去(い)ぬる文永五年に蒙古国(もうここく)の牒状(ちょうじょう)我が朝(ちょう)に渡来(とらい)する所、賢人 有らば之(これ)を怪(あや)しむべし。設(たと)ひ其(そ)れを信ぜずとも去ぬる文永八年九月十二日 御勘気(ごかんき)を蒙(こうむ)りしの時 吐(は)く所の強言(ごうげん)、次の年 二月十一日に符合(ふごう)せしむ。情(こころ)有らん者は之を信ずべし。何(いか)に況(いわ)んや今年既に彼(か)の国 災兵(さいひょう)の上 二箇国を奪ひ取る。設ひ木石(ぼくせき)たりと雖(いえど)も、設ひ禽獣(きんじゅう)たりと雖も感ずべく驚くべし。偏(ひとえ)に只事(ただごと)に非(あら)ず。天魔の国に入(い)って酔へるが如(ごと)く狂へるが如し。歎(なげ)くべし哀(あわれ)むべし、恐るべし厭(いと)ふべし。
(平成新編0750・御書全集0537・正宗聖典----・昭和新定[2]1093・昭和定本[1]0841)
[文永11(1274)年12月15日(佐後)]
[古写本・日春筆 沼津光長寺]
[※sasameyuki※]