現パロ。
隊士?たちは美容師さん設定です。
キャラ崩壊あり。
それでも宜しければどうぞ。
「やだ、もう5時?!」
枕元においていた携帯の画面を見て、目を見開く。
『いくらなんでも寝すぎでしょ』
一つ溜め息を零して、ゆっくりと起き上がる。
『あー…、何にも食べてないからお腹空いたな…。…かと言ってご飯作る気にもなれないし…』
私は着替えようとして、ふと止まる。
『折角髪切ったんだし、いつもの格好じゃなくて、たまには女らしい格好もしてみますか。
…まぁ、千景に会うときは女らしい格好してたけどさ』
クローゼットの奥から最近出してなかった服をごそごそと出す。
軽くメイクをして、外に出かけた。
疲れた時や凹んだときに食べたくなるスイーツがある。
ちょっと遠いコンビニだけど、そこまで足を延ばした。
マフラーを巻いているものの、髪を短くしたせいか少し寒い気もする。
でも髪を切れたお陰で自分の中で踏ん切りがついて、ちゃんと別れることが出来た。
『原田さんたちに感謝しなきゃ…』
『また…会いたいな』
コンビニでお気に入りのスイーツを買って、店を出た。
「美奏?!」
振り返るとそこには原田さんがいた。
「…!!」
『うそ…』
まさか会えるとは思わずに思考が止まる。
「こんなとこまで買い物に来たのか?」
「…何で…」
「ああ…、今日休みだからな。丁度腹減ってコンビニに来たんだ。お前は?」
「あ…えと…、これを買いに」
ビニール袋を軽く持ち上げる。
「ああ、これ美味いよな」
原田さんがそのスイーツを見て笑みを零す。
「好きなんです…」
何だか照れくさくなって俯きながら応えた。
「もしかして飯、まだか?」
「はい」
小さくこくりと頷く。
「良かったら食べに行かないか?」
「…いいんですか?」
私は顔を上げて、眉を上げる。
「ああ、いつも一人でつまんねぇんだ。付き合ってくれよ」
「…はい、わかりました」
優しい笑みに笑顔で応えると私の頭に乗る大きな手。
「何か食べたいのあるか?」
「んー、この辺ってあまり来ないのでお店とかわかんないです」
「じゃあ俺の行きたいとこ行っていいか?」
「はい!」
歩き始めた原田さんの隣を歩く。
見上げた横顔はとても整っていて。
…キレイだった。
連れて行ってもらったのはイタリアン系のお洒落な居酒屋。
「素敵なとこですね」
「ああ、お気に入りなんだ。飯も美味いし、ワインも安くて美味い」
「へぇ~」
小さな個室に入って。
私を壁際の席に座らせて。
原田さんはその斜め横の壁際に座った。
『…向かいに座るんじゃないだ』
ちょっと二人の距離が近い気がして恥ずかしくなった。
「何食べる?」
「あー、どれが美味しいですか?」
「そうだな。…とりあえず、このピザと…」
どうしてだろう。
メニュー選びですら楽しくなってくる。
注文を終えて、お絞りで手を拭く。
「…泣いたのか?」
その優しい瞳で見られると否定は出来ない。
「…やっぱりばれますよね…はは。朝はもっと酷い顔で…会社休んじゃいました」
頭を指でぽりぽりと掻きながら視線を逸らせた。
「…頑張ったな」
また大きな手が私の頭を撫でる。
『慰めてくれてるだけ…なんだよね?』
私は原田さんの顔を見つめる。
「やめてください。また泣きそうになります」
私が眉根を寄せて、そう言えば。
「…泣いたら慰めてやるよ」
彼の手が私の髪を撫でていく。
「冗談止めて下さいよ」
軽く笑いながら目をそらした。
でもちゃんとお礼が言いたくて、また視線を原田さんに向けた。
「でも…きちんと別れを伝えることが出来ました。原田さんのお陰です、ほんと。ありがとうございました」
向き合って膝に手を置いて、頭を下げた。
「大袈裟」
なんて笑いながらまた頭をポンポンと撫でていく。
「…原田さん、原田さんて頭撫でるのクセなんですか?」
「ん?そうか?」
「はい、しょっちゅう撫でられてる気がしますけど」
「…わりぃ。嫌…だったか?」
「いえ…、嫌っていうわけじゃないんですけど…、どうしてかなって…」
「…どうして…だろうな」
眉根を寄せた表情に次の言葉を探していると、
店員が「失礼しまーす」とお酒と料理を持って来た。
「おいし~!!!」
「随分美味そうに食べるな」
「すみません、今日…何にも食べてなかったんで」
「そか…」
「ああ、そんなに気を遣わないでください。すぐ元気になりますから」
それからご飯を食べながら、お酒を呑みながら他愛のないことを話してた。
下らない話にも原田さんは笑ってくれて…。
それだけで嬉しくなった。
「そういえば、原田さん」
「…なぁ、総司や平助は名前で呼んでるのに何で俺は苗字なわけ?」
片眉を上げて少し赤くなった顔が私の顔を覗き込む。
『顔、近いし!』
私は驚いて、視線を泳がす。
「あ…、いや、深い意味はないですけど…」
「じゃあ俺のことも名前で呼んでくれよ」
「えーっと、じゃあ…左之さん?」
「ああ、それでいい」
左之さんと視線が絡めば、ニッと笑って美味しそうにお酒を煽った。
私も照れくささを流し込みたくてお酒を飲んだ。
「ご馳走様でした!また奢ってもらっちゃってすみません」
店を出て、左之さんに向けて頭を下げる。
「いや、こっちから誘ったんだしな」
「じゃあここで…」
名残惜しい気もしたけど、本心。
一人でも気分良く帰れる気がした。
「おいおい、馬鹿言うな。送らせろよ」
眉根を寄せた左之さんが不機嫌そうな声をわざと出して、私のおでこを指先で小突く。
「…すみません。じゃあ、お言葉に甘えちゃいます」
『やっぱり優しいな』なんて思いながら思わず頬が緩んだ。
「そうだ、甘えとけ」
私の頭にポンと手を置いた左之さん。
二人で私のマンションへと足を向けた。
左之さんは私の歩幅に合わせて歩いてくれる。
…千景は…私を置いていくから私はいつも小走りだったっけ。
『ああ、もう千景のことを考えるのはよそう』
一つ溜め息を吐いた。
「寒くないか?」
「はい、マフラーも巻いてますし」
「そうか」
お酒を呑んだせいか火照る身体に冷たい風が心地よかった。
心も、寒くはない。
会話をポツポツと交わしながらあっという間に着いたマンション。
「じゃあ、ありがとうございました」
「ああ…」
それから急に訪れた沈黙。
まだ名残惜しい気がして、必死で言葉を探す私。
「なぁ…。またこんな風に食事したりしないか?」
「え…。…いいんですか?私なんかで」
驚いて見上げれば、降り注いだ優しい笑顔。
「ああ、美奏がいいんだ」
胸がキュッと締め付けられた。
「じゃあアドレス交換していいか?」
「あ、はい!」
お互い携帯を向かい合わせて、赤外線通信で番号やアドレスを交換する。
「おし、いいな」
「はい」
不意に訪れた沈黙。
左之さんは今何を考えてるんだろう…。
見上げると、左之さんと視線が絡んだ。
また…胸が締め付けられた。
「じゃあ…、おやすみなさい」
その言葉を選ぶしか…、今の私にはなかった。
「ああ、おやすみ」
互いに笑みを向ける。
私は2,3歩進んで左之さんを振り返った。
「…あ。左之さん、ここまで来れば大丈夫ですから。見送らなくてもいいですからね?」
「…俺が見送りたいんだよ」
「…そう、ですか」
立ち止まってしまった足が中々動かない。
「…じゃあ、帰りますね」
「ああ…。また泣くなよ?」
「…そんなこと言わないで下さい。せっかく忘れてたのに」
「…わりぃ」
私が眉根を寄せて笑えば、彼はすまなそうに呟いた。
「あの!もう大丈夫ですから!左之さんから沢山元気貰いましたし!お仕事頑張ってくださいね」
声も元気に、今出来る精一杯の笑顔を左之さんに向ける。
「ああ、美奏も頑張れよ」
「はい!おやすみなさい!」
互いに笑って、私は口元に笑みを残したまま入り口へと元気よく歩く。
金曜の時と同じようにエレベーターに乗り込みながら振り返る。
『閉じる』のボタンを押して、左之さんの顔を見て…息を飲んだ。
『何で…そんな顔してるの?』
軽く眉根を寄せて、切なそうに私を見ていた。
閉じられた扉。
最後、私は笑えていたんだろうか。
またきゅっと胸が締め付けられた。