台湾の歴史学習漫画『認識台灣歴史7日本時代(上):日本資本家的天堂』(2012年)と日本の歴史学習漫画『集英社版・学習漫画 日 本の歴史16日清・日露の戦い』(1998年)を比較してみた。本来なら集英社版より台湾の歴史漫画の同年発行で新しく発行された、学研の『学研まんが NEW日本の歴史十近代国家への歩み 明治時代後期』と比較するのも良いかと思ったが、学研の新板は恐ろしく偏っているので、とりあえず中道(やや左派よ り)の集英社版を選んだ。
何か面白いことが出てくるかと期待したが、期待以上に面白かった。
もちろん、日本の視点と台湾都の視点は違っていて当たり前である。
子供たちに時刻の歴史を教える際に当然自国からの視点になるのは当たり前のことだ。
しかし、驚いたことに集英社版の歴史漫画は日清戦争後の台湾の植民地化についてはわずかコラムが1頁の4分の1だけ。しかも、台湾民主国についても全く触れられていないのだ。
対する台湾側の歴史漫画は日清戦争後の日本の植民地支配について首尾一貫して武装抗日が語られている。
「そ りゃあ、国が違うんだから学習漫画だってそうなって当然でしょう?」という答えが聞こえてきそうだが、中道でかなりバランスのとれた構成の集英社版でさえ 「台湾」については全く問題にしていない。台湾平定のコラム以後、集英社版の学習漫画は1945年の大東亜戦争終結まで全く触れていないのだ。清と朝鮮、 ロシアのみ比較的具体的に漫画の中で表現されている。因みに2011年に小学館から発行された小・中学生向けの歴史書『Jr.日本の歴史6大日本帝国の時 代』では下関条約の後、台湾民主国の建国と征台戦争について約1頁記述があるが、その後は全く台湾については記載がない。
台湾側は。漫画でもかなり日本の植民地化政策とか、武装抗日運動、霧社事件など詳細に記されている。この差は何かと思わずにいられないが、台湾は日本の子供への歴史教育の上では全く範疇外なのだとわかった。
台湾の子供たちがこ自国の歴史漫画を読んでいるとすれば歴史的な視点からは日本はあまり嬉しくない存在に見えるだろう。その事を日本の子供たちは全く知らない訳だ。僕は今回の漫画比較でひとつの印象を持った。
日本側の歴史漫画を読んで、
植 民地として自分たちのものにしてしまえば、後は特にその部分は気にしない、特に語らないという日本人の何とも脳天気な無頓着ぶりさである。これは日本人の 歴史に対して無頓着で傲慢な過去への態度が無意識に「学習漫画」の中に表れたものだと思う。こうした性質が戦後処理の問題にも影響を与えていると思う。
台湾側の歴史漫画を読んで、
「台湾人はサブカルとか文化面では親日です。しかし、歴史面では必ずしもそうではないのですよ。」と台湾人の人からよく言われるのだが、なるほど、そういうものだとあらためて認識させられたものだ。
近年、日本では一般販売向けに日韓中合作教科書などを作成して発売されているが、そこにも台湾の視点はない。
台湾はやはり、取り残されている。
それが気になるのだ。