ミアグレースクリニック新潟 培養部です。

 

先日開催された日本臨床エンブリオロジスト学会学術集会に参加してきました。

その中で活発な議論が交わされたディベートセッション「短縮融解プロトコールは従来法よりも優れている」をテーマについて紹介いたします。

 

胚の融解は3種類の融解液を段階的に使用し約15分間の処理工程を要する従来法が一般的ですが、近年、アメリカ生殖医学会(ASRM)で「約1分間の短縮融解法でも胚の生存率、妊娠率に影響を及ぼさない」との報告がされ、国内でも注目されています。

 

セッションでは、賛成派と反対派のそれぞれの貴重な知見が発表されました。

賛成派の主張

短縮融解法による成績は、融解後の回復率、妊娠率は従来法と比較して有意差がなかったと示されており、さらに胚の形態的グレード、発育ステージ凍結時の患者年齢にかかわらず成績に影響なかったとのことです。短時間処理することは胚の負担軽減と胚培養の作業効率の向上という面でも大きなメリットがあります。

反対派の主張

反対派の発表では、低グレードの胚や6日目胚盤胞ほど融解時の急激な浸透圧変化により細胞破裂のリスクが指摘され、タイムラプス動画では実際に細胞が破裂する様子が確認されました。また従来法に比べて胚盤胞の着床能にも影響する可能性があることも示唆されました。

 

学会参加者向けのアンケート結果では、短縮融解プロトコールを臨床導入している施設は1割ほどでした。臨床で実施するか否かはまだ十分なエビデンスがないため慎重に判断していくべき意見が多くを占めていました。

胚の生存率や妊娠率は、患者様にとって最も重要な結果に直結します。

作業効率性だけでなく、どんな状態の胚であっても安全な方法であるか、を見極めることが重要と考えています。

これからも最新の知見を取り入れて、ひとつひとつの胚にとって最適な手法を慎重に検討・選択して、患者様に提供できるよう努力してまいります。

 

(院長からの追記)

「短縮融解プロトコール」についての議論は、近年各学会でも活発に行われています。

ここ数年ずっとこのテーマでのセッションが続いており、そろそろ一定の結論が出るものであろうと期待しています。

 

ただ、従来の融解法は、回復時間に確かに数分を要しますが、この数分の合間に他の仕事を、まるで町中華の料理人のように手早くこなす培養士の背中はとても頼もしいものです。

要は、どちらの方法でも、時間を有効に使おうと思えば有効な手法だろうというのが、つたない私の意見です。どうでしょうか?