潤side
バレンタインデー前夜。
僕は母さんに教えてもらいながら、2種類のチョコレートを作った。
なるべく自分で作りたかったから、時間もすごくかかっちゃったけど。
なんとか食べれるよね…。
うん!形じゃないよ気持ちが大事なんだから!
と、いびつなチョコレートを眺めながら自分に言い訳する。
学校から帰ってすぐに恥ずかしかったけど、ラッピングも買いに行った。
女の子で賑わう店内。
その中から4色の箱を手にとってレジに並んだ。
せっかくだから、ちゃんと包んであげたい。
不器用だけど、ひとつひとつ心を込めて。
しょおくんの赤い箱には愛情も込めて。
次の日の放課後。
約束通りカズにチョコレートを渡した。
こっそり美術室で。
「潤くんの手作りチョコ!?」
「声、大きいよ!」
「えー、嬉しいなぁ。
ホントにくれたぁー!」
「カズ、そんなに嬉しいの?
チョコ好きだった?よかったぁ。
来年はきっと女の子から貰えるよ。」
おっかしいな…
カズは人気者だからモテるはずなんだけど。
結局のところカズは、貰えないんじゃない、貰わないってことを知ったのはだいぶ過ぎた頃。
「俺は本命チョコしか受け取らないの!」
って…じゃ、僕のは何チョコ?
「あ、智くん、相葉くん!
これチョコ。
いつもありがとう。よかったら…」
もちろん、この二人にも。
しょおくんの大切な友達。
僕とカズにも大切な友達。
「え?みんなに?」
カズの怪訝そうな顔。
「そうだよ…、わっ!!」
「潤ちゃーん!」
渡した瞬間、相葉くんに抱きつかれてしまった…。
テンション高めですぐこうなるんだから。
「ちぇっ、みんなと一緒か…。
翔さんにはあげたの?」
「その、それは…家に帰ってから…渡しに行こうかと…」
「あー!部屋行ってエッチなことするんでしょ?」
「し、しないなよ!そんなことっ!」
「ふーん…どうだろねー。
んふふ、顔赤いよ。
じゃ、帰りますかー!」
「あ、僕、しょおくんと帰ろうかな…。
終わるの待ってる…。」
「そ、風邪ひかないようにね!
また二人で…。お先にー!」
ニヤニヤしながらカズ達は帰っていった。
窓の外にはボールを追いかけるしょおくんの姿が見える。
「はぁ…かっこいい…。」
しょおくんはカッコいいんだ。
そう思うのは僕だけじゃない。