確かに普通の人ですと財政がそんなに苦しいのだったら、増税はやむを得ないし、歳出削減も仕方がなかろうと考えるでしょう。本当は福祉とかにもお金をもっと遣ってほしいけれど、国にお金がないのだったら諦めるしかないと日本国民のほとんどの人が考えていることでしょう。政治家や官僚に対しては「税金の無駄遣いはやめろ」「政治家や役人の給料を下げろ」ぐらいしか言えない人がほとんどです。
しかしながら消費税をはじめとする増税や歳出削減に国民が応じれば本当に国家財政の再建が進むのでしょうか?
このサイトの「デフレと失われた20年 」編の記事「バブル崩壊後の日本経済に止めを刺した橋本龍太郎の緊縮財政 」で日銀の三重野康総裁が行った急激な金融引き締めと1997年に橋本龍太郎政権が行った消費税率5%引き上げや社会保障費をはじめとする歳出削減によって、日本の経済は致命的な打撃を受け、それが元で逆に税収の落ち込みと歳出増加を招いたことを書きました。
![イメージ 1](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/metamorphoseofcapitalism/20190803/20190803045732.jpg)
「日本の財政を考える - 財務省」にあったグラフですが、平成3年(1991年)から歳入と歳出がワニの口のように開き始めます。三重野康が日銀総裁に就任したのは平成元年(1989年)12月でその直後からバブル退治と称し金融引き締めをはじめ、急激な景気悪化を招きます。そこへ橋本龍太郎政権の緊縮財政が加わり「失われた20年」への道が決定づけられます。殴って倒れたところへねじ踏みするかのような所業です。
ここ十年の動きですが、歳入はリーマンショックの痛手から回復しかけた平成21年度以来伸び続けています。
2014年4月に民主党政権時代に仕組まれた消費税率8%の引き上げが実施されたのですが、それでもひどい落ち込みにはならず、伸びは続いています。平成27年あたりでやや頭打ちになってしまった感じはするものの、歳入の増加は維持できています。
1997年のときは金融・財政共々緊縮でしたが、2014年の場合は財政が緊縮でも金融はかなり思い切った緩和をやっていたので、民間の経済活動悪化を回避できたとみていいでしょう。
それともうひとつ社会保障費の方も見てみましょう。日本の国家財政悪化は急激に膨張し続ける社会保障費が圧迫するからだと言われています。確かに一般会計の円グラフを見ますと社会保障費の割合がいちばん大きいですね。
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社会保障給付額は一直線に伸びておりますが、消費税率5%引き上げを行った平成9年以降、社会保険料収入が横ばいとなっています。保険料収入と給付額がワニの口みたいに開いていきます。1997年という年は消費税率の引き上げや緊縮財政だけではなく、本格的な非正規雇用の拡大と実質賃下げがはじまり、終身雇用制度が破壊された年でもあります。民間企業の業績不振で従業員の保険負担ができなくなり、若年現役世代は雇用悪化による所得の低下と不安定化で保険料が支払えなくなっていきます。経済悪化のおかげで老齢年金や医療保険制度の収支が悪化し、一般会計で尻をぬぐうというおかしな構図ができてしまいました。
財務省をはじめとする官僚は基本的に事務能力は極めて高いのですが、自分たち自身でお金を稼いで富を殖やすといった能力に優れているわけではありません。稼ぎを殖やして収益を伸ばすのではなく、料金の値上げやコストカットばかりしかできないのが役人です。一般の商売で売り上げが落ちたから商品の値上げや材料の質を落とすようなことばかりしていたら、ユーザーは離反してますます売り上げを落とすことになるでしょう。
元民進党議員であった金子洋一氏は選挙中のスローガンで「税率ではなく税収を上げる」「税収を稼ぐ」といったことを掲げられていました。こういう発想ができないのが役人です。
参考