帰宅し、俺も一杯飲もうかと思ったが、先に取材した資料をまとめようとして机に向かう。


「う〜ん…!」

両腕を上げて伸びをする。

「おしまいっ…と。」

一段落つき、時計を見たらいい感じに長針と短針がテッペンで重なるころ。



風呂入って寝るか、やはり少し飲もうかと悩んでいたら続けざまにケータイが震え出した。

「なんだなんだ?」

慌てて見ればそこには『誕生日おめでとう!』との内容のメールが複数届いていた。


「あ、誕生日…。」

自分の誕生日を忘れるなんてウソみたいだけどホントの話。

確かに年末ほどではないけど忙しくしていたのは否めない。
自分の誕生日なんて、すっかり抜け落ちていた。


その中にしっかりと潤からのメールもあって、

「アイツ、帰ったのかな…。」

『翔くん、お誕生日おめでとう✨
またひとつ大人になった翔くんに幸せが訪れますように。』

こんな落ち着き払ったメール、大人ぶってんのはどっちだよ。
昔みたいにテンション高いメール送ってこいって。

変わらず0時に送られてくるメッセージと変わっていく俺との距離。

ちょっとずつ成長していくアイツが離れてく。
それがやっぱり寂しいって感じてしまうのは、いつまでも末っ子に構ってしまう兄のような役回りだからなんだろうか?



「あれ?」

メールを眺めていると数分遅れて珍しいヤツの名前がある。

「……斗真?」

斗真とは確かに仲はいいし、誕生日にメッセージはくれるけど、こんな日が変わったタイミングで連絡があるのは珍しい。

内容はやはり誕生日おめでとう。とのこと。
たまたまかな?なんて、ケータイを置こうとしたその時…

今度は長くケータイが震えた。


「おわ!ビックリ…、ん?」

今メールもらったばっかだよな。
そう思いながら通話する。


「もしもし?斗真、どした?」

「あ、翔くん。久しぶりー!元気?」

通話口の向こうは少し音声が遠い。
なんとなく人の声も聞こえるような…。


「おぉ…、久しぶり…って、
こんな夜中になんだよ。」

「さっきメール送ったけどー、
誕生日おめでとうね。」

「見た見た、わざわざサンキューな。
でも彼女じゃねぇんだから日を跨いですぐとかじゃなくてもいいんだぜ?」

ちょっと冗談めいてからかってみた。



「そうだよ、俺いつも翔くんの誕生日には連絡してるじゃん?
だけどさ、潤が今すぐしろ!って、しつこくてさぁ…」

「あ…、松潤、いんの?」

そっか今日の相手は斗真だったか。
知ってる奴でちょっと安心…。


「それがさ、いるって言えばいるんだけど…」

「え?」

「翔くんにメールした途端、、落ちた。」

「はっ?」

「翔くんに連絡したのはそういうこと。
ねぇ、お願い!迎えに来て!
翔くん来ないと帰れない!お願い!!」

必死に頼まれると嫌と言えない。
困った弟分を放っておけない。
それってただの長男気質だから?


何より…
落ちてしまうほど酔っ払ってしまったウチの大事な末っ子を早く迎えにいかねばならない。


「すぐ行く。」


言葉より早くカラダは車のキーを手に取れと、

脳に信号は放たれていた。




つづく