このブログやもうひとつのブログで何度も説明してきた社会保険料負担についての誤解の話です。

消費税を増税するか給付を削減して現役世代の社会保険料負担を減らせー」という寝ぼけたことを言っている人が多いので、繰り返しになりますが「そんなことで医療費や介護費などの負担を減らすことは不可能だ」という説明を繰り返します。

 

先日もかなりひどい内容の動画を見かけました。とりあえずアドレスだけ貼っておきます。

https://www.youtube.com/watch?v=fiDthlTYZf4&feature=youtu.be

(この動画制作者はあちこちで誹謗中傷行為を続けてきたかなりの悪質アカウントです。)

 

34万円貰えるはずの給料の中から厚生年金保険料やら医療保険料、雇用保険などが天引きされまくって手取り26万円しか残らないのが不満のようですね。私もこの社会保険料の額の重さに唖然としたことがあります。仮に勤めていた会社を何らかの事情で辞めて、収入減の中で国民年金や健康保険料を自腹で支払うことになったとき、その負担の重さは恨めしい限りでしょう。

 

けれども重い社会保険料負担を消費税負担方式に置き換えたり、あるいは社会保障給付削減で現役世代の家計負担を軽くすることができるのでしょうか?先に答えを言いますと「できません」。

 

ミルトン・フリードマンが言うように「ノー・フリーランチ」です。

どういう事かと言いますと、今の公的年金やら医療給付の財源を今までどおり保険方式にしようが、一般会計とどんぶり勘定の税負担方式にしようが、国民が病気とか怪我、障がいを抱える、高齢になって体が動かせなくなるといったリスクが同じならば、支払うべき保険料もしくは税と給付額は増えもしないし、減りもしません。負担の重さは一緒です。小さな政府志向で「低負担・低福祉」型の社会保障制度とし、保険料・税負担が減っても、自助努力と自己責任で民間保険に加入するなり貯蓄をしないといけなくなります。同じ補償内容を求めるならば同額の保険料となります。

 

どこの保険会社も似たり寄ったりの保険料や給付額になってしまいますが、その理由を上念司氏が解説しています。

 

念押ししておきますと

公的だといえど国民年金や医療保険の基本構造は民間の保険商品と変わりません

 

保険料収入総額=給付総額

が保険数理の基本です。社会保険と民間保険の違いは所得再分配機能があるかないかです。

 

しかしながら日本の社会保険財政は歳入に占める公費負担率が4割にも達しており、かなり歪な状況です。

 

 

多くの日本国民は国民・厚生年金ならびに医療保険は加入者がお金を出し合って運営されている保険だということを忘れ、お上からお金やら医療サービスを授かっているという感覚になっています。だから「年金や医療費の財源は消費税収で」でという間抜けなことを言う人たちが出てくるのです。

件の動画で高橋洋一さんの名前が出てきていますが、高橋さんは特別会計である社会保険財源を一般会計と混ぜこぜにしてどんぶり勘定にしてしまうことを嫌っています。高橋さんが「保険方式の方がいい」と仰る理由は給付と負担の関係が明確になって公正さが高いからです。消費税は一般会計財源です。「消費税増税で社会保障の安定と充実を」という話はどんぶり勘定にしろと言っているようなものです。

 

高橋洋一

社会保障のための消費増税」のウソ 財務省が日本人を騙す"ロジック"

 

結局消費税を財源に社会保険料の引き下げを行ったとしても、社会保障制度への不信や不満が減るどころか増すばかりだと私は推測します

 

竹中平蔵氏が「自分が90歳まで生きると思ったら、90歳まで生きる分のお金を自分で貯めておかないとダメなんです」とか「それがイヤで、国に面倒をみて欲しいんだったら、スウェーデンみたいに若い時に自分の稼ぎの3分の2を国に渡すことです。」などと発言して「シバキ主義ダー」「ネオリベ(新自由主義者)めー」などと毎度のごとく誹謗中傷を受けるのですが、氏の発言は意見ではなく現実です。税制やら社会保障制度をいくら弄りまわしても医療費や介護費などの負担額が減るわけがありません

 

冒頭の動画の制作者は反共だとか自由主義者などと名乗っているようですが、「消費税の増税でもっと手厚い社会保障を」とか「安心を」といっている藤田孝典氏らと発想が変わりません。パイの切り方(所得再分配)を変えてもパイ自体を大きくすることなんかできないのです。

 

画像引用 厚生労働省「いっしょに検証 公的年金」より

 

 

今回の最重要ポイントをお話しましょう。それは

1 自分たちの医療・介護費負担の重さは社会保障費対GDP比国民医療費・介護費対GDP比で見よ

2 自分の家計に占める医療や介護費、万が一に備えた民間保険料、必要な貯蓄額がいくらになるのか計算してみよ!

です。

 

ポイント1で注意していただきたいのは社会保障費と一般会計の社会保障関連費を混同してはならないということです。よく国家財政問題の話をマスコミなどが触れるときに一般会計の歳入と歳出の円グラフを持ち出してきて、「社会保障費が膨張しているぞー」と騒ぎ立てますが、これは社会保障費の一部分に過ぎません。

 

 

ですので特別会計の社会保険財政の方も合わせてみないといけないのです。

 

 

 

社会保険料と国庫負担分を合わせた社会保障費は2019年度ですと123.7兆円で対GDP比が21.9%となります。今までどおり保険方式であろうが、消費税を財源に含めた税方式にしようが、上の図の[負担]の保険料と公費のバランスが代わるだけで給付費の額が変わるわけではありません。わたしたち国民は自分たちの財布の中から2割分を社会保障のために支払わないといけないということです。

 

ではアメリカのように小さな政府志向で社会保障を最小規模にして、社会保険料やその他の税負担を減らせばいいじゃないかと考える人がいるかも知れませんが、これも負担の形が変わるだけのことです。社会保障費だけではなく、医療費や介護費の自己負担分や個人年金の額も合わせたGDPとの対比をしないとほんとうの負担の重さが把握できないでしょう。

 

もし仮に現役世代や企業が負担すべき社会保険料を低減させるために、消費税をはじめとする一般会計の歳入を社会保障費に補填する割合を増やすならば、消費税の税率をいくらにするのか?あるいは社会保険料と消費税の増税を回避すべく社会保障費を削減し、自己負担分を増やした場合の家計に与える変化はどうなるのかをきちんと計算してシュミレーションしておくべきです。それをしないまま空想だけで「消費税の増税や社会保障費の削減に協力すれば社会保険料の負担が減るだろう」という見込みを立てるのは「捕らぬ狸の皮算用」もいいところです。

 

もし仮に再び消費税を増税したとしても、すぐに社会保険料の削減には結びつかないでしょう。その理由は社会保険料や給付額の設定は社会保障審議会が行う五年に一度の財政検証でアジャストされます。もう一度言いますが厚生・国民年金や医療保険の財源は一般会計から独立した特別会計です。保険数理に従って保険料収入と給付支出のバランスを計り社会保険料や給付額の設定がなされます。

消費税を財源に社会保険料の低減を行うならば、国庫負担割合を4割からもっと高めて実質税方式へと切り替えるということをすることになります。国会議員や政党から社会保険料値下げの法案が出て来なければ「消費税増税で社会保険料値下げ」はないだろうと思うべきです。たぶん消費税の増税分は一般会計の財政赤字補填に優先されることになるかと思われます。甘い期待を持つのはやめましょう。

 

医療費や介護費の負担を減らすには結局分母のGDPをもっと大きくするしかないのです。

医療費や介護費を稼ぐという発想が必要です。

 

プレジデント 竹中平蔵『稼ぐことが厳しく求められる~少子高齢化を生きるには「自助」 』

 

 

 

 

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