キミノヨゾラ~潤side




翔くんがシャワーを浴びに部屋から出ていった。


ポツンと一人残され、ここはいつもなら一番心が落ち着くはずの場所なのに、なんだか落ち着かなくて横たわっている抱き枕を抱きしめた。


「う、わぁぁぁ……」


さっきまでの出来事を思い出してきて、声にならない声が出る。 
落ち着いていたと思われていた酔いがまた回り出すようだ。
それは潰れるほど飲んでしまった酒が?
それとも翔くんに、なのか…。

そっと唇に手を添えれば、さっきまでの濃密なキスの余韻が残っていて軽く痺れたような感覚すらしている。




正直、最初のキスは突然過ぎて、感触だとかキスでドキドキしたかとかあまり実感がない。
告白だってそうだ。


翔くんは俺の憧れで好きな人。

で?だから?

普通ならこうなる。
当たり前だ。
俺、男だもん。
翔くんが男の俺を好きになるはずがないと押し込めていた想いだった。

それでも弟ポジションをうまく利用して、思う存分甘えてきた。
お酒を飲めるようになって、翔くんが連れてきてくれたオシャレなバーでふたりでお酒も飲んだりして、俺は勝手にデート気分で舞い上がっていた。



「翔くん、この後、飲みに行こうよ!」

嵐としての仕事は夕方には終わり、俺はいつもみたいに翔くんを誘った。

「松本くん、悪いけど櫻井くんはまだ取材があるんだ。
今月も予定でいっぱいだよ。」

マネージャーに制止されて初めて気づいたんだ。
明らかに増えてきていた仕事量。
翔くんは忙しくても嫌な顔もせずいつも笑って付き合ってくれていた。
翔くんの貴重な時間を僕のせいで無駄にさせている。


「ごめんな、また今度行こうな。」

謝る必要のない翔くんが俺に謝ってくる。

「俺こそ…ごめんね……。」

忙しい翔くんも気遣えなかった自分が情けなくて、申し訳なくて…
この日を境に俺から翔くんを誘うことはなくなった。




極力翔くんと適度な距離を置いて…
そうしないと気持ちが溢れてしまいそうだった。
毎年翔くんの誕生日が来る度に直接お祝いしたかったけど、彼女でもないただのメンバーが特別な記念日を二人で過ごすなんて夢のまた夢。
それでもひとりで翔くんの好きなケーキでお祝いして、日が越えたらメッセージを贈る。

自己満足。
ずっとそれでよかった。



だけど、だけど……

今年は違う。


翔くんの誕生日に一緒にいる奇跡。
告白され、同じ気持ちだとわかった衝撃。

目を見つめながらのキス……。


こんなに幸せなことってあるの?

これがもし夢ならば明日なんて来なければいいのに。





つづく