皆さん、おばんです。
ナイキ「おんし、いまのオナゴを、知っとるがか?」
わたし「いいえ。まったく」
ナイキ「ウソつくなちや。ルーシーがどうのこうの言うてたがやき。そして、マリオンGがなんちゃかんちゃ」
わたし「なんちゃかんちゃだって?ヘイヘイ!キミの方言も怪しくなってきたんじゃない?無理スンナよ。ダニエル・カールの真似すんなよ」
ナイキ「ダニエル?まあええじゃろ。とにかく、わしの知らんことだらけじゃ。一体、わしは、何のために、こんな仕事をさせられとるんじゃ」
何だよ。こいつもよくわかってないで俺をアメリカに連れて行こうとしているのか。ああ。悲しきサラリーマン。じゃないけど彼は。CIAって国家公務員?何でもいいけど、上層部の思惑というか真意は実際の現場で働く者にはほとんど伝わらない、というか、伝えなくてもいいと思っているのか。指示どおり動いてくれればいいよ。君達は何も考えなくてもいいよ。ぐらいに思っているのだろう。最後にジャッジするのは、キミたちじゃない。オレたちなんだからね、と。ああ。悲しきナイキ。悲しき組織のドレイたちよ。
とそこへ、噂をすればなんとやら、ナイキの上司から電話が入ったようです。猫以上の聴覚を持つわたしは当然、聞き耳をたてました。だってしょうがないじゃない。聞こえちゃうんだから。合法的な盗聴です。
CIA長官クリス「お疲れ。いま、電話大丈夫?」
ナイキ「大丈夫やき」
クリス「いま、そこにいるの、誰々なの?」
ナイキ「誰々?誰と誰?ちゅう意味ちや?」
クリス「そうそう。誰々?」
ナイキ「わしと、えーと・・・ナイルやき。ナイル・ロジャースやき」
わたしはわたしの猫未満の脳みそがどちらか一方へ片寄るぐらい首を振りました。
クリス「ワシと、ナイル?」
ナイキ「わしは、ワシ、じゃないき。コードネームN・I・K・Eやき」
クリス「ニケ?」
ナイキ「言うと思った。ニケじゃないき。ナイキやき」
クリス「ああ。ナイキと、ナイルね。2人だけなのね」
ナイキ「そうやき」
クリス「他の連中は、どこ行ったの?」
ナイキ「消えたちや。皆、海の中へ屠ったちや」
クリス「ほふった?あんたが?」
ナイキ「いや、ナイルが、不思議なパワーを持ってるちや」
わたしはアタマが飛んでしまうぐらい激しく首を振り否定しました。
クリス「ふーん・・・それで、家にあるモノは、そのままなんでしょ?」
ナイキ「そのままちや。そっくりそのまま、ラチったちや」
クリス「ほんとに?アリ一匹逃がしてないよね?」
ナイキ「アリちや?それはわからんが」
クリス「わからん・・・てめー、調子ノンなよ。アリ一匹、いいや、ダニ一匹、逃がすなって命令したはずだぜ」
ナイキ「・・・教えてくれちや。わしは一体、何を運んでいるがゼヨ」
クリス「家だよ。家と、その家の住人と家財一式だよ」
ナイキ「ウソちや!他に何か秘密があるに違いないちや。おかしいちや。このナイルちゅう男もそうじゃが、海に消えた連中も、不思議なスプーンやらフォークやらカレーやら、わけがわからんちや」
クリス「それでいいのだ。わけがわからんぐらいがちょうどいいのだ。それが人生というものだ。わかったフリをする方がウソなのだ。我々生きとし生けるものにとって、毎日が初めての経験なのだ」
ナイキ「はぐらかすなちや!わしは何を運んでるちや!言え!言わんなら、わしはこの任務から降りるがぜよ!」
クリス「いいよ。別に。降りろよ。早く。もういいよ。お前みたいな・・・」
と、クリスの言葉を最後まで聞き終らないうちに、ナイキは携帯を海へ放り投げました
ナイキ「ちーとばかり早く休暇を取ったがやき。おんしも勝手にするがいいちや。わしは、知らん。今までの無礼、堪忍ゼヨ」
ナイキはそう言い残し、海へダイブしたのです。
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