少し前の話になりますが、1年前のMedical Tribune 2021年04月13日号に北里研究所病院、糖尿病センター長の山田悟先生が「ケトン体は味方だった!」という記事を寄稿されました。
少し前のブログでSGLT-2阻害薬が心臓に良い効果があることを紹介しましたが、山田先生の記事の中で効果がある理由としてケトン体の産生が増えて、それが心臓に良い影響を及ぼすことが挙げられています。
山田先生はエネルギー代謝を詳しく解説されていますが、心臓のエネルギー代謝についての要点をまとめると以下のようになります。
①ケトン体は脂肪酸→(β酸化)→アセチルCoA→アセトアセチルCoA→HMG-CoA→ケトン体という流れで肝細胞のミトコンドリア内で合成される。
②ミトコンドリアを持たない赤血球とケトン体を代謝するサクシニルCoA/オキソ酸CoAトランスフェラーゼを持たない肝臓を除けば、他の臓器・細胞は全てケトン体をエネルギー源とすることができる。
③健康な心臓では脂肪酸が主たるエネルギー源となっている。脂肪酸がうまく細胞内に入らないと心不全が悪化するが、ケトン体は脂肪酸に代わってエネルギー代謝をサポートしている。
SGLT-2阻害薬の登場は今まで顧みられていなかったエネルギー代謝機構の深い理解をもたらしました。そして、評価が分かれていたケトン体についてもポジティブな評価が与えられました。
心不全では心筋細胞の脂肪酸の取り込みが落ちており、これを改善できれば心機能が改善する可能性があり、新たな治療法の開発が期待されます。