本年3月24日(金)17:30〜池袋サンシャインシティ噴水広場において、佐藤優樹さんの1stシングル「Ding Dong/ロマンティックなんてガラじゃない」発売記念ミニライブ&お見送り会が開催されました。

これが土曜日であれば、必ず私は参加していたことでしょう。しがないサラーリマンの身では、期末の金曜日に休むだなんて行為はとてもとてもできやしません。だから私は、彼女のデビューソロライブがどんなだったのかについて、それはもうアフリカの砂漠でオアシスの水を求めるがごとく広大なネット世界を彷徨い、ひとつひとつのピースを集め、埋め合わせ、想像するよりほかないのです。

彼女のソロライブを再現するための重要なキーはいくつかあります。まずもって、彼女は彼女特有の美学を持っていることを想起しなければなりません。たとえば、佐藤さんは12期のためにリズム練習に特化した自作のCDをマネージャー経由で渡したことがありました。決して自分の名前を出さないようにと注意書きを添えて。また、鞘師里保さんが卒業した後、残されたメンバーで盛り上げていこうという話の中で、当然「頑張る」ことが前提となるわけですが、それを表に出す、つまり「私、頑張ってます」なんていうのは彼女にとっては「痛い」ことでしかありません。さらにモーニング時代、コンサート始まりの円陣を切った後、彼女はひとりその場を離れることがよくありました。彼女の卒業に際し、同期の石田亜佑美さんによってその謎が明かされます。佐藤さんは、コンサート開始直前まで誰もいない、誰からも見られない場所を見つけ、自分の魅せ方のチェックをしていたということです。そして私たちは、彼女の繰り出すそのたったの「0.5秒」によって魅力され、見事に陥落したものですが、その裏側には人知れずのまさしく努力が存在していたのです。

佐藤さんは今デビューに際し、次のように話しています。「心境はね。頑張って無感情にしてる。第三者として見てた時に、えっと、女の人が男性にがめついているのってちょっと見てられなくない?なんかさ、好き同士というのはまあいいとしても、女性の方が男性のことが好きだった場合、男性逃げてくじゃん。男性が好きだったときでもいいけど、女性の方が好きでも、女性がちょっと隠しているときのほうが、まあは女性に魅力を感じるのよ。男性もそれに対して、好き好きってなるイメージがあるんだけど、なんかそういうイメージがある、そういう価値観が、これは恋愛に例えてるけど、それといっしょで、なんかがめつかないように、めっちゃ無感情になってる今。嬉しいという感情も無感情にしてるし、ヤバいっていう感情も無感情にしてるし、とりあえず遠目で自分を見て、なんか無感情にしてるかも。嬉しいってなっちゃうとさ、まあのこと全く知らない人からしたら、何様だよってなっちゃうじゃん。いや分かんないよ、いろんな考えの人がいるからさ、分かんないだけど、でもどういう考えの人たちがいるか分からないからこそ、ちょっと無感情になってる。」

彼女の話を補うため、以下の事実を加えさせていただきます。
1. 佐藤さんの卒業コンサートでは、コロナ予防対策を施した日本武道館に満席の6,000名を集め、さらにひかりTVの生配信、全国47都道府県の映画館と台湾、香港、総計137スクリーンにて行われたライブビューイングにハロプロ史上最大の33,000人を超える人数が参加した。
2. 初のソロリリース曲「笑顔の君は太陽さ」は、ビルボードとオリコンのダウンロード曲週間ランキングで異例のトップ3入りを果たした。
3. 本年2月17日に公開されたMV「Ding Dong」は現在、88万回視聴されている。
4. 本年3月11日に公開されたMV「ロマンティックなんてガラじゃない」は現在、21万回視聴されている。

以上の事柄を踏まえ、彼女の人となりと心境を勘案すると、佐藤さんはデビューソロライブに際し、1stシングルがレトロ調の雰囲気であることに違和感を感じたもののMVが88万回もの視聴回数となり、無感情を装うことに頑張らなければならないほど嬉しさを感じ、しかし、絶対に天狗になっていると思われないよう努めて普段どおりに、小さく小さくまとまって、しかしながらパフォーマンスだけはしっかり披露しようという気概が見えてきます。その発表の場として、池袋サンシャインシティ噴水広場を選んだのは、彼女自身なのではないかと思うのはあまりにも独りよがりな想像かもしれませんが、少なくともそういった考えを起こさせてしまうほどの地におけるデビューソロライブが絶対的にいい加減なものとなるはずはないのです!そして、パフォーマンス後の、実際に参加された方々の感想を目にするにつけ、想像通りであったことを確認するほか特筆すべきは、「しっかり高音が出ていた」という証言なのです。

ロマガラ、「ロマンティックなんてガラじゃない」は、モータウン調の良曲といわれています。さて、そのモータウンとはなんぞやということでございますが、1960年代から続くインディーズレーベルとしては異例の大成功を収めたというアフリカ系アメリカ人所有の独立系レコードレーベルのことだそうで、代表的なアーティストとしては、ジャクソン5、ダイアナ・ロスとシュープリームス、ザ・スリーディグリーズなどが有名となっております。そうした系譜に連なり、日本の歌謡界、アイドルソングにおいてもモータウン調と呼ばれる曲は多く存在しており、ロマガラもそのひとつに数えられるようです。

ところでくだんの「しっかり高音が出ていた」という証言でございますが、言わずもがなそれはそのロマガラの後半に出てくる「私なら平気よ」の「よ」の部分にほかなりません。彼女は地声でもかなり高く声量のある音を出すことができるのですが、「よ」の部分についてはあまりに高く、さすがの彼女もファルセットを使っています。MVにおいては、もちろん綺麗に迫力をともなって聴くことができ、毎回その部分に差し掛かるとき、私などは期待と高揚が最高潮に達し、彼女のハイトーンが決まると、自然と人差し指を突き立て、目を閉じて拳に力を込め、残響のような余韻に浸るのです。今回、その高音部分がしっかり出ていたということなのですから、これはもう大成功と言っていいのではないでしょうか。

残念ながらデビューソロライブにカメラは入っていなかったようで、その様子を正確に知ることはできないのですが、遅かれ早かれ彼女のパフォーマンスはいずれ私たちのもとにもきっと届けられるのですから、一日千秋の思いでそのときを心待ちにしたいと思います。