今年のアイドル三十六房ハロプロスペシャルは、12月16日、モーニング娘。’21リーダー譜久村聖さんとサブリーダー石田亜佑美さんを招いて、生配信で開かれました。進行はいつもの音楽ライターである南波一海さんとハロオタで知られるタワーレコード社長の嶺脇郁夫さん、さらにぱいぱいでか美さんも出演されました。

12月16日の生配信です。つまり、佐藤優樹さんの卒業コンサートからそう日が経たないなかでの開催です。私にとっては、いやおそらく多くのハロオタ、モーオタの皆様方も同様ではなかろうかと思いますが、完全に後夜祭的なスペシャルイベントとなります。だいたい譜久村さん自身が正真正銘のハロオタなのですから、午後8時から延々と約3時間にわたって繰り広げられるハロオタトークはもう絶対的に面白くないわけがないのです。しかもですよ、卒業コンサートの話が出ることはこれは必至なのですから、もうホント楽しみでしかたがなかったのです。

このイベントは毎年恒例となっていて、やっている内容も毎年同じです。まずはその年の「私がよく聴いていたハロー!リリース曲」を参加者がそれぞれ披露し、なぜその曲ばかり聴いていたのかについて語るというものがあるのですが、ここから今回ひとつだけネタを拾ってまいりましょう。

進行役の南波さんが選んだ今年のハロ曲は、一番筆頭にモーニング娘。’21の「よしよししてほしいの」が上がっています。そしてなぜその曲を選んだかについて説明するのですが、ここで「ぼうぎょのくだり」というフレーズが飛び出してきます。暴魚?いったいなんのことわざでしょう。実は私、今回のモーニング娘。の新曲で「よしよししてほしいの」については、題名だけでそこはかとない恥ずかしさを感じてしまい全然聴いてなかったのです。だから「ぼうぎょのくだり」と言われても意味が分かりません。ところが参加者は大盛り上がりです。でか美さんなどは、この曲のMVの内容を大仰にゆっくりと次のように話し始めます。

「笑顔が私の、防御ですから・・・。返事がいいのも、防御ですから・・・。優等生なのも、防御ですから・・・。みんなそれぞれに・・・防御があるんでしょうがと歌って小田さんが立ち上がるんですよ!」これでみな大ウケとなります。私はもう俄然興味がわいて、そのMVを視聴することになるのですが・・・はい、すみません。先ほど申し上げた通り、今の今までそのMVを見たことがありません。ユーチューブ検索欄に「よしよししてほしいの」と打って、エンターです。

音もなく、そのMVは始まります。画面いっぱいに女性の口元だけがクローズアップされています。女性は、右手の親指を下唇に這わせ、艶かしい様子で肩をひいて正面に向き直るのですが、依然口元しか映っておらず、また映像はアウトフォーカスにぼやけていきます。ここでイントロが始まります。女性は、佐藤さんです。卒業に合わせた新曲なのだから、当然彼女にフューチャーしたものとなるのでしょうが、しかし、この最初のファーストインプレッションが曲全体を通してひとつのテーマとなっていることが後々になって分かってきます。少なくとも、音もなく始まった冒頭部分で、「よしよししてほしいの」という語感から受ける甘くアンニュイなイメージはすべて吹き飛んでいきます。彼女の口元から、女性特有の美しさの裏側にあるしたたかな攻撃性が見て取れます。そんな表現ができるのはおそらく彼女しかおらず、つまり彼女が卒業しようがしまいが、この曲のテーマを決定づけるどあたまは、すべからく彼女であるべきと言えるでしょう。

MVの、イントロも始まらないわずか3秒でついつい興奮してしまいましたが、この調子で書いていっちゃうと全然終わらないので、曲全体の印象を語ると、もうとにかくカッコいいの一言に尽きます。そのうえ、例の「ぼうぎょのくだり」がリズミカルに畳み込んできます。そして、さらにこの曲の最大の見せ場があるんです。それは間奏部分なのですが、ここで私は佐藤さんの卒業コンサートで披露された「よしよししてほしいの」を思い出します。正確に言うと、MVを視聴している途中で「あの曲だ」ということに気がつきます。間奏部分では、エレクトリカルなサウンドが幾層にも折り重なり、まるで鏡の奥の鏡が延々と四方八方に広がっていき、自分の存在の在処が分からなくなってしまうような不思議な感覚を覚えます。あのコンサート中、私は間違いなくそのような体験をしたのですが、それはモーニング娘。が作り出すパフォーマンスによるものだったのか、それとも曲そのものが持つ魔力なのかは定かではありません。なぜならば既に私は、そのスピリチュアルな洗礼を受けており、今はもう正確な判断などできるはずもないからです。

ところで・・・佐藤さんがTikTokを始めた!と思ったら、立て続けに3つも動画を上げた!で、一発目が「内通者」って、やっぱわかってんだな。