20代の頃から
毎日のように独りで
立ち呑み屋に出入りしている。
ある日、見慣れない
おねえさまが隣りに来て、
「あなた、若いのによく
こんな店に来るわねぇ」
と言った。
東京から鎌倉へ
観光に来たついでに、
立ち呑み屋まで足を
伸ばしてみたらしい。
「私はね、東京じゃ
毎日呑み歩いてんのよ」
とおねえさまは自慢げに言った。
……なんだ、マウンティングか。
負けないぞ。
「そーですか。
私は週に8日くらい
この店来ますよ」
おねえさまは
キョトンとし、それから
「なーにバカ言っちゃってんの！」
と笑い飛ばした。
いやいや、
冗談ではないのである。
マジでその頃は
週に8回くらい来ていた。
（一度違う店に行ってから
戻ってくる日もあるし）
まだ明るい時間帯だ。
空いていた店内に、
いつもの顔ぶれが
次々と顔をだす。
「あ、海明ちゃん」
「よう、海明ちゃん」
「きゃー、海明ちゃーん！」
やってくる人やってくる人、
皆おれに声を掛ける。
なめてもらっちゃいけない。
こちとら、この界隈じゃ
ちょいと顔なのだ。
自称アイドルもとい
ノンドル（呑んどる）
なのである……！
レモンサワーを呑み干した
おねえさまは「チッ」と舌打ちをし、
「あんたなんか、
どうせ呑み屋でしか
友達できないんでしょ」
と言い残して店を出て行った。
なにー!? このオバハンめ！
と腹を立てたが、
意外にも グサッときている。
図星である。
そうなんだよ、わたし、
優等生を装って生きてきたから、
酔っぱらってボロボロに
ならないと素の自分が
出せないワケよ。
べろんべろんになって、
見知らぬオッサンに啖呵切って、
そのときだけ清々しい気持ちになって、
翌朝は二日酔いで満員電車に乗るのよ。
友達に連絡を取って
会いに行ったりするのとか面倒で、
立ち呑み屋に行けば
だれか知ってる人と
会えるからそれでいいや、
と思っていたんだよ。
そんな乱暴な
呑み方をしていたから
わりと身体にガタが来ていて、
サイキックリーディングの
講習会で一緒に練習した仲間に
一番最初に言われたアドバイスは
「お酒控えたほうがいいよ」だった。
「でもさ、呑みに行かないと
友達に会えないし、
呑み屋じゃないと
友達できないんだよ……？」
そう言うと、
サイキックリーダの
卵の彼女は、スッと言った。
「できるよ」
まさに、ご神託のように
気持ちいい言葉だった。
・
・
・
コロナウイルスがやってきて、
気軽に呑み歩いたりできなくなった。
「呑み歩けないと
人に会えなくて
淋しくて死んでしまう」
って思い込んでたけど、
そんなことは全然なく、
今日もどっこい生きている。
なんだ、自分は
呑み屋で人と話すよりも、
家に引きこもって
漫画読みながら呑んでた方が
ずっと好きなんじゃん、と
改めて気づかされた。
それで、
サイキックリーダーの
同期の彼女が言った
「できるよ」の言葉。
本当にできるのかなぁと
思ってたけど、
不思議なことに、
家に閉じこもってからの方が
人との繋がりが広がっていく。
十数年ぶりに
高校の同級生と
Zoomで話したりもした。
ああ、よかった。
私は、呑み屋に行かなくても
友達に会えるし、
友達できるんじゃん。
・
・
・
だけどさ、
「友達できない」
っていうことに
悩んでいるのも、
本当は変な話なんだよ。
「友達が多い方が
信頼できる人間である」
って、確かにそうなのかも
しれないけれど、
そんなことで自分を
測らなくていいんだよ。
自分を隠して
なあなあの人付き合い
してるだけじゃ、
なぁーんにも面白くない。
どれだけ自分の
ままでいられるか。
その上で、
一緒にいて楽しい人と
一緒にいれば、それでいい。
一緒にいたい人が
特に思い当たらなかったら、
一人でいても、それでいい。
私が、私自身と
いちばん友達であれる
ように生きていこう。
それでも、そろそろ
呑んべえたちの顔を見たくなったよ。
海明（ミア）
呑み屋じゃなきゃ
自分になれなかったっていう
話はこちら。
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この記事を書いている人 -PROFILE-
海明（ミア）
猫又ヒーラー🏮 人間社会に馴染めない妖怪のあなたをサポートします😸
鎌倉駅から徒歩3分の古アパートにサロンを設け、サイキックリーディングやパワーストーンヒーリングを提供しています。📞お電話による遠隔リーディングも可能です。猫のタロットカードによる「猫又のお告げ」始めました。
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