「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)7月25日(木曜日)弐
     通巻第8343号   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

日本製鉄、宝山との『合弁を解消』とは穏健な表現である
  実態は中国が『日本製鉄』をしゃぶりつくしたのだ
**********************************

 日本製鉄が宝山と合弁の自動車鋼板製造「宝鋼日鉄自動車鋼板(BNA)」を設立し、半世紀に亘って協力した合弁事業から撤退する。ようやく悟ったのだ。中国進出そのものが誤りであったことを。

 最初は猫なで声で日本を「先生」だと言って、仰ぎ見た。演技だった。技術陣は日本から一万人が派遣された。日本側の勘違い、その善意にもほどがある。
中国は日本の特許を平然と侵害し、技術を盗みつくし、日本の資本やらなにやら、その総てをしゃぶりつくすや、用済みというわけだ

阿漕な遣り方、マナーがない、礼節の国ではなかったのかと日本人は憤慨するが、欺しと裏切りは中国の常識であって、そうした本質も理解しないで中国へ進出したのが、そもそもの間違いなのだ。川崎重工は新幹線技術をごっそりと中国に盗まれ、世界最長の中国新幹線は『中国の独自技術だ』と嘯いている。

原型は中国の歴史そのものの権謀術数にある。孫子にあり三国志にあり、毛沢東は三国志の愛読者だった。

日本を戦争に巻き込んで、中国国民党をしっかりと疲弊させた。
国民党は蒋介石夫人がアメリカでアジ演説を展開し莫大な援助を貰った。近代兵器も供給された。
共産党は『国共合作』などと偽って国民党内部を蚕食し、気がつけば国民党もアメリカもシャブリ尽くされていた。日中合弁は大失敗、その典型がこの日本製鉄と宝山の合弁解消事件である。
     ☆◎☆◎ミ○☆◎☆◎ヤ◎☆◎○☆ザ◎☆○☆◎キ◎◎○☆□

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
宮崎正弘のホームページ http://nippon-nn.sakura.ne.jp/miyazaki/
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2024 ◎転送自由。引用は出典明示
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)7月7日(日曜日)
     通巻第8321号   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 英国で保守党惨敗、イランでは改革派大統領が当選
  ウクライナ戦争は停戦が射程に入ったか?
**********************************

2024年7月5日、クレムリンでプーチン大統領とハンガリーのオルバン首相が会談した。「ハンガリーのトランプ」と言われるオルバンは現在EUの輪番議長であり、モスクワへは電撃訪問だった

プーチン大統領は「キエフがドンバスと他の2つの旧地域から軍を撤退させ、中立の立場を約束すれば、ロシアは直ちにウクライナとの和平交渉を開始する用意がある」と提案してきたが、ゼレンスキーはプーチン提案を即座に却下した。 

モウクワ訪問の3日前(7月2日)にオルバンはキエフを訪問し、ゼレンスキーと会談した。
「モスクワとキエフの立場は依然として大きくかけ離れている。戦争の解決に近づくためには、多くの措置を講じる必要がある。しかし、ロシアとウクライナの長引く紛争が欧州地域全体に影響を及ぼしている」と憂慮を示した。

 ウクライナ政府は、オルバンのロシアへの電撃訪問に憤慨し、「訪問について事前に知らされていなかった」と不満を表明した。

 プーチンvsオルバン会談は、ハンガリーがEU理事会の6か月間の輪番議長国に就任した直後だったので、ウクライナばかりか、EU政治に大騒動を運んだ。

第一にオルバンにはEUを代表する交渉権限は付与されていない。
第二にオルバンは長年、EU内での問題児だが、逆にプーチン大統領が信頼する同盟者であり、EUのウクライナ支援に懐疑論を展開してきた。
「宥和政策ではプーチン大統領を止めることはできない」と欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は反対意見を述べた。
NATOのストルテンベルグ事務総長は「オルバン首相はハンガリーの指導者として訪問したのであり、NATOを代表するものではない」と釘をさした。
 EUの次期外相に指名されているエストニアのカラス首相は「オルバン氏はEUの立場をまったく代表していない。EU議長国の地位を利用して混乱を招いている」と批判した。

オルバンはこれらの批判に対して、「私がやっていることは一つ。戦争の脅威がある場所、ヨーロッパとハンガリーに悪影響を及ぼす戦争がある場所に行って、事実を明らかにすることです。だから私は質問をするのです。例えば、私はゼレンスキー大統領に重要な質問をしました。それらについて彼がどう考えているか、彼の意図、彼の越えてはならない一線、境界線はどこにあるのか、平和のために彼がどこまで踏み込めるのかを理解するためです」とオルバンは語った。

「事態を正確に把握せずにEU幹部らが居座るなら、平和に近づくことはできない。なぜなら、平和は自然にはやってこないからだ」とし、オルバン首相は続けた。「もし何かが出来し、それが突然、平和につながると考えるなら、戦争の自然な歴史を誤解している。誰かが行動を起こさない限り平和は訪れない」
 言葉は慎重だが、正論ではないのか。要するにEU幹部のウクライナ戦争への間違った対応を批判しているのである。
こうみてくると、欧州政治はアメリカと同様に深刻な分裂状態に陥っているとみてよいだろう。


 ▼エルドアン(トルコ大統領)も鵺的行動はお得意

 一方、早くから仲介役を演じたトルコのエルドアン大統領はカザフスタンの首都アスタナで開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議から帰国する際に、大統領専用機内で記者団に対し、「残念ながら、西側諸国には第三次世界大戦への道を開くアプローチを支持する国や勢力がある」と嘆いた。

 エルドアン大統領は、「西側諸国がウクライナに軍事援助を注ぎ続けているが、これは武器製造業者の思惑だ。武器商人が資金を必要としているのは明らかだ。そして武器商人の市場は西側だ」と欧米政治家が忌避する論争の本質を衝いて、強く非難した。

 エルドアンが提唱した「イスタンブール合意」というのはウクライナの交渉代表団が署名した文書である。

ウクライナが永世中立を約束する一方で、一定の安全保障の保証と引き換えに軍の規模を縮小することが想定されている。しかし当時の英国首相ボリス・ジョンソンが交渉を妨害した。ジョンソンがキエフを二度、三度訪問してゼレンスキーを鼓舞し、戦闘継続を促す役割を担ったことは明らかである。
ところが、その英国でジョンソンはスキャンダルで辞任し、トラスは線香花火、暫定でしかなく、旧植民地のインドから英国へ移住した裔のスナクが首相となってウクライナ政策を引き継いできたが、総選挙で保守党が惨敗隣、労働党政権の下で、ウクライナ支援の姿勢が劇的に変わる可能性がある。


▼英国で保守党惨敗、イランでは改革派大統領が当選

7月5日投票の英国総選挙は保守党が惨敗し(労働党412、保守党121、自由民主党71、リフォームUK5、緑の党4)、労働党のスターマー政権が発想した。そのため政策がひっくり返るかと見えたが、スターマー首相はすぐさま、バイデンとゼレンスキーに電話し、外交路線の継続を伝えた。
「英国のウクライナ支援の立場は変わらない。もし米国にトランプ政権が誕生しても、協力する」とし、米英首脳会談が7月9日からのNATO会議の合間に行われると述べた。

 スターマー首相はオックスフォード大学卒、弁護士出身。検察官としてはナンバー3の役職(日本における検事総長に相当)を経て、2015年に政界入りした。

 イランでは保守派有利とみられていたが、改革派候補が大統領に当選する番狂わせがおきた。これはライシ前大統領が5月にヘリ墜落で死亡したことによる。改革派のペゼシュキアンは大差をつけた勝利となり、2001年のハタミ大統領以来、23年ぶりに改革派大統領の登場となる。ただし、白票が五〇万票もでたうえ、有権者の半分は投票に行かなかったので、どれほどの民意が反映されているかは不明である。

フランスも鵺的だった。仲介役のマクロンの仲介案を誰も相手にしなかったばかりか、下院総選挙でルペン「国民連合」に第一党の躍進を許した。

かくしてロシアとウクライナがハンガリーとトルコの仲介にどことなく和平へのチャンネル維持のために期待している。なぜならハンガリーは嘗てのオーストリア・ハンガリー帝国の栄光の残影が濃く、トルコは嘗てのオスマントルコ帝国の歴史が刻まれているからに他ならない。
               
    ☆◎☆◎ミ○☆◎☆◎ヤ◎☆◎○☆ザ◎☆○☆◎キ◎◎○☆□

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
宮崎正弘のホームページ http://nippon-nn.sakura.ne.jp/miyazaki/
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2024 ◎転送自由。引用は出典明示
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)7月6日(土曜日)
     通巻第8320号   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ウクライナ大本営発表『ロシア兵の死者』は55万人
   ロシアのシンクタンク「死者は10~14万人の間だろう」
**********************************

 因みにウクライナ大本営発表の戦果は、『ロシア軍の死者=548580人。破壊した戦車=8142両。砲=14831門。装甲車=15611両。航空機=360機、撃墜したヘリコプター=32機。破損、沈没させた船舶=28隻』(『キエフポスト』、2024年7月5日)

 『キエフポスト』はウクライナの有力な英字新聞で、ゼレンスキー政権には距離を置いているメディアである。

 他方、ロシアには反プーチン、比較的リベラルな英字新聞『モスクワタイムズ』があり、プーチン政権から「外国の代理人」呼ばわりされているものの、休刊とはならず健在である。
 その『モスクワタイムズ』(7月6日)は下記を伝えた。

 ロシアのシンクタンク「メディアロナ」がBBCモスクワ支局と共同で調査した結果ではロシア軍兵士の『戦死』は58207人。巻き添え、負傷が原因の死亡を含めて、トータルの死者は「106000人から140000人の間だろう」と推定値を発表した。

 両者の数字には大きな隔たりがあるものの、ウクライナ戦争の犠牲があまりにも大きいことは事実である。
 「ロシア兵の犠牲はこれまで一日平均120名だったが、このところ一日平均で250名に挙がっている」と前掲シンクタンクは言う

 他方、ウクライナの死者は五〇万人を超えているのは確実とされ、欧米の世論は一日も早い停戦をのぞむ声が日増しに多くなっている
   ☆◎☆◎ミ○☆◎☆◎ヤ◎☆◎○☆ザ◎☆○☆◎キ◎◎○☆□

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
宮崎正弘のホームページ http://nippon-nn.sakura.ne.jp/miyazaki/
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2024 ◎転送自由。引用は出典明示
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~