ベスト・オブ・ラヴィン・スプーンフル(紙ジャケット仕様)(完全生産限定盤)
2,268円
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皆さん、おばんです。
わたしは焦りました。そして何故か、その焦りをナイキに知られたくないと感じました。
彼に対して、何か後ろめたいことがあるのか?もしくは、何か隠したいことが?
何故だろう?何故なんだ?、何故でしょう?そうだ!ひらめきました。一瞬の閃光がわたしの猫未満の脳味噌を刺激して、夢の中の出来事にヒントを見出させたのです。そうです。JPことジョンのパパはカレーにスプーンをざくっと突き刺せと言ったのです。誰かに。わたしに?いや、女の子だ。名前はたしか…アンジー。そうだ。会った事も見たことも無い金髪のギャルに。しかし、何故だ?何故そんなことをわざわざ言いに、夢に現れたんだ?しかも金髪のギャルまで用意して。俺の好みを知っていたのか。別に好みじゃないが。いや、可愛ければ何でもいいが。とにかく、JPは彼女を利用して、カレーにザクッとスプーンを突き刺せようとした。何故だ。そうだ。アンジーのパパにカレーを食べさせようとしたのだ。うん。ここまではわかった。しかし、この親子とわたしの関係って何だ?カレーつながり?同じような状況にいるだけじゃん。そして、この異常に重いスプーンは一体何だ?何を意味しているのだ?重いスプーン。食べる気が失せる。なんだか気が重い…。
ナイキ「何をモタモタしとるがか!早う、食わんかい!」
わたし「はいはい、ただいま」
わたしは両手でもって土に埋まったカブを引っこ抜くように重いスプーンを持ち上げました。残念ながら、猫や家畜や家族総出の助けは必要無かったのですが、その勢いで、後ろにひっくり返るのを何とかこらえて、両手でスプーンを持ちながらフラフラとナイキに近づきました。
わたし「お待たせ!それじゃ、ジョン特製のカレーを食してみようじゃあーりませんか。言っとくけど、君にはあげないからね」
そうして、夢のお告げ?どおり、カレーを食べようとして、スプーンを右手に持ち替えた途端、片手では持ち切れなくて床に落としてしまいました。
ナイキ「おんし、何を緊張しとるがか?」
わたし「緊張してるわけではありましぇん。スプーンが思いのほか重かとです」
ナイキ「スプーンが重い?何を言うがか?」
と、ナイキは訝しがって、前かがみにスプーンをヒョイとつまみあげようとしたとき、腰を痛めたのです。
その痛がり様は、見ていて、本当に気の毒でした。
ナイキ「これは、呪われたスプーンがか?」
わたし「かもしれませんな。だとしたら、もう、カレーは食べられませんな」
ナイキ「別に、スプーンで食べる必要もないじゃろ。素手でもええじゃろ。本来は、手で食べる料理じゃろ」
ジャロジャロうるせーな、と思いながら、わたしは深く相槌を打ちスプーンで食べる方法を放棄しました。しかし、この凍ったカレーを素手で食べるガッツは毛頭ありません。ので、しばらく時間を置いて、素手で食べられるほどに解凍したら、という条件を提示しました。するとナイキは、どうしても素手で食えなんて言ってない、スプーンで食べる以外の方法を考えろと言ってるのだ、と言うのです。
イチイチめんどくせーな、と思いながら、わたしは再び引き出しをガチャガチャあさって、フォークを見つけました。しかし、すぐにそれを取り出すことができませんでした。先ほどのスプーンショックともいうべき不可解な事象がわたしを用心深くさせていたのです。
もしも、フォークまでが、あのスプーンのように重かったらどうしよう。重かったら、いや、重く感じたら、自分自身の心身の異常を疑わなければならない。となると、普通のレストランで食事ができなくなる。ていうか、普通じゃないとこ知らないけど、食器が軽いレストランを探さなければならなくなる。そんなとこあるか?恐怖だ。地獄だ。もう、生きていけない・・・しかし、それは杞憂に終わりました。フォークは、重くはない、普通の、一般的な重量のフォークでした。