第20回 桜 part2



 桜

 私はよくこの花を眺めていた。病室の窓から見える景色には常に桜がいた。
 私がここに入院したての頃は春だというの花を咲かせず、まるで私のようだと親近感を持ったものだ。
 夏の緑豊かな桜
 秋、冬の見ているだけで寒くなりそうな枝だけの桜。
 そして今、あの頃とは比べ物にならないくらいきれいな花を咲かせている春の桜。
 この桜はずっと私と一緒だった。小学生の頃から今に至るまで。友達のような家族のような、とにかくとても大切な存在なのだ。
 しかし、私はこの桜にお別れを言わねばならない。
 「桜ちゃん、明日退院なんだってね。よかったわね。また学校に行けるよ」
 うるさい。だまれ。もう5年も通ってない世界にいくぐらいならずっとこの桜を見ていたい。でも、私はそんなことも許されず別れを言うのだ。
 さらば、私の家族、私の友、私を支えてくれてありがとう。
 また・・・また疲れたときは
 「また、あいに来てもいいですか?」
 桜はだまって抱きしめてくれたような気がした。



第20回 桜 part2 完
第19回 桜 part1



 「花見だああああああああああああ!!!」
 「酒だあああああああああああああ!!!」
 「騒ぐなよ!二人とも!!」
 「・・・酒飲む前から酔ってるように見えるな」
 「うん」
 文芸部は新入生歓迎の一環として花見に来ていた。
 宇治の桜は例年変わらず美しく咲き誇っている。
 手ごろな場所にシートをひくと乾杯の音頭とともに3回生の二人が一気に飲み始める。
 それを尻目に2回生は新入生とおしゃべりしながらのんびりとくつろいでいた。
 「あ~?武田あああ、お前飲んでんのお茶じゃないか。酒飲め。酒」
 「いやです。俺は下戸だと何かい言えば・・・っておい勝手につぐな!お茶と混ざってんだろうが!」
 「何を言ってるんだい。これがうわさのカクテルてやつさ」
 「一度も飲んだこと無いくせにでたらめ言うな」
  ワイワイ、ガヤガヤ
 花見なのに花には触れないで宴会が進んでいく。
 しかし、この風景こそが桜の魅力を現しているのではないだろうか。
 桜という美しい花は名前だけで多くの人を呼び寄せ、そして笑顔にしていくのだ。
 「うひゃひゃはやはy」
 「酔うの早!?」
 今日もどこかで桜は咲く。




第19回 桜 part1 完
第18回 入学式



 前を見ても後ろを見てもスーツ姿の若者で埋め尽くされている。ためしに左右を見るが同じだ。
 「すげえ・・・さすがは大学」
 大仰に驚いているがたいしたことではない。単にスーツを着た人たちの群れができていることに驚いているだけだ。大学の入学式なんだから当たり前だ。第一、お前もスーツだろうがと言いたくなる。スーツ姿の人を見ると落ち着かなくなると言う変な癖はさっさと直したいところだ。
 「さて・・・体育館は、ん?」
 会場である体育館に向かおうとしていた川島の足が止まったのは後ろから肩をたたかれたからだ。
 振り返るとそこには同じ入学生と思しき外国人の姿が。
 「*********?」
 「・・・??あ、あのすいません。英語はわからないです」
 「*?」
 「あああ・・・とにかくついてきて」
 川島は自分より不だいぶ高い同級生の手をとると体育館に歩き出した。



第18回 入学式 完