住宅を購入するときに全額を現金で払って買う人は滅多にいないだろう。何千万円にもなる買い物となるので、ほとんどの人は住宅ローンを組んで購入していると思う。少なくない金額となるローンを組むにあたって、いくらくらいを借りるのがいいのか、とか、何年で返済するのがいいのか、とか、金利は変動がいいのか固定がいいのか等々、悩むところが多いだろう。

まず初めに考えるだろう頭金について、一体いくらくらいを頭金として入れるのがいいのだろうか。世間の相場は、1割から2割の頭金を入れましょう、ということのようだ。頭金が多い方が借入額が減り、利息も減って返済額も減るからお得になる、そのくらいは入れた方がいいでしょう、と言う事らしい。では、そのお得になる金額は一体いくらくらいなのだろうか。

5000万円の物件に金利1%で35年のローンを頭金なし、頭金500万、頭金1000万で計算してみる。

頭金なし:総返済額59,279,814円、支払利息9,279,814円、月返済額141,142円
頭金500万円:総返済額53,351,790円、支払利息8,351,790円、月返済額127,028円
頭金1000万円:総返済額47,423,753円、支払利息7,423,753円、月返済額112,914円

頭金500万で支払う利息が93万円くらい、月々の返済額が1万4千円くらい減る。頭金1000万ならその倍くらい。確かに支払う利息が93万円くらいも減るならこりゃお得だね、って、いやいや本当にそうなのか?35年という期間で考えると年間で減るのは26,500円くらい(月々では2,200円くらい)減ることになる。これが35年間手元から500万円というある程度のまとまった現金を失って得られる効果である。


では、500万円を年平均利回り3%で運用できたとしよう。35年後には500万円が約1400万円になる。頭金500万で得をするのはたった93万円だが、500万を運用すれば900万円くらい得をする、その差額を比較すると800万円以上はお得になるじゃんすげー、ってなりそうだが、実はこれだとフェアな比較にはなっていない。頭金500万を用意すれば月々の返済額が減るのでその分を考慮しないといけないからだ。返済額の差額である月々1万4千円を平均利回り3%で積立運用したとしよう。すると35年後には593万円くらいの積立が約1040万円になる。それでもやっぱり頭金なしの方が360万円くらいはお得になるようだ。

ということで頭金なしの方が頭金を入れるよりもお得になることがわかった。というのも住宅ローンは非常に低い金利でお金を借りることができるからで、こんな低金利で借りられるのは、住宅ローン以外だったら奨学金くらいじゃないかと思う。変動金利なら1%を切る利率である。これを最大限活用しない手はない。住宅ローンの金利を上回る利回りで運用できればその差額が利益となる。期間も住宅ローンの性質上、長期間借りることになるのでその分運用も長期間できる。住宅ローンの金利を上回る運用利回りを確保できる可能性は十分に高いと思っている。

結論として、住宅ローンは融資条件が悪くならないのであれば、頭金はなしで(諸費用も込みで)借りて頭金他相当の資産を長期運用する、のが一番いいと思っている。なぜなら、頭金を入れるよりも運用にまわした方が得をする可能性が高い、頭金相当の資産を運用しているので何かあったときにも十分対応できる、もし不幸が起きた場合には団信でカバーされる金額が増える、というようなメリットがあり、頭金を入れるメリットがどうしても見いだせないからである。借金をすることに抵抗がある人、借金はできるだけ少ない方がいいに決まっていると信じている人、が多いようだが、数字をみて冷製に判断するようにして欲しい。