薄桜鬼・妄想現パロ【Step before the start of the love】#6 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。


現パロ。


隊士?たちは美容師さん設定です。


キャラ崩壊あり。



それでも宜しければどうぞ。
















「やだ、もう5時?!」


枕元においていた携帯の画面を見て、目を見開く。



『いくらなんでも寝すぎでしょ』

一つ溜め息を零して、ゆっくりと起き上がる。




『あー…、何にも食べてないからお腹空いたな…。…かと言ってご飯作る気にもなれないし…』


私は着替えようとして、ふと止まる。


『折角髪切ったんだし、いつもの格好じゃなくて、たまには女らしい格好もしてみますか。

…まぁ、千景に会うときは女らしい格好してたけどさ』


クローゼットの奥から最近出してなかった服をごそごそと出す。


軽くメイクをして、外に出かけた。





疲れた時や凹んだときに食べたくなるスイーツがある。


ちょっと遠いコンビニだけど、そこまで足を延ばした。




マフラーを巻いているものの、髪を短くしたせいか少し寒い気もする。


でも髪を切れたお陰で自分の中で踏ん切りがついて、ちゃんと別れることが出来た。



『原田さんたちに感謝しなきゃ…』


『また…会いたいな』




コンビニでお気に入りのスイーツを買って、店を出た。






「美奏?!」

振り返るとそこには原田さんがいた。



「…!!」



『うそ…』

まさか会えるとは思わずに思考が止まる。




「こんなとこまで買い物に来たのか?」


「…何で…」


「ああ…、今日休みだからな。丁度腹減ってコンビニに来たんだ。お前は?」


「あ…えと…、これを買いに」

ビニール袋を軽く持ち上げる。


「ああ、これ美味いよな」

原田さんがそのスイーツを見て笑みを零す。


「好きなんです…」

何だか照れくさくなって俯きながら応えた。



「もしかして飯、まだか?」


「はい」

小さくこくりと頷く。



「良かったら食べに行かないか?」


「…いいんですか?」

私は顔を上げて、眉を上げる。



「ああ、いつも一人でつまんねぇんだ。付き合ってくれよ」


「…はい、わかりました」

優しい笑みに笑顔で応えると私の頭に乗る大きな手。



「何か食べたいのあるか?」


「んー、この辺ってあまり来ないのでお店とかわかんないです」


「じゃあ俺の行きたいとこ行っていいか?」


「はい!」


歩き始めた原田さんの隣を歩く。


見上げた横顔はとても整っていて。


…キレイだった。





連れて行ってもらったのはイタリアン系のお洒落な居酒屋。



「素敵なとこですね」


「ああ、お気に入りなんだ。飯も美味いし、ワインも安くて美味い」


「へぇ~」



小さな個室に入って。


私を壁際の席に座らせて。

原田さんはその斜め横の壁際に座った。


『…向かいに座るんじゃないだ』

ちょっと二人の距離が近い気がして恥ずかしくなった。



「何食べる?」


「あー、どれが美味しいですか?」


「そうだな。…とりあえず、このピザと…」



どうしてだろう。

メニュー選びですら楽しくなってくる。




注文を終えて、お絞りで手を拭く。




「…泣いたのか?」

その優しい瞳で見られると否定は出来ない。


「…やっぱりばれますよね…はは。朝はもっと酷い顔で…会社休んじゃいました」

頭を指でぽりぽりと掻きながら視線を逸らせた。


「…頑張ったな」

また大きな手が私の頭を撫でる。


『慰めてくれてるだけ…なんだよね?』

私は原田さんの顔を見つめる。


「やめてください。また泣きそうになります」

私が眉根を寄せて、そう言えば。


「…泣いたら慰めてやるよ」

彼の手が私の髪を撫でていく。


「冗談止めて下さいよ」

軽く笑いながら目をそらした。



でもちゃんとお礼が言いたくて、また視線を原田さんに向けた。


「でも…きちんと別れを伝えることが出来ました。原田さんのお陰です、ほんと。ありがとうございました」

向き合って膝に手を置いて、頭を下げた。


「大袈裟」

なんて笑いながらまた頭をポンポンと撫でていく。



「…原田さん、原田さんて頭撫でるのクセなんですか?」


「ん?そうか?」


「はい、しょっちゅう撫でられてる気がしますけど」


「…わりぃ。嫌…だったか?」


「いえ…、嫌っていうわけじゃないんですけど…、どうしてかなって…」


「…どうして…だろうな」


眉根を寄せた表情に次の言葉を探していると、

店員が「失礼しまーす」とお酒と料理を持って来た。






「おいし~!!!」


「随分美味そうに食べるな」


「すみません、今日…何にも食べてなかったんで」


「そか…」


「ああ、そんなに気を遣わないでください。すぐ元気になりますから」



それからご飯を食べながら、お酒を呑みながら他愛のないことを話してた。

下らない話にも原田さんは笑ってくれて…。


それだけで嬉しくなった。




「そういえば、原田さん」



「…なぁ、総司や平助は名前で呼んでるのに何で俺は苗字なわけ?」

片眉を上げて少し赤くなった顔が私の顔を覗き込む。


『顔、近いし!』


私は驚いて、視線を泳がす。



「あ…、いや、深い意味はないですけど…」


「じゃあ俺のことも名前で呼んでくれよ」


「えーっと、じゃあ…左之さん?」


「ああ、それでいい」

左之さんと視線が絡めば、ニッと笑って美味しそうにお酒を煽った。

私も照れくささを流し込みたくてお酒を飲んだ。






「ご馳走様でした!また奢ってもらっちゃってすみません」

店を出て、左之さんに向けて頭を下げる。


「いや、こっちから誘ったんだしな」


「じゃあここで…」


名残惜しい気もしたけど、本心。


一人でも気分良く帰れる気がした。



「おいおい、馬鹿言うな。送らせろよ」

眉根を寄せた左之さんが不機嫌そうな声をわざと出して、私のおでこを指先で小突く。


「…すみません。じゃあ、お言葉に甘えちゃいます」

『やっぱり優しいな』なんて思いながら思わず頬が緩んだ。


「そうだ、甘えとけ」

私の頭にポンと手を置いた左之さん。


二人で私のマンションへと足を向けた。




左之さんは私の歩幅に合わせて歩いてくれる。



…千景は…私を置いていくから私はいつも小走りだったっけ。


『ああ、もう千景のことを考えるのはよそう』

一つ溜め息を吐いた。




「寒くないか?」


「はい、マフラーも巻いてますし」


「そうか」


お酒を呑んだせいか火照る身体に冷たい風が心地よかった。

心も、寒くはない。





会話をポツポツと交わしながらあっという間に着いたマンション。



「じゃあ、ありがとうございました」


「ああ…」


それから急に訪れた沈黙。

まだ名残惜しい気がして、必死で言葉を探す私。



「なぁ…。またこんな風に食事したりしないか?」


「え…。…いいんですか?私なんかで」

驚いて見上げれば、降り注いだ優しい笑顔。


「ああ、美奏がいいんだ」

胸がキュッと締め付けられた。




「じゃあアドレス交換していいか?」


「あ、はい!」


お互い携帯を向かい合わせて、赤外線通信で番号やアドレスを交換する。


「おし、いいな」


「はい」


不意に訪れた沈黙。


左之さんは今何を考えてるんだろう…。


見上げると、左之さんと視線が絡んだ。


また…胸が締め付けられた。




「じゃあ…、おやすみなさい」

その言葉を選ぶしか…、今の私にはなかった。


「ああ、おやすみ」

互いに笑みを向ける。


私は2,3歩進んで左之さんを振り返った。



「…あ。左之さん、ここまで来れば大丈夫ですから。見送らなくてもいいですからね?」


「…俺が見送りたいんだよ」


「…そう、ですか」

立ち止まってしまった足が中々動かない。



「…じゃあ、帰りますね」


「ああ…。また泣くなよ?」


「…そんなこと言わないで下さい。せっかく忘れてたのに」


「…わりぃ」

私が眉根を寄せて笑えば、彼はすまなそうに呟いた。



「あの!もう大丈夫ですから!左之さんから沢山元気貰いましたし!お仕事頑張ってくださいね」

声も元気に、今出来る精一杯の笑顔を左之さんに向ける。


「ああ、美奏も頑張れよ」


「はい!おやすみなさい!」

互いに笑って、私は口元に笑みを残したまま入り口へと元気よく歩く。



金曜の時と同じようにエレベーターに乗り込みながら振り返る。


『閉じる』のボタンを押して、左之さんの顔を見て…息を飲んだ。




『何で…そんな顔してるの?』

軽く眉根を寄せて、切なそうに私を見ていた。



閉じられた扉。



最後、私は笑えていたんだろうか。


またきゅっと胸が締め付けられた。