潤side
風邪から完全に復活した僕達。
しょおくんの誕生日から少しづつ、僕らの関係も深いものになってきているのがわかる。
至って順調。
そう思っていた。
そんな中、間近に迫るバレンタインというイベントにクラス中、いや、学校中と言ってもいいくらいに女子達が色めき立っているのがわかる。
「バレンタインかぁ…。興味無いなぁ。」
カズがぼそっと呟く。
女子がそうなら、男子だってソワソワしてる。
去年はどうだとか、今年はどうかとか。
「カズは貰ったりしてないの?」
「ない。興味無い。
でも潤くんがくれるなら貰う。」
僕を見つめてはニッコリと笑う。
そうやって女子にねだれば、簡単に貰えそうなくらいカワイイ顔してんのに…。
「なんで、僕が…?」
「そういう潤くんはどうなのよ。
今まで貰ったでしょ。
そんだけカワイイんだからさ。」
もう、また急に話変える!
「前にも言ったけど、小学校の仲間は家族なの。
そういうのを意識したこともないよ。
あー、駄菓子屋のゆめちゃんちからは毎年大量の板チョコを貰えたんだー。
それを母さんがチョコレートケーキにするの。
今年は作るのかなぁ?
僕はチョコレートケーキが好きだから、今年も作って欲しいんだよね。
そしたら、カズにもおすそ分けするね!」
「そ、そうだね。楽しみにしとく。
潤くんから貰いたいのにな…」
テンションが上がる僕と下がるカズ。
だけど、次の瞬間には目をキラキラさせて…
「そうだ!潤くん!作ってよ、チョコ!」
「え?」
「お母さんと作んなよ、チョコ。
翔さん、喜ぶんじゃない?愛のチョコ。」
「愛のチョコ…。」
誕生日にプレゼントをあげた時のしょおくんの嬉しそうな顔が蘇る。
僕がチョコをあげても喜んでくれるかな?
男だけどいいかな?
愛のチョコ…受け取ってくれる?
そしたらお礼にってキスをくれるかな…。
あぁ、考えるだけで顔が熱いよ。
「おーい、潤くーん。
あらら、また世界入っちゃった。
ちゃんとオレにもくれるかなぁ。」
もちろんカズの声は届いてなかった。