次の日は低学年の頃に雅紀が同じ学校にいたかも
知れないという北川の記憶を頼りに小学生の頃遊
んでいた場所を歩いて見た。

「子供の頃の記憶って案外曖昧だな。昨日、北川が
低学年の頃って言ってたから思い出しながら歩い
ているけど景色が微妙に変わっているだけでも何
か違う場所に思えるわ」
「そんな無理して思い出さなくてもいいよ」
「だって…雅紀辛そうじゃん」
「まだね心の奥には怖いって気持ちはあるけど昨日
翔さんのお父さんやお母さんや結奈ちゃんと夕飯
食べて少しだけ気が楽になったんだ」
「でも……」

そう言いかけると雅紀は空を見上げ僕は何で記憶
が無いのか分からないけど翔さんに出会ったのは
2度目なんでしょ?きっと過去の僕も翔さんの事が
好きだったと思うな。

雅紀がそう言って微笑むとまるでその通りだよと
言わんばかりに柔らかな風が頬を撫でた。

「雅紀がもしも俺の事好きだと思ってくれていた
なら俺は尚更雅紀の事思い出したいよ」

そう言うと翔さんが思い出したら僕は……どうなる
のかな?と言われ、まるで自分が消えてしまうよ
うなそんな雰囲気で話すから俺は。

「俺が雅紀の事思い出せばこの先もずっと一緒に居
れらるから」

と言うと過去の無い僕にしたら未来しか無いから
本当にそうなら嬉しいなって言った雅紀の横顔が。

とても綺麗だと思った。