ドラッグストア。

何気なく足を踏み入れてはいけない5本指。

必要なものは

早々にカゴの中に入れるのに

レジになかなか辿り着けない。

どのコーナーにも

「?」なものや「⁉︎」なものがある。

買い物メモを閉じて歩き回り 

結局今日もカゴが腕に食いこむ。

空腹が帰宅を急かすから

そろそろレジに。

混んでいる。

そうですよね。

ドラッグストア、楽しいですよね。

並びながらもなお

レジ周りの品々を見回そうと振り返った。

後ろに並んでいる初老の方は

わたしと違って身軽だった。

商品をひとつ持ち

静かに待っておられた。

順番はまだ先だ。

ずっしり重いわたしのお会計には

時間もかかるだろう。

「お先にどうぞ。」

声をかけてみた。

「いや、いや、大丈夫だよ。」

柔和な声と表情と

思った通りの謙虚なお答え。

「こんなに入れちゃったのでどうぞ、どうぞ。」

カゴを掲げて見せた。

「そうですか。じゃあ…すみませんね。」

何度も遠慮しない気遣いが

かえってありがたい。

ご自分の番になったとき

一礼してくださった。

レジスタッフさんに

「これだけなんだけど、申し訳ないね。」と

おっしゃっていた。

お会計が終わると

「ありがとうございました。」と

笑顔と会釈をくださった。

「お先にどうぞ。」が

久しぶりに報われた。

梅雨空のもと

晴々とした気分をもらった。

誰かの気持ちを晴らせる人は

お天道さんだ。

今夜から続く雨に備えて

真っ赤な傘を買って帰った。