前回、前々回と人工知能・AIについて記し、前回は思わせぶりに“そして、日本は?”と結びました。今回は、人工知能の発達と日本について私見を記したいと思います
2020年夏、東京オリンピックでは様々な方面で人工知能が用いられ、技術立国・日本の再興がアピールされることでしょう。競技運営、セキュリティ、アテンド用ロボット、自動運転車輛等々、一部競技ではAIが人に代わってジャッジする場面があるかもしれません。時の機運とお祭り気分が相まって、日本中が高揚感に包まれることも想像に難くありません。
祭りの後の虚脱感、単に一時の淋しさと疲労感だけで済めばいいのですが、景気も落ち込むのが通例でしょう。2020年代前半、世界的にはちょうど人工知能による第4次産業革命が本格化するタイミングです。諸々の産業分野で効率化が進み、デフレが世界的に基調になります。日本(民族・企業・行政)はこれまで、時代に対しての適応力が秀でていたと思います。これまでと同様、日本は2020年代の波にも乗れるでしょうか?
明治以降、とりわけ第二次大戦後の日本の繁栄は、良くも悪くも頭脳明晰な官僚がロードマップを描き、勤勉実直な国民が対応してきた結果と言えるでしょう。そして官僚は各方面の利害(既得権)を絶妙なバランス感覚で調整し、自らの利権も死守してきた。産業の高次化は官僚が描いたとおりとなり、結果として貧乏くじを引かされたのは相対的には弱者(時流的敗者)と言われる人たちでした。しかし、人工知能による第4次産業革命は、官僚や一部の既得権者に不利益をもたらします。加えて、その種の人たちは強烈な縄張り意識を持っています。当然、彼らは徹底抗戦することになります【日本の事情1】。
話は変わります。人間は本を読んだり、教師や先達に教えてもらって賢くなります。人工知能も学習することで賢くなります。学習の原材料はデータで、現在は主に人間が任意のデータ群を与えていますが、一部領域では人工知能が自らネットからデータを収集しているようです。いわゆるビッグデータという代物です。
例えば新宿駅の乗降客、JRだけで75万人/日もいます。下車して駅近辺の用務先に行く人もいれば、地下鉄や私鉄に乗り継ぐ人もいます。少数でしょうが住民もいるでしょう。交通センサスといった調査で、おおよその人数の動向は把握されていますが、それは匿名個人の大群にしか過ぎません。しかし、仮に人工知能が監視カメラの映像やIC乗車券情報、スマホの位置情報等に制約なしにアクセスできるとすれば、75万人分の特定個人の動向が赤裸々になります。
人工知能の進化には大量のデータが不可欠ですが、それはプライバシーとトレードオフの関係になります。昭和の時代の日本人と違い現代の日本人はプライバシーに過敏です。人工知能にアクセス権を与えることに日本人の多くが同意するとは思えません【日本の事情2】。
2020年代前半、オリンピック後の閉塞感と景気低迷を打ち破る起爆剤は出現するでしょうか? 世界的な流れとして人工知能以外は考えにくい。上述の事情から、人工知能の進展に伴う日本の将来を考えてみると、ロボットなどハードウェアとの組み合わせにおいては日本の持ち味を発揮できそうですが、ことソフトウェア(人工知能の本丸)領域ではかなり悲観的になります。携帯電話や軽自動車など、日本をガラパゴスに自虐的に例える商品分野がありますが、人工知能は基盤技術です。基盤技術の開発に官民のコンセンサスを得られず、日本は先進国から脱落し、抵抗勢力もプライバシー観念もない専制的な社会主義国にも追い抜かれる事態。プライバシーと比較すると、それも仕方のないことかなと思えます。
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