『マスカレード・ホテル』 東野圭吾著
注:ネタバレを含みます近くの図書館にあったのでラッキーと思い貸し出し手続き。約5日ほどで読了。引き込まれた要素として1つ目に人物描写が素晴らしい点。2つ目に連続殺人事件と思い込ませるための犯人の策略とトリック。3つ目にホテルに現れる客の中に犯人がいるが、そうとわからないように差し込まれるエピソードの数々。1つ目の理由として、例えば主人公のホテルマン山岸尚美がその道を志した理由がエピソードとして語られるが、その体験にいかに感動し心を震わせたかがわかる表現で人物像をよりリアルにしている。文中の多くの部分を会話で占めているが、この部分は山岸目線で感じたことを的確な文章にしていて、自分が同じ体験をしたような感覚になった。2つ目の点は東野作品においてはどれも素晴らしいのだが、連続殺人事件と思わせておいて実はそれぞれが単独の事件である、という設定は驚きだった。また、それが闇サイトを経由しているというのも現代っぽく起きた事件にもトリックを挟み込むところはすごい、の一言。3つ目は当然のように怪しい人物が次々にホテルを訪れ、山岸及びホテルマンに扮した刑事の新田とかかわっていくが疑いが晴れた人物の中に実は犯人がいたというラストに唸らせられた。特に今回東野圭吾の作品で改めて感動したのは人物描写の点。小説なのでいくら起こった事件のトリックが素晴らしくても登場人物の人となりや感情表現が乏しいといい文章にはならないということを感じた。続編もあるのでそちらもいずれ読みたい。