「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和八年(2026年)4月17日(金曜日)
       通巻第9243号  
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 レアアース、新たな火種
  中国の生産現場が枯渇という皮肉
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 中国はレアアースを武器に日本企業を禁輸対象としたが、2012年にも尖閣諸島問題で輸出を禁止したことがある。日本経済は深刻な危機に陥った。
 爾後、日本政府と企業は協力し合って供給源を多角化し、豪、カザフスタンなどの鉱山開発、製錬技術の提供などを通じ、備蓄は一年分ある。中国の恐喝には耐えられる体制を構築している。

 一方、中国はレアアース資源の枯渇に直面しはじめたのは皮肉である。世界生産の60%、品目によっては90%のシェアを占めるレアアースのなかでも、EVやステルス戦闘機に欠かせない希土類が手に入らなくなれば西側の安全保障に致命的となる。
 中国のレアアース枯渇は自業自得による。杜撰な管理と、計画性のない採掘、でたらめな精錬。基礎的な鉱山学がないエンジニアは乱開発に熱中し、かえって鉱脈を自ら破壊してしまった。

 以前からレアアース鉱脈付近の住民が正体不明の病気にかかり、鉱山会社への抗議活動が行われたが、中国メディアは真剣に取り合わなかった。原因は現場で過激な化学薬剤を投入するという横着な採掘方法を採用したため地下水が汚染したからだ。
 環境を破壊しながら「堀って掘って掘りまくった」。その結果、未採掘地層を広範囲にわたって損傷した。十年の埋蔵量が、のこり五年となってしまった。

 経済がゆたかになれば中国は民主化するという西側の期待は幻想だったようにレアアースでも同じ過ちが繰り返された。
 日中の蜜月時代、日本の善意により寄付とボランティアで中国各地に植林事業が行われた。森林が復活し緑が豊かになれば崖崩れも土砂災害も防げると日本のボランティア団体が植林に励んだ。

 日本チームが帰国すると、またまた若木の乱伐、はげ山がバレるとまずいので緑のペンキを塗ったという笑えない話も伝わった。
 明の時代に万里の長城築城や都市建設のため森林の乱伐が行われた。そのあと植林をせずに放置されたため土地は砂漠化した。

 レアアースのなかで、ジスプロシウムとテルビウムはEVのモーター、ミサイル誘導、航空宇宙に必要な「永久磁石」である。鉱床は江西省と広西チワン自治区だ。
 原始的な採掘技術は強い薬品を鉱脈に流し込んでレアアースを溶解させるという乱暴は方法だった。

 なぜこうした即現金主義的な遣り方横行するのか。
 地方政府の幹部は成績を上げようとGDP報告を水増しするように“即効的”な採掘を煽った面が強い。全体主義体制の性(さが)である。地方政府が、土地売却益を増やすべく不動産バブルを煽ったと同じ構造でレアアース・バブルも不動産バブルと同質である。

中国は優先的に自国のミサイル・宇宙など軍事装備に回すだろう。だが国内資源はあと五年から十年で枯渇するという最悪事態に直面している。
(『北国新聞』コラム「北風抄」から再録)

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和八年(2026年)3月24日(火曜日)
       通巻第9212号   <前日発行>
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 習近平の頭の中は2027年台湾侵攻ではなく2024年だった
   張又侠副主席らが阻止したため両者に亀裂、かれらの失脚に繋がっ
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 日本ではまったく注目されなかった。
 台湾の有力紙『自由時報』(2026年3月9日号)が森本敏・元防衛大臣に独占インタビューを行ったのだが、現職ではない。しかも随分前の防衛庁長官だったから、ニュースバリューが薄いと判断されたからだ。
 ところが、森本発言に注目したのが中華圏のメディアだった。中国語圏ではネット空間で大きな問題となっている。
 かれは何を発言していたのか。

 「中国は台湾に対する武力行使を放棄していない。中央軍事委員会副主席の張又侠氏の失脚により、習近平国家主席が武力を用いて台湾を統一する可能性は、みしろ高まった」
 森本敏元防衛大臣は「シナリオは2つ。第一は軍高官粛清と人事異動により、反習勢力がほぼ排除され、習主席の指揮権がさらに強化され、武力行使が容易になるシナリオだ。
第二に政治、経済、情報といった武力以外の様々な手段を用いて統一を目指すというシナリオ。もし後者のようにすすめば、2028年の台湾総統選挙が重要な転換点となるだろう」とした。

森本敏元大臣は、「2024年の中国共産党第19期中央委員会第3回全体会議後、習近平氏は台湾への軍事攻撃を検討していた。ところが張又侠副主席らが阻止し最終的に失敗に終わった。習近平氏が人民解放軍に対し、いつでも行動を起こせるよう必要な準備をすべて完了するよう指示していた」

つまり西側情報筋の分析では2027年が台湾侵攻の可能性が高いと想定されていたのだから、習近平は、西側分析より、もっと早い段階(24年から25年にかけて)で、事侵攻を試みようとしていたことを意味する。

多くのチャイナウォッチャーは、武力行使の可能性を軍事能力、武器バランス比較、西側の反撃力などを勘案して経済コストをはかり、台湾侵攻となれば中国軍も莫大な犠牲を伴い、非効率的で、失敗のリスクも高いとし、武力による統一を優先しない可能性がある、とみている。

だが、“第二の毛沢東”を自認し「中華民族の復興」というパラノイア的強迫観念に取り憑かれた習近平にとって、武力準備と、兵站の進捗、経済コストとかは二の次であり、政治目標の達成が優先されるのだ。
トウ小平がベトナムに無謀な戦争を仕掛けて軍権一本化に成功したように、習近平にとっては勝っても負けても構わない。軍権の掌握が重要なのである。
したがって台湾侵攻を時期尚早と反対した張又侠や劉震立を排除し、軍権を独り占めすることを前々から狙っていたということになる。いま、たしかに中国には習近平に刃向かう政治カも軍人もいない。

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和八年(2026年)3月17日(火曜日)弐
       通巻第9203号  
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(速報)
 トランプ大統領、月末からの訪中延期へ

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 中国軍最大の実戦訓練基地「朱日和基地」に奇妙な“静寂”
  張又侠、劉振立の失脚後一ヶ月間、軍事訓練が行われていない
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 中国軍の台湾水域、空域侵犯の頻度が激減している。
 これまで毎日のように戦闘機や軍艦を台湾海峡と周辺に展開してきた中国軍がおとなしいのである。台湾国防部が毎日公表するデータによれば、トランプのイラン攻撃(2月28日)以降、中国軍機はわずか2機だった。昨年同時期の86機と比較して60%ほど減少している。
過去10日間で台湾周辺海域では1日平均6隻の中国軍艦が確認されている。中国軍の台湾周辺での出撃回数は、前年同期比で約42%の減少となっている。

 我が国の尖閣水域への海警船舶の侵犯は微かに減っている。
海上保安本部によると尖閣諸島(石垣市)周辺の領海外側にある接続水域では3月11日、中国海警局の艦船「海警1307」「海警1401」「海警1302」「海警1303」の4隻が航行していた。
尖閣周辺で中国艦船が航行するのは117日連続。海保の巡視船が領海に侵入しないよう警告し、警戒を続けている。

中国軍は日頃の喧噪を控えて、「おとなしい」のはトランプが訪中するからと説明する向きがあるが、見当違いであろう。沈黙しているのは軍全体が“衝撃”と“動揺”に襲われているからである。
第一にベネズエラ、つづけてイランで中国が自慢して供与したレーダーシステムが簡単破壊されたことへの衝撃、ステルスを迎撃できなかった。習近平は赤恥を掻いた。

第二に張又侠、劉振立失脚後、軍内部には激しい動揺が拡がっていることだ。軍のどの戦区も集団軍も習近平の決定に賛意を示していない。
あまつさえ、高官がつぎつぎと粛正されているわけだから「明日は我が身」と身構え、軍のなかはモラルが低下し、疑心暗鬼がひろがり軍事演習なんて「やってられるか」ということになる。

それかあらぬか、最大実戦訓練基地「朱日和基地」が静寂につつまれている。軍のトップ失脚からすでに一ヶ月間、軍事訓練が行われていないのだ。

 朱日和基地はアジア最大級の陸戦軍事訓練基地で、北部戦区に所属し、大規模な陸空共同実兵演習が可能、広大な施設である。
そのうえこの基地が軍中央軍事委員会の直轄である。
しかも台湾の「模擬総統府」が造られ、「模擬司法院(司法省)」に似た建物もある。現物を模した施設で訓練をすることで、台湾総統に対する「斬首作戦」を強化する狙いが明確なうえ、台湾に軍事的威圧を示し、心理戦を仕掛けているのだ。 


 ▼中国最大の軍事演習基地が静寂なのはなぜ?

「朱日和」は内蒙古自治区錫林郭勒盟スニタ右旗の南部にある地名でモンゴル名の“チュリヘ”を、発音から「朱日和」という漢字を当てている。
本来の意味は蒙古語で「心臓」である。

 この実戦訓練基地における特徴は、「紅軍」と敵軍「藍軍」(ブルーチーム、国民党のシンボルカラー)に分かれての実戦訓練で台湾侵攻、上陸作戦を想定している。
さらに仮想敵や仮想戦場をコンピューターで創りあげ、そのシミュレーションの中で実働部隊が動くという方法だ。

失脚した劉振立は、この朱日和基地の軍長だった。張又侠は、当該基地を統括する北部戦区(旧瀋陽軍管区)の副司令官だった。
こうした人脈は軍の部隊でももっとも尊重される絆である。

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