みなさん、おばんです。
北朝鮮工作員パク(偽名ルゥリィドゥ)は絶体絶命の窮地に立たされた二ダ。
彼は調理の経験はおろか、中華料理が何であるかまったく見当がつかない、超がつく田舎モノだっニダ。
そんな彼が、どういう経緯でそうなったのか、中国の一流レストランで修行したシェフにに仕立て上げられて、フィアンセだという娘の親から料理を作れとせっつかれ、ラードの代わりになるぐらいの脂汗をタラタラ中華鍋に滴り落としたニダ。
ミシェル「着いたばかりで、かわいそうじゃない、後にしましょうよ」
パクのパニックを察知した、フィアンセを名乗るミシェルリィが助け舟を出してクレタだ。
ミシェル「疲れてるわよね?少し休んだら?」
パクは安堵して、しかし、その気遣いを受け入れてはスパイの名がすたると思い、「いや、大丈夫ですよ」と言ってしまったダ。
パク「やりましょう。何がご所望ですか?」
ミシェルのパパ「よし!そのイキだ!オレが見込んだだけのことはある!その気前の良さは、キミの親父、ルゥサァツァイそっくりだ!」
・・・サァツァイ?初めて聞く名前だったダ。しかし、墓穴を掘るとはこのことだと激しく後悔し、再び、脂汗をラードの代わりに滴らせタダ。ミシェルの冷たい視線が突き刺さっただ。もう、助けてくれまいと悟っただ。
ミシェルのママ「それじゃ、麻婆豆腐を作ってくれるかい?」
まーぼーどーふ?・・・ババアの豆腐?意味不明の言葉だっただ。世界の全言語を操るパクの能力をもってしても、初めて聞いた名前の、見たこともない料理を作る、というというのは至難の業であっただ。
そのとき、雷に打たれたように、パクの脳髄に天啓が降りただ。パクは、どんな料理にも『味』というものがあるはずだ、と思っただ。そして、各人の味覚があり、好みがあるということを思い出しただ。そこで、この謎の料理の本質に迫るべく、ちょっとズルい質問をしたのだ。
パク「ミシェルのママ、なんて呼ぶのはまだ早計かな、ミセス・リィ。あなたの好みは、何ですか?甘いとか、辛いとか、濃いとか、薄いとか・・・」
ママ「そりゃあ、麻婆豆腐は辛いほうがいいわよ。ねぇ?」
パパ「そうだな。辛いほうがうまいな。唐辛子をジャンジャン入れてな」
勝機あり!パクは内心ガッツポーズをしただ。まーぼーどーふ、とは、辛い食べ物なのだ。それさえわかれば、こっちのものだ、と思っただ。豆腐という単語はもちろんわかっていたので、彼が知る例のアレを加えれば、いいだけなのだ!
パク「いいでしょう、とびっきり辛いまーぼーどーふをお作りしましょう」
ママ「楽しみだねー」
パパ「オレをびっくりさせてくれよ」
パクは自信満々に冷蔵庫をあけ、例のアレを探したが、見つからなかったダ。
パク「すみません。キムチ、ないですね」
ミシェルと彼女の両親は目をテンにさせ、ほぼ同時に、「キムチ?」と聞き返しタダ。