浅葱色の空の下。 -14ページ目

浅葱色の空の下。

薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。











会場の裏側は海になっていて。


防波堤がまっすぐ道沿いに伸びている。


表側の道とは違って静まる道を二人で歩く。


海鳥の声や遠くで汽笛の音もした。

会話がない俺達の間を潮風が心地よく通り過ぎる。


心臓がばくばくと音を立てる。

俺は一度口をきゅっと結んで、口を開いた。






「…射花もわかってると思うんだけど、俺まだ総司や一くんと勝負しても勝ち越してねぇんだ」


「うん」


「射花たちが高校行った一年で俺なりに強くなった気でいたんだけど、
高校入ってまだまだなんだなって思い知らされた。
出来ることなら総司や一くん打ち負かしてから…とか思ってたんだけど」


見上げた空は青かった。


「うん」


「今日、学年選抜でだけど。…勝てて、何か掴めた気がした」


隣にいる射花に顔を向ければ、視線はまっすぐ俺に向けられていて。

俺は立ち止まって、自然と射花に身体を向けた。


「今朝、射花と話出来て何かいい感じに肩の力も抜けたしさ。
試合勝ってからも射花とちょっとやりとりして。
なんつーか…。やっぱ射花のことすっげえ好きだと思った。
出来ればカッコ良くて、強い俺を見せるまでなんて自分で決めて思ってたんだけど。
…早く、隣にいたいと思った」


俺らしく、ありのままの俺の気持ちを、きっと射花なら受け止めてくれる。


「まだまだ射花からしたら子供とか弟みたいかもしんねぇけどさ。
射花が好きだって気持ちは誰にも負けねぇから。

……俺と付き合ってください」


自然と頭を下げる。

緊張はした。


でもどんな答えでも受け止めようって思える自分もいた。


少しして脳天に軽い衝撃が走る。


「って!」


顔をあげればちょっとすねてるような射花の顔があって驚く。

射花の手を見れば…手刀されたのか、俺。


「も~!!どれだけ待たされるのかと思った」


「へ?」


「遅いよ!……ずっと待ってた」


射花のその言葉にお互いの空気が緩んだ気がした。


「…へへ。そっか、ありがとな。…待たせてごめん」


「…私も平助が一番好き。付き合ってください」


真っ直ぐに俺を見つめる射花。

まさか射花からそんな言葉をもらえるとは思ってなかった俺は軽く放心していると、
射花はふわりと笑って。


俺の頬にキスした。


「…んなっ!!」


キス、された。

…頬だけど!


その事実に恥ずかしさや照れがいっぺんに顔中に熱を集める。



「よし、帰ろう!」


「…ちょ、待てって」


歩き出す射花の手首を掴んで引き寄せる。


「な…」


俺も負けじと射花の頬にキスをした。

柔らかい感触に胸は高鳴るばかりで、俺は照れを隠したくて軽く射花を睨みつけた。


「…俺だって男なんだからな」


「…なにそれ」


「……わかんねー」


お互いを睨みつけるような視線にお互いが吹き出す。

温かい気持ちが胸中に溢れ出す。


「ごめん。もう一回。今度ちゃんとする」


「え、やだ…」


射花が小さな声で見る見る頬を染めていく。


あー、やべぇ。反則。


「…今の射花、すげぇ可愛い。顔真っ赤」


「もう!とっとと帰るよ!!!」


頬を染めた射花は視線をそらして、ちょっと怒った口調で。


「ぶははは!!照れんなって!!!」


「照れてない!!!」


手首を掴んでいた手を緩めて、するりと射花の肌を滑って。
柔らかいその手を握る。

歩き始めた射花は顔は正面を向いていたけど、
キュッと握り返してくれた。


たまらない嬉しさと溢れ出す好きという気持ちに叫びたくなるのをグッと我慢した。

だから今はにやける顔を許してほしい。




この時から俺と射花はちゃんと付き合い始めたんだ。



















文武両道を掲げるうちの学校はテスト前1週間になると全ての部活は休みとなる。


放課後、射花と待ち合わせて一緒に帰ろうかとしていたとき、
俺は溜め息混じりに呟いた。


「あー、やべぇ…」


「どうしたの?」


「勉強全く頭に入らなくてさ。学年選抜の前なんて全く勉強してなかったし」


「…認めません」


「へ?」


隣を歩いていた射花が立ち止まって振り返れば、軽く睨むようにして俺を見ていた。


「一緒に勉強しよっか。私もわかんないとこ教えるし」


「俺の部屋で?」


「図書館で」


「な、真面目だな…」


「勉強が目的でしょ?」


めちゃくちゃ笑顔な射花に若干うなだれつつも俺は返事をした。


「……ハイ」


「よろしい」


図書館に足を向ける射花のあとを歩く。


まぁ、家で勉強しても捗らないし、図書館デートって思えばいいか。

射花と一緒にいれるしな!


そう思えば自然と足取りも軽くなって、俺は射花の隣を歩き始めた。













~~~~~








そんな二人の様子を少し離れた場所から見ていた沖田と斎藤。

鞄を持ち直した斎藤に沖田が声をかける。


「一くん、どこ行くの?」


「図書館だ」


「ふぅ~ん。あの二人の監視するの?」


「何ゆえそうなる。勉強をしにいくんだ」


「じゃあ僕も行こう」


並んで歩き始めた沖田と斎藤。

斎藤は横目でちらりと沖田を見ながら口を開く。


「あんたこそ真面目に勉強するタイプではないだろう」


「たまにはね。最近射花も平助とべったりだしさぁ」


「それが理由だろ」


「まぁ、いいじゃない。…あ。土方さん図書館から出てきた。僕帰るね」


「おい待て、総司」


土方の姿を確認した途端、ぴたりと立ち止まり踵を返した沖田に
斎藤は引きとめようと声をかける。


二人の姿を確認した土方は大きめの声で二人に声を投げた。


「お、斎藤と総司じゃねぇか。総司!今からマンツーマンで古典教えてやろうか」


斎藤は静かに土方に頭を下げる。

盛大に溜め息を吐いた沖田は振り返って土方に向けて目を細めた。


「教頭って暇なんですね」


「お前に使うくらいの時間はあるぜ?」


ニヤニヤと笑いながら近付いてくる土方に沖田は不敵に笑う。


「そんな地獄絵図みたいなドMな趣味は僕にはありません。
一くんなら喜んで付き合ってくれますよ。じゃ」


剣道の試合の時のような踏み込みの速さで踵を返した沖田はあっという間に距離を置いていく。


「っ!待て、総司!!!赤点取ったら承知しねぇからな!!」


沖田は背中を向けたままヒラヒラと手を振った。


「…ったく、逃げ足が速いのはいつまでも変わらねぇな」


「全くです」


土方の呆れたような言葉に斎藤も静かに頷いた。










~~~~~












テスト初日が終わって、射花と一緒に下校する。

俺は大きく伸びをした。


「初日終わった~」


「どうだった?」


「ん、射花のお陰で意外といけてるかもしんねぇ」


俺が得意げに笑えば射花が俺の顔を覗き込んでくる。


「ほんとにぃ~?赤点とか承知しないからね」


「赤点は免れてると思うんだけどなぁ。あ、射花!アイス食って帰ろうぜ」


「遊ばないからね~」


「わかってるって!じゃあ家でチャリ取ってくるわ。射花も鞄置いてこいよ」


笑顔で頷く射花につられるように笑って、背を向けた射花を見届けてから俺も家へと急ぐ。






そしてチャリの後ろに射花を乗せて自転車を漕ぐ。

今日は夏のカラッとした暑さだった。



「なんつーか、こういうのいいよな」


「ん?」


「普段はさ、学校終わっても部活で二人でいる時間て少ないけど、何かデートみたいだよな」


「…そう、だね」


射花の反応に俺は自転車の急ブレーキをかける。

驚いた射花が俺にしがみつく。


「な、何?!」


俺は振り返って目を丸くする射花の顔をじっと見る。


「…射花、今照れただろ」


「…っ。照れてません!」


「照れてる」


「照ーれーてーまーせーんー!!ほら、早くアイス食べに行くよ!ちゃんと自転車こいで!!」


俺の言葉に途端に顔を真っ赤にした射花は悔しいのか必死で反論する。


あー、すげぇ可愛い。


そんな射花を見れたのが嬉しくて、声を出して笑えば、
バシバシと背中を叩かれたので、俺はまた自転車をこごうと前を向く。



「よっし、じゃあしっかり捕まってろよな!」







真っ青な空。


湧き上がる入道雲。


気持ちいい向かい風。


シャツ越しに伝わる温もり。



君がいるだけで自然と零れる笑顔。



溢れ出した「好き」は止まらない。


















END



















※自転車の二人乗りは駄目だよ?(・∀・)





あとがき、今から書きますw