お礼企画第2弾『桜の木の下で』(薄桜鬼・土方)中編 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。












一度気になり始めたら、気になるばかりで。


土方さんにそんなことを聞けるわけもなく。


翌日の仕事中も考えていた時。







軽快な音と共に頭に軽い衝撃が走る。



「…っ!」


「なっちゃん」


「沖田くん」


見上げればそこには憮然とした表情の沖田くんがいて。
どうやら筒状に丸めた資料で頭を小突かれたらしい。


「何考えてるか知らないけど仕事しなよね」


「へ?あ、ごめんなさい!」


後ろから椅子を滑らせてきた藤堂くんが小さな声で耳打ちする。


「なち、さっきから土方さんが睨みつけてるぜ?」


「へ、嘘」


「見てみろよ、眉間の皺」


「あれはいつものことでしょ」

藤堂くんの言葉に沖田くんが応える。



そこにタイミングよく営業先から帰って来た原田さんが声をかけてきた。


「何だ、なち。悩み事でもあんのか?今晩呑みに行くか?」


「あ、お帰りなさい。いや、大丈夫…」


「何だ、今晩呑むのか?俺も行くぜ?なっちゃん!!」


向かいのPCから顔を出して食いついてきたのは永倉さん。


「呑むって言葉で食いついてくるよな~、しんぱっつぁんは」


半分呆れながら藤堂くんが笑う。


「そういや近藤さんが営業部で来週末に花見はどうだって言ってたぜ?」


永倉さんの言葉に沖田さんが応える。


「ああ、僕も聞いた。楽しみだよね。一くんも行くよね」


「無論」


キーボードを叩きながら会話はちゃっかり聞いていたらしい斎藤くんが口を開いたところに部署内の空気が一変した。



「てめぇら、仕事しやがれ!!!原田、さっさと報告しろ!」


部署内に響き渡るその声に私の身体はビクッと固まる。



「あ、キレた」

ニヤニヤと土方さんを見ながら笑う沖田くんがゆっくりと自分の席につく。


「ま。何かあったらいつでも相談乗るからな」


「ありがとうございます」


原田さんは覗き込みながら私の頭に軽く手をポンと置いた。

そんな気遣いが嬉しくて私も笑顔で応えた。



私は一つ息を吐いて、気合を入れなおして、仕事に集中した。









今日は昼から仕事が立て込むことなく、無事に定時に上がれそうだった。

取引先の方がみえた時に使った湯のみを給湯室で洗っていると土方さんが給湯室に姿を見せた。


「お疲れさまです」「お疲れさん」と短い挨拶を交わして、
「使いますか?」と聞けば、「いいや」とまた短い返事。


洗い物を布巾で拭きながら「どうかされました?来客ですか?」と聞けば
今度は沈黙で。



土方さんに顔を向ければ、給湯室の入口に寄りかかりながら腕組みをして、
どこかしら切なげに私を見ていた。


絡んだ視線に少し胸が高鳴りながらもどうしていいかわからずに視線を泳がせていれば、
土方さんが口を開いた。



「…今日は随分とぼんやりしてたな。何かあったか?」


「いや…、えーと」


「…あいつらには相談出来て俺には相談出来ないのか?」


「いや、皆に相談はしてないですけど…」


「なら俺に言ってみろよ」


視線を上げれば真剣な瞳と交わって。


でもどう言葉にしたらいいかわからずに。





「………あとでメールします」


「は?」


「言いにくいので、後で、メールします」


「…わかった」


ひとつ溜め息を吐いた土方さんは給湯室から出て行った。











定時で上がった私は家に帰ってからも悩んでいた。


先週の土曜もこの部屋でいつものようにご飯を食べていった土方さん。

煮物を美味しそうに食べてくれてたっけ…。


今までの土方さんのことを思い出しながら、部屋で一人考える。






私は土方さんが好き。


でも土方さんの気持ちはどうなんだろう。


私が土方さんに告白して断られちゃったら…しばらくはあの部署に居づらいな…。



仕方ないんだけど。






そして、ぽちぽちとメルをうってみる。

















『部長と私の関係って何なんでしょうか』










送信。




















返事は、来なかった。


























翌日、出社しても土方さんはいつもどおりに仕事をしていて。

たまに会話しても仕事の内容を短く交わすだけで。



『ああ、これが返事なんだ』と思った。



ショックはショックだったけど、結局その程度だったんだなって。

過剰な期待をしちゃった私が何だか惨めで。


仕事の時は仕事だけに集中して、家に帰ってからは何もする気力がなくて、
泣くことはなく、ただ部屋で1人、ぼんやりとしていた。