主治医の先生から、私たち両親へ伝えられました。

 

「これからは抗がん剤による治療が必要です。
そして、抗がん剤治療を専門とする科へ転科となります」と──。

 

さらに、新しく担当になる先生からもお話がありました。

抗がん剤には、
脱毛・食欲不振・骨髄抑制による感染症のリスクなど、
避けられない副作用があること。

 

そして、治療中の経過をしっかり観察するために、
これまでの大部屋から個室に移ることも、その場で決まりました。

 

息子がかかった病気は、進行が早く、
早急な治療が求められるタイプのもので──

話し合いの末、
**「その日のうちに抗がん剤治療を開始しましょう」**という方針が決まりました。

 

先生の説明を聞きながら、
私は胸の奥で、ずっと思っていました。

 

「6歳の彼が……
こんなにたくさんの現実を、
本当に受け止められるのだろうか」

 

不安で、不安で、たまりませんでした。

 

そして先生からは、
「本人への伝え方をどうするか」も相談されました。

 

正直なところ、私たち自身も動揺していました。

元気だった彼が──
突然の入院、そして抗がん剤治療。

 

「どうしてこんなことに……」

そう思う気持ちは、たしかに心のどこかにありました。

 

でも、そんなことを言っていられる状況ではありません。

これは、彼がこれから向き合っていかなくてはならない現実。

 

この治療しか、希望がないのなら。

私たちが取り乱している場合じゃない。

 

一番不安なのは──
ほかでもない、彼自身だから。

 

だから私は、先生に伝えました。

 

「彼には、私から説明します。
気持ちで負けないように、ちゃんと伝えたいんです」

 

そして──

話を終えた私たち夫婦と、
これまでお世話になった主治医の先生、
新しく担当になった先生、看護師さんたちと一緒に──
私たちは彼の病室へ向かいました。

 

私は、できるかぎりの笑顔をつくって、彼に話しかけました。

 

「新しい先生が来てくれたよ。
まだお熱がなかなか下がらないでしょう?

だからね、“今までと違う必殺技”を使える先生を、紹介してくれたんだって。

くさタイプの先生から、エスパータイプの先生にバトンタッチなんだよ!

病気が強いから、もっと強いお薬を使って、
早くよくなるようにってことになったの。

強いお薬が得意な先生が、これから治療してくれるんだって」

 

──ポケモンが大好きな彼に、私はそう説明しました。

 

彼は、たくさんの大人に囲まれて、少し照れくさそうな表情を浮かべながらも──
新しい先生の顔を見て、小さく「うん……」とうなずいてくれました。

 

そして私は続けて伝えました。

 

「今日から、その強いお薬を使ってもらうよ。
それとね、もっとしっかり様子を見るために、
個室にお引っ越しすることになったの。

 

お薬が強いから

ちょっとご飯も食べたくなくなることもあるかもしれないみたい。

でも、ご飯が食たべたくないときは

点滴で体に必要な栄養を入れてもらうこともできるから

そうなっちゃっても、心配しなくていいからね。」

 

すると彼は、少し考えてから、こう言いました。

 

「ふーん。そうなんだ。

 

今からお引越しか。

 

このお部屋は赤ちゃんのお友達がたくさんいていいんだけど、

夜1人泣いちゃうととみんな泣いちゃって大変なんだよー。

 

また1人のお部屋でもいいよ。わかった。」

 

彼の部屋は、彼以外みんな1歳未満の赤ちゃんばかりでした。

 

その言い方がなんだかお兄さんっぽくて、
私は、思わずくすっと笑ってしまいました。

 

まだ6歳なのに、
ちゃんとまわりを見て、考えて、
自分なりに受け止めようとしているんだなぁって。

 

その小さな背中が、たまらなくいとおしくて──
私は心の中で、そっとつぶやきました。

 

「ありがとう。がんばろうね。
お母さんは、いつでもそばにいるよ」

 

 

 

──そしてこの後個室へ移動し、
息子の抗がん剤治療がはじまりました。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました🕊️

急がず、無理せず──
また、息子との大切な時間を
ぽつりぽつりと綴っていけたらと思っています。