ピンポ〜ン。

チャイム、鳴ったよな。

チャイム、だよね。

家の?

そりゃあ、そうでしょ。

夢?じゃないか。

え?何時?

いま何時?

6時50分…て。

なにごと?

誰?

二度寝しかけた頭の中がモヤつく。

モニターに映っていたのは

お隣のおじいちゃん。

「起きてるー?ジャガイモ持ってきた。」

「ありがとう!」

喉はまだ寝ていたいらしく

ボソボソの声。

「ここに置いとくよー。」

モニターから遠ざかっていくおじいちゃん。

何時間も前から起きてる感じの

しゃくしゃくとした歩き方だった。

大根、玉ねぎ、白菜。

採りたての泥付き野菜を

時々分けてくれる。

親切付きの新鮮野菜。

とっておきのごちそう気分だ。

ちょうど!?明日は父の日。

おじいちゃんが喜んでくれそうな

和菓子を探しに行った。

抹茶どら焼き、くず餅、梅ゼリー。

涼しげな新緑で揃えてみた。

ちなみに全部

期間限定!

おひとり暮らしなので

家の前に住んでいるお孫さんご夫婦の分も。

もちろん、一人で完食歓迎。

「ちょっとしか持ってってないのに。」

ずっしり持ってきてくれても

いつもこうおっしゃる。

「わたしもちょっとなんですよ。」

わたしはほんとに気持ちだけだが。

「いつもありがとね。」

先にお礼を言わせてしまった。

嬉しそうで

優しくて

安心する笑顔。

父が元気だったらきっと

同じような笑顔が溢れていただろう。

「明日父の日だから。」

おじいちゃんに父の姿を重ねて

感謝を手渡した。

おじいちゃんとのご縁は

父が繋いでくれたに違いない。