【#Interlude The"Bloody left arm"】

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 砂漠特有の足場の悪さが、機体の自由を奪ったわけでもなければ、副官である自身の立場を慮ったわけでもない。だが、機体が、オデッサのときほど勇躍しなかったのは確かだ。
 そのせいだろうか。
 いや、目的の、キャノンタイプはこの手で沈めた。後から出現した、”ガンダム”。ヤツの性能が高すぎたのだ。
(負け惜しみだな……。)
 ジオン公国軍アーサー・クレイグ大尉は、地球連邦軍の捕虜用独房で内省した。
 砂漠での戦いが終わって、数日が経つ。おそらく、今日はU.C.0079の12月1日あたりだろう。
 今朝方から、基地内が慌ただしい。恐らく、指揮系統に入れ替わりがあるのだ。それに合わせて、末端の部隊も入れ替わっている。その空気感は、ジオンも連邦も変わらないらしい。
 見張の兵士も、夕飯のときから急に乱暴になり、差し出された食事と共に、拳が3発飛んできた。朝まで担当していた部隊の兵士は、気遣いがあった。指揮系統からの躾が、よく行き届いている部隊だった。
(むしろ、そんな部隊の方が珍しいのだ。)
 厭戦気分はどちらも同じだ。弱者に、鬱憤の矛先が向く。

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 独房の外で、また気配がした。殺意、とまではいかないが、明確な敵意がある。はっきりとは聞こえないが、悪巧みをする人間特有の、声の調子も小さく聞こえた。
「やめろ。南極条約を忘れたのか。」
 静かだが、意志のある声が悪意を遮る。
「なんだお前らは?」
 先ほどまで、ヒソヒソと話していたらしい兵士が不機嫌な声で応じた。
「捕虜を移す。聞いていないのか。」
「聞いていない。お前らで美味しい思いをするつもりか?」
「舐めるなよ。」
先ほどとは違う声が、会話に加わる。いくらか粗暴な印象があるが、こちらも、明るい意志を感じさせる声だった。
「ジオンは憎いが、お前らみたいな卑怯な真似はしない。やるなら戦場で、正々堂々やる。一緒にするな。」
「なんだと!?」
「イギー、やめろ。」
 最初の声がまた静止する。その後、指令書だ、という冷静な声と、カサコソと紙が擦れる音が聞こえると、"小悪党"共もおとなしくなった。
「お二人とも、し、少尉でありましたか。し、失礼しました!」
「そ、それもパイロットで……」
「そうだよ、失礼だよ。お前らこそぶん殴ってやろうか?」
 やめろ、と、また"冷静な方"が"粗暴な方"を止める。
「いずれ捕虜交換で向こうに帰るんだ、あまり恥ずかしいことをするな。語り草になるぞ。」
「へぇへぇ、悪うござんした。」
 と、いうセリフと共に、独房のドアが開いた。
「アーサー・クレイグ大尉、房を移ります。お迎えにあがりました。」
南極条約で、捕虜としての身分が保障されているとはいえ、妙に恭しい態度だった。
「ヘント・ミューラー少尉です。護送を担当いたします。」

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 護送車がわりの物資・人員輸送用の3.5tトラックの荷台には、一応、簡素ながら長椅子も対面式に乗せられていた。基地内の移動なら、まあ、こんなものだろう。長椅子に座らされると、拘束を解かれた。しかも、対面して座っている、ヘント・ミューラーと名乗る少尉は、あろうことか小銃を傍らに無造作に置いてしまっている。
「どう解釈すればいい。」
 アーサーは、苦笑交じりに、ヘント・ミューラー少尉に訊ねる。
「信用されているのか。それとも、舐められているのか。」
 この状況ならば、アーサーはいつでも目の前の連邦軍士官の、息の根を止めることができる。
「前者です。」
 ヘント少尉は、なぜかアーサーのことを信じきっている様子だったが、護送車の荷台の後ろ側にいる、もう一人の少尉—イギーと呼ばれている—は、違った心象らしい。油断なく小銃を抱えたまま、鋭く視線を光らせている。いや、この反応こそが、本来自然なのだ。あるいは、この油断のない警備があるからこそ、ヘントという男もここまで余裕を見せられるのかも知れない。

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「資料を見ました。ハリソン・サトー少佐が指揮する、第241MS大隊所属、とは、記録にはなかった。突撃機動軍オデッサ守備連隊麾下、第362機械化混成大隊を指揮されていた、アーサー・クレイグ大尉。貴官は、11月9日、オデッサ市付近で”ガンダム”を撃墜したMS-07のパイロットですね。"オデッサのガンダム殺し"というジオン軍内のあなたの異名が、そのことを示している。」
「こんなところで、尋問か?」
いいえ、と、ヘント・ミューラーは首を振る。
「個人的に、貴方に興味があった。尋問室より、この方が気兼ねなく話せそうな気がしたので、上官に無理を言って、護送任務に。」
 まだ、ほとんど話していないが、変わったヤツだ、ということは十分に理解できた。
「先ほど、見張りの兵は、君のことをパイロットだと言っていたが、少尉?」
 ええ、そうです、と穏やかに応える。のん気なのか、人が好いのか。いずれにしても、この移動の退屈しのぎには、丁度いい相手かもしれない。少し”おしゃべり”に付き合ってやることにした。
「オデッサで、貴方が撃破したガンダムのパイロットは、わたしです。」
 ぴくり、と、凛々しい眉が動いた後、アーサーはフッと笑った。
「やはり、ジオンの火力ではガンダムは殺しきれなかったか。結局、パイロットは無事生き延びて、また別の機体を駆り、ジオン兵を屠っていたわけだ。」
「いえ、見事な奇襲でした。性能差を覆された。完敗でした。しかも……」
ヘントは、続ける。
「わたしのガンダムを撃破したところは、オデッサの宇宙港の付近だった。貴方はそのまま宇宙に脱出できたはずだ。」
「……。」
「だが、貴方は今こうして、中東にいる。貴方は、オデッサで最後まで、自身の進退を投げ打ち、味方の、宇宙への脱出を優先させた。そういう指揮官に、好感を抱きました。」
わたしも、同じ立場ならそうしたいと願います、とヘントは話す。
 ずいぶんとおしゃべりだな、と苦笑を浮かべ、アーサーも応じる。
「そういう、英雄主義的な考え方は、どうかと思うがな。」
ふと、ハリソン・サトー少佐の顔が思い浮かんだ。部下を愛し、戦場を愛し、そして戦場で死ぬことこそ本望と信じていた。言うなれば、古き時代の武人のようであった、彼のことを——。アーサーも、一人の兵の立場として、彼を敬愛していた。だが、あの、大義のための死を、甘美に演出してしまう精神主義的なジオンの気風には、正直なところ、危うさを感じていた。
「違います。戦場でどう死ぬか、という、英雄主義ではない。あなたは、仲間を守るために、指揮官としての責任を果たした。わたしが貴方に好感を覚えたのは、記録をそう解釈したからです。」
「初対面の、それも敵の士官に、随分とグイグイ来るな、君は。」
 護送車の小さな窓から、月明りと共に、見覚えのあるものが、アーサーの目に入った。
「すまん、戻って……止められるか?」
「おい、立場をわきまえろ。」
 ”見張り”のイギーが鋭い声をあげるが、ヘントは構わず運転席に呼び掛けた。
「”キッド”、戻してくれ。たぶん”マスタング”のところだ。」
「なんで、こいつの肩を持つ?」
 勢いよくバックする車内で、イギーがあからさまな不満の声をあげる。まったくそのとおりだ、と、我がことながら、アーサーも内心同意する。
「少し、確かめたいことがあるからな。」
 なんだよそれ、とイギーの不満も収まらないうちに、車は止まった。
「降りますか?ご覧になりたかったのは、これでしょう?」
おい!とイギーはさすがに声を荒げる。
「大丈夫だ、彼は愚かなことはしない。」
「……君は、わたしの何を知っているというのだ?」
「直感です。」
「バカな、ニュータイプ気取りか。」
「……まあ、そんなところです。」
確かに、逃げる気などない。こんな、敵の真っただ中で、身一つで駆けだしたところで、どうにもならない。
「お言葉に甘えよう、ヘント少尉。不審があれば、迷いなく撃ちたまえ……イギー、少尉で、よかったか。」
アーサーはイギーの方を向いて問いかけるが、イギーは応えず、黙って銃口を向けた。 

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「念の為です。」
 ヘントは、連邦軍の制服の上着をアーサーに渡す。アーサーがそれを羽織ると、三人は、荷台から降りた。
 月明りに照らされて、サンドカラーの機体の残骸が横たわっている。
「撤退するとき、空から見た。こいつは、我々の友軍機ごと、自分を撃たせていたな。」
 アーサーは、青く澄んだ瞳を、苦々し気に細める。
「わたしも何度か組み合ったが、パイロットはなかなか腕が良かった。あの腕ならば、生き延びて、仲間を守るべきだというのに、こいつも下らない英雄主義に溺れたのだろう。自己の死を、勝利や栄光で飾るなど……」
「恐縮ですが。」
 ヘントが、おずおずと口を開く。
「その機体のパイロットも、わたしです。」
 アーサーは思わず振り返った。
「貴官は不死身か!?」
「そうだ、そいつは我が隊の誇る、不死身の”被”撃墜王だ。殺しても死なない。」
油断なく銃口を光らせながらも、イギーが軽口を叩く。
「ついでに言うと、お前を倒したガンダムも、そいつだ。」
アーサーは、その顔に動揺の色を浮かべたが、うつむき、やがて、自嘲気味に息をついた。
「なんだ、まるでコミックブックか映画のような話だな……君にとっては、わたしはリベンジを果たした”宿命のライバル”というわけか。」
 それなら、個人的な興味も持とうというものだ。
「……そういう、ことも、ありますが……。」
 ヘントは、少しためらいながら続けた。

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「貴方と戦ったとき……声が、聞こえました。」
 声?と、アーサーと、イギーも怪訝な声をあげる。
「そうです。この人を、殺してはならない——と。」
「誰のだ?」
イギーが、ニヤつきながら訊ねるが、それにはヘントは応えなかった。
「今度はオカルトか?そういう話は信じないぞ。」
アーサーも、侮るような視線を送りながら応える。
「わたしもです。戦場のストレスなのか、自分自身の、何か、直感のようなものなのか、分かりません。ですが、確かに、貴方を殺してはならない、と、そう直感しました。」
「それで”殺さない”という選択肢を選べるのだ。大したものだな、君の腕も。」
アーサーの軽口に、ヘントは、機体性能のおかげです、と謙遜して応える。
「会って話せば、何か分かるかもしれないと思いました。だから、こうして、護送を買って出たし、トラックも止めた。」
 はあ、と、後ろでイギーが大きなため息をつくのを、アーサーは聞いた。
「積もる話なら、食事でもしながら、いかがですか?」
 トラックの運転席から、小柄な男が降りてきて、のん気な声を出した。大きな、クーラーボックスのようなものを抱えている。
「なんか、こんな風になる気がして、弁当用意してましたよ。」
「用意が良すぎるわ。お前もニュータイプか?」
 応じるイギーの声に、柔らかさが混じる。
「どうぞ、どうぞ、はい、皆さん、座って。」
 クーラーボックスを開けると、個別にパッキングされた弁当箱をテキパキと皆に配り、ついでに大きなジャーからスープを注いだ。
「バーミヤです。」
「お、バーミヤか。」
イギーが、警戒を解いた声で応じる。
「バーミヤなら、しょうがねえな。」
そう言って、小銃を肩に担ぐと、どかっと腰を降ろして、弁当を開けた。
 アーサーは、唖然として、一同を見まわした。ヘントも、上品に地面に座り、一見カレーに見える料理を口に運びはじめている。
「大尉も、どうぞ。」
 アーサーの視線に気づくと、さも当然と言う風に食事を勧めてくる。
「そうですよ、捕虜用の食事では、満足に腹も膨れないでしょう。」
おいらの料理は、なかなかですよ、と、トラックの小男が弁当を押し付けるように渡す。イギーが、自画自賛か、と、笑った後、アーサーに言う。
「”キッド”の飯はホントにうまいぞ。いらないならよこせ、俺が食う。」
「駄目ですよ、捕虜をいじめたってんで問題になっちゃいますよ、イギー少尉。」
 ”キッド”と呼ばれた小男が、冗談めかして言う。
「ヘント少尉が特別に変わっていると思ったのだが……」
苦笑を浮かべながら、アーサーは座り、弁当を開けた。奇妙な晩餐が始まってしまった。
「おい、何をやっている。」
哨戒の部隊に声を掛けられるが、所属を告げると、ブライトマン少佐のところか、と、妙に納得して踵を返す。
「そこそこにしておけよ。」
「どーも。」
イギーが機嫌よさ気に礼を述べる。
「君らの部隊は、一体どういう部隊なんだ。」
「どんな部隊って、なあ?」
「司令が、いい人です。」
“キッド"は言いながら、だから、みんないい人なんだ、と続ける。
「少佐はいい人か?作戦の発想は割とエグいよな。」
俺は"いい人"だけどな、と冗談めかしてイギーは言う。もうバーミヤを平らげてしまっている。
「コーヒーが欲しいな、熱いヤツ。」
「もう少しお待ちを。」
 "キッド"がバーナーで湯を沸かしている。コーヒーを淹れるつもりらしい。
「いい人ですよ。おいらみたいな得体の知れないヤツを拾って面倒見てくださって。」
 コーヒーを淹れる、この"キッド"という男は、どうやら軍人ですらないらしいが、妙に溶け込んでいる。
 家族、の、ような——と、そんな言葉が頭に浮かぶ。
(ほだされたようですね、大尉。)
オデッサで死なせた部下、オスカー軍曹の声が聞こえた気がした。
(ああ、そういうことらしい——。)
 アーサーはフッと微笑み、語り始める。
「わたしは、ザビ家への忠誠心などない。」
「なんだ、唐突に。」
 イギーがコーヒーをすすりながら言う。
「でしょうね。」
 ヘントは、分かっているという風に相槌を打つ。
「だが、スペースノイドの未来のために、などという大義にも、そこまで共感できるわけでもない。」
「では、何のために……?」
 どうだろうか、と、サンドカラーの残骸を見上げ、アーサーはしばらく考えた。
 “キッド"から差し出されたコーヒーを一口すすると、アーサーは続けた。
「君たちも同じじゃないか。仕事だからだよ。」
そうだ。別に憎んでいたわけではない。
「俺はお前らを許す気はないがね。」
そう言うイギーの言葉には、はっきりとした憎悪が混じる。今回の戦禍で、誰か、大切な人を失っているのかも知れないと、アーサーは洞察する。
「不躾だったらすまない。だが、イギー少尉も、ヘント少尉も、そうではないか。この戦いが始まった時は、もう軍人だったはずだ。」
少なくとも、わたしはそうだった、と、アーサーは呟く。
 軍人の家系だった。
 ダイクン家に仕え、サイド3のために尽くすことは、当然のことだった。そこに、大義も志もない。
「だが、その仕事も続けていくうちに、部下が、仲間が出来た。たぶん、彼らが、わたしの戦う意義だった。」
皆、死なせてしまったがね、と、呟くと、アーサーはうなだれて、ため息をつく。
「守りたかった。」
「俺たちの仲間はオデッサで、お前の部隊に皆殺しにされてる。」
イギーが逆襲する。
 アーサーは、何も応えられなかった。やはり、戦場は無慈悲だ。

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「わたしは、貴方たちとの戦いの中で、部下に、自分を撃たせるように指示しました。その判断で味方を傷つけた。仲間を危険にさらしてしまったんです。」
 今度は、ヘントが語り出す。
 マイロに、無理やり引きはがされ、撤退したとき、空中から見た、あの瞬間だろう。目の前の機体が、今の残骸に変わったときの話だ。
 敵とは言え、MSのコクピットで姿が見えないとは言え……誰かの命を奪うことは、その魂に言いようのない疵痕を刻む。それを、気心の知れた、敬愛を抱いて過ごしてきた相手を撃つ——味方殺しなどをさせられ、残された方はもはや、生きる屍と化すだろう。
「わたしを撃たせた仲間の、心の傷を思うと、今も胸が痛む。貴方を殺すなという、あの『声』は、もしかしたら、これ以上罪を重ねるなという、自分自身の魂の叫びだったのかもしれません。」
 アーサーの脳裏に、またオスカー軍曹の姿が過ぎる。

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「オデッサで、君が討ったザク。」
 え、と、ヘントが顔をあげる。
「ドダイで、最初に空襲を仕掛けたザクだ。先ほどイギー少尉が言った、君たちの仲間を滅ぼしたザク。わたしの古株の部下だった。私のために命を落とした彼の声が、今もどこかで聞こえる気がする。だからこそ、誇り高く戦わねばならないと思う。」
 この男、ヘント・ミューラーは、オデッサで殿を務めた自分に、個人的に興味を持ったと言った。この男も、仲間のために、その身を捧げようという兵士なのだ。
 似たもの同士と言うわけか。だから、妙にぺらぺらと、互いに余計なことを喋ってしまう。
「これ以上は、おしゃべりはやめた方がいい。お互い、言わない方が良いことまで言ってしまいそうだな。」
 アーサーは、フッと笑いながらも、この晩餐会の終了を提案する。
「友軍同士なら、好い友人になれたかもしれないな。」
「そう思います。貴方のその、兵士としての誇り高き姿、わたしの部下……いや、今や階級も並びました。我が隊のエースによく似ています。」
 お前の部下だか同僚だかのことなど知らん。似ているのは、お前自身ではないのか、と、アーサーは思ったが、軽く微笑むだけで何も応えなかった。
「お会いできて良かったです。願わくは……戦場では、2度と、貴方にまみえませんように——。」
「それは甘いな。互いに軍籍に身を置く以上は、2度と、は甘い。」
「そうでしょうか。でも、わたしは、そう願っていますよ。」
それに、と、ヘントは続ける。
「もうこの戦争は終わるでしょう。もうこんな、馬鹿げた戦いを起こさねばいいだけのことだ。」
そうだな、と、アーサーは応えた。
 そうだ。
 その、"それだけ"のことが、どれほど難しいことかは、誰もが知っている。そして、人の業の深さを思い、気が滅入るのだ。
 しかし、その希望だけは、棄ててはいけないものだ。それは、はっきりと理解できた。
(そうです。でなければ、わたしたちが死んでいった意味がありません、大尉——。)

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 再び護送者に乗り込むと、目的地までは、皆、無言だった。
 やがて、トラックは止まった。今度はしっかりと拘束をして、アーサーを降ろす。
 ふと、ヘントが呟いた。
「結局、声の正体は分からないままです。」
「分からなくていい。」
 アーサーは応えた。たぶん、その答えは、戦う者の数だけ、ある。そして、絶えず、変わっていく。そんな気がした。
「好い時間だった、ヘント・ミューラー。バーミヤは美味かったぞ。」
 アーサーは、基地内のウェーブ(女性士官)たちを騒がせた、その美貌を、爽やかに崩して言う。
「ジオンの戦場の食事は、貧しく、不味かった。願わくは、もう、あの食事は口にしたくないものだな。」
 そして、再び独房のドアは閉められた。

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【#Interlude The"Bloody left arm"  fin.】