤side



みんながいなくなり、まるで嵐が過ぎ去ったかのような静寂が訪れて、二人きりの空間でさっきのキスを思い返してはドキドキとする心臓の音が聞こえてしまうのではないかと息を潜める。


「気を使わせちゃったかな…。」

翔くんも気まずそうに頭を搔く。

「なんかごめん、勝手に色々言っちゃった…。」

照れた顔で鼻をすする。

 

「ううん…、俺も…」

「ん?」

翔くんに言わないといけないことがある。

俺が嘘をついたこと。


…なんだけど、ニノが言うようにここは病院。
しかもなんの脈絡もなく、この前の夜のことを切り出すのは恥ずかしさが勝る。
仕掛けたのは自分だけど、さすがにヤッたヤんないってシレッと話せるような内容でもない。

翔くんが言っていたようにそれはバッチリと記憶されている。
頭にも、そして身体にも。
だから翔くんを見ていると単に熱だから身体が熱いという理由だけでは済まなくなるんだ。

翔くんの裸、俺を抱く逞しい腕、荒い息遣い…、焼けるように熱かった翔くんの………



「じゅん?」

「え…」

「熱上がってないか?顔が赤い…」

「だ、だいじょ…ぶ…」

あー…、言わなきゃと思うのに思い出しては赤面する自分がやっぱり恥ずかしい。




「すぐに良くなるよ。
一日くらいゆっくり休んだってバチは当たらないさ。
体調が良くなったらまた一緒に考えていこ。
仕事の事も俺らの事も。
なっ?」

俺に気を使わせまいと翔くんが気を使ってくれる。
それでも焦る気持ちで近づく翔くんの手を握った。

「あ、あの…、しょ…」



コンコン…

不意に再びノックの音が響く。

「あ…」

「松本さん?」

「はい。」

看護師さんの声に翔くんが反応し、俺はその手を咄嗟に離した。


「失礼します。
松本さん、目覚められました?
あぁ、よかったです。
検温と血圧測りますね。」

「あ、ほら、松本。
横になった方が…」

「…うん。」

まだ少しある微熱と落ちた体力のせいか、大人しく横になっている方が身体は楽だ。



「じゃ、俺も行こうかな。
目が覚めたのも確認できたし。
松本のこと、よろしくお願いします。」

看護師さんがいるから、柔く微笑みだけを残して俺に触れることなくそのまま扉に向かう。
『松本』と呼ぶ翔くんはすっかりメンバーの立ち位置に戻ってしまった。

さすが。
だけど…
急に距離を取られたみたいな感覚がもどかしい。
急にプライベート感をオフられちゃうとさっきまでのこと、夢かと思っちゃう。
未だに翔くんとの距離感がわからなくなると現実との境も見失いそうになるんだ。



「先生呼んできますね。」

看護師さんもいなくなって、ひとりになってしまった無音の部屋。

しばらくして先生の診察も滞りなく終わり、まぶたを閉じて翔くんのことを考えていたら、そのまま眠ってしまって、

「松本さん!松本さん!!」

「…んぅ…、うるさぁ…」

次に目を覚ましたのはマネージャーの慌てふためいた声だった。


「松本さんー!!
よかったぁぁー、起きたぁー!
全然起きないから…」

「あ…ごめん…」

「いいんです!あまりにも安らかな寝顔だったんで、ちょっと心配に…」

「死んではないみたいだから安心して。」

「いえ、そんなことは考えてませ…」

「ちょっと思ったろ?」
 
「……いや!断じて思ってません!」

ちょっとの間が気になるとこだけど、心配掛けたことには変わりないから言わないでいてあげよう。



「もうね、あんなことにはならないと思うから。」

翔くんと心から通じ合えたことでなんの根拠もないけど、大丈夫…そんな気がしてる。


「ピクリともしない松本さんを見つけた時は心臓が止まるかと思いました…。」

「前も、今回も、君にはすごく助けてもらったよ。」

「いえ、僕なんか…。
櫻井さんの指示で動いてただけで…、本当に凄い方です。」

うん、翔くんて凄い人。
ずっと憧れだったその人が俺のことが好きだ、と…。
熱が下がったからなのか、今度は頭ん中がふわふわする。
それとも夢見心地で舞い上がってる証拠なんだろうか。




俺が寝てる間にも何度か気遣うメッセージが届いたけど眠っていた俺は気づかないでいて。



【ごめん、寝ちゃってた!】

【ゆっくり休めたみたいだな】

【うん、熱も下がったよ】

【よかった!】

【明日には退院していいって】

【午前?午後?】

【午前】

【午前かー、時間取れないな…】

【なんで?ひとりで大丈夫だよ?
マネージャーが迎えに来てくれるし】


気を使わなくても大丈夫だから。
子供じゃないんだし、一日入院したくらいで…

返そうと思ったら立て続けに送られてくるメッセージ。


【俺が】

【迎えに行きたかった】

【俺は】

【潤の恋人だから】


「……っ、」

急な『恋人』というワードに次に打つ文字がわからなくなる。

なんて返したらいい?

そうだよ?
嬉しい?
ありがとう?


返せないでいると催促するように、

【恋人でいいんだよな?】


そんな風に聞いてくるから、

「いいよ!いいっ!」

あ…やば…

思わず声を出しちゃって、誰もいない病室なのに周りを確認してしまった。


「えっと…」



【俺を翔くんの恋人にしてください】

【もちろん】


なんの迷いもなく、同じ気持ちですぐに返信された文字に思わず笑みが零れる。
きっとひとりでニヤけてる俺は相当ヤバいやつに見えるのだろう。

誰もいないから、まぁ、いいや。
盛大にニヤけてやる!










前記事にたくさんのお祝いコメント、メッセージありがとうございました!
感謝を込めて私なりにお返事をさせてもらいました♡
本当にありがとうございました(*´∀`*)